ニック・ホーンビィ作品のページ


Nick Hornby 1957年英国生まれ。教員・会社員生活を送った後、92年「ぼくのプレミア・ライフ」にて作家デビュー。95年「ハイ・フィデリティ」がベストセラーとなる。98年の「アバウト・ア・ボーイ」も含め3作すべてが映画化される。現在英国ノース・ロンドン在住。

 


  

●「アバウト・ア・ボーイ」● ★★
 
原題:"about a boy"     訳:森田義信

 

 
1998年発表

2002年8月
新潮文庫刊
(705円+税)

 

2002/11/08

ヒュー・グラント主演による映画の原作。
実際、読み始めてすぐ、いかにも映画向きな作品であることを感じます。
本作品は、ひとりぼっちの少年に関する物語。
主人公・マーカスは、12歳の中学生。両親が離婚して、母親と2人暮らしなのですが、この母親が本当に危ない人物。年中落ち込んいて、精神不安定。いつ自殺するか判らないと、ハラハラしてしまう女性です。そのうえ、今の中学生がどんな男の子であるのが普通か、まるで理解していない。おかげでマーカスは、流行はずれの服装、言動から、仲間はずれどころか、いじめにもあっているという状況。しかし、一人で我慢し、母親を少しもうらむところがない。哀しいくらいに健気な少年です。
そ一方、そのマーカスと偶然知り合いになって、おしかけられてしまう、もう一人の主人公がウィル。親が財産を残したから働くことも無く悠々自適。セックスフレンドを求めてシングルペアレンツ集会に潜り込みます。ウィルもまた、まるで子供並み。責任を引き受けようとは夢にも思わず、自分一人の楽しみを追うことだけで満足しています。
そんな2人がお互いに関わりを深めていき、一人だけで生きていくなんて普通じゃない、関わりをもてる人が多いほど幸せ、ということを、2人が次第につかみ取っていくストーリィ。それは、2人にとっての成長物語ともいえます。マーカスだけでなく、ウィルもまたその当事者であるところが、本作品のミソ。
面白さは、マーカスの感じ方、会話部分にあります。哀れでいて、どこかユーモラス。マーカスとウィルのやり取りは、まさに漫才のように絶妙の味です。
なお、マーカスの友達となるエリーという少女もなかなか魅力あります。

※映画化 → 「アバウト・ア・ボーイ」

 


   

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