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●「オリーブの海」● ★★ ニューベリー賞オナー賞 |
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2005/08/31 |
12歳の少女マーサの、ひと夏の経験を描いた小説。 自動車事故で死んだ同級生オリーブが日記にマーサのことを書き残していた。「来学期はマーサと仲良くなりたい、マーサはクラスで一番優しい」と。 オリーブの日記のその頁を携えて、マーサは家族とともに海辺に住む祖母の元へひと夏を過ごしに行きます。 2歳の妹ルーシーの面倒をみたり、祖母ゴッビーへの態度をみるにより、彼女が優しい女の子であることが判ります。 マーサは兄ヴィンスと共に近所のマニング兄弟と親しくしていますが、思いも寄らずマーサはマニング兄から心無い仕打ちを受けてしまう。 誰しも子供から脱する過程で経験する、ささやかですけれど本人にとっては重大な出来事を、作者は繊細に描き出しています。 オリーブの日記は、他人の目に映る自分をマーサが意識するようになった最初の出来事ではなかったかと思うのです。 オリーブの目に自分はどう映っていたのだろうかと考え、次いでマニング兄の仕打ちによって周囲の人から自分がどんな目で見られるかを思ってマーサは気に病みます。自分中心であった世界から、ひとつの社会の中にいる自分を意識するようになる、これこそマーサの成長の証と言えるものでしょう。 上記のように書くと理屈っぽくなってしまいますが、夏の始まりと終わりという変化の中で、マーサの小さな心の動きが、ささやかに切なくも愛しくも描かれています。 |