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1.ブラック・サンデー 2.羊たちの沈黙 |
●「ブラック・サンデー」● ★ |
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1979年3月 |
かねてから評判を聞いていたサスペンス小説。 アメリカのプロ・フットボール選手権試合である“スーパー・ボウル”。その会場に集まった大勢の群集と米国大統領を共に爆弾で吹き飛ばすという想像を絶するテロ計画が、パレスチナ・ゲリラ「黒い九月」の手で企てられます。 犯行側の主要人物は、元兵士で現在飛行船のパイロットである白人米国男性、ゲリラの女性メンバー+α。それを阻止しようとするのが、イスラエルの諜報員。その両方ががっぷり四つに組んだスパイ戦というのが、主ストーリィです。 しかし、正直なところ、評判のような興奮は覚えず。むしろ、ストーリィの長さにややうんざりした観あり。 |
●「羊たちの沈黙」● ★★ |
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1989年9月
2001/08/28 |
話題作は頃合いの時期に読んでおかないと、その後では今更という気分が強くなって、つい読み逃してしまうものです。本作品もそんな一冊。漸く読むに至りました。 本書は、ハード・サスペンス。ストーリィは、若い女性を殺してその皮膚を剥ぐという連続殺人鬼“バッファロー・ビル”、その捜査の為FBI訓練生クラリス・スターリングが駆り出されるところから始まります。クラリスが駆り出された理由はただ一つ。患者9人の殺人罪で厳重に収監されている元精神病医ハニバル・レクター博士の協力を求めるためです。このレクター博士が一筋縄ではいかない人物。しかし、スターリングの真っ正面からぶつかっていく態度が、レクターから僅かなヒントを引き出すことに成功します。 本作品については、FBI対バッファロー・ビルより、スターリング対レクターの方が興味深いものがあります。それは、ハニバル・レクター博士という稀にみる人物像の創造にあるからでしょう。彼は、前作「レッド・ドラゴン」にて登場し、次作「ハンニバル」も中心的役割を担います。 冷静でかつ洞察力に優れ、他人を出し抜く知能・行動力に富む人物。ふと連想するのは、M・ルブランの“アルセーヌ・ルパン”です。盗人であっても基本的に善性のヒーローであるルパンに対し、秀でた医学博士にも拘わらず殺人をまるで厭わないレクターは、悪性のヒーローと言えるでしょう。 バッファロー・ビルの6人目の獲物となるのは、上院議員の娘キャザリン。彼女が殺され皮膚を剥がされる危機が、刻一刻と迫ります。冷酷な殺害方法が明瞭に示されているだけに、緊迫感は凄いものがあります。 訓練生ながら独力で奮闘するクラリス・スターリングも、ハニバル・レクターに負けず劣らず興味惹かれる女性主人公です。刊行時に読んでいたら、もっと楽しめたことでしょう。 |