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1.ショコラ |
●「ショコラ」● ★★☆ |
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2001年03月 2002年06月 |
映画が評判になっていると聞いて、手が出ました。 「ショコラ」という題名のとおり、なかなかに味わいのある作品です。芳醇なチョコレートの香りに終始包まれて、じっくり味わうように楽しめた、という一言に尽きます。 主人公は、ヴィアンヌ・ロシェと6歳になる娘アヌークの2人。カーニバルの風に乗ってフランス南西部の小さな町にやってきた2人は、根っからの旅人という雰囲気ですが、この町を気に入って住むことを決めます。元パン屋の家を借りてヴィアンヌが開店したのは、チョコレートの店。都会でならともかく、小さな禁欲的な町に突如開かれたこの誘惑的な店は、小波の如く住民達の間に波紋を呼び起こします。好意的に迎え入れる人、冷たく批判的に眺める人。それが対照的に描かれ、ストーリィ展開の軸になっています。 ヴィアンヌに対して、町の人々を禁欲的かつ自分の支配下に置こうとする司祭レノーが配されています。ストーリィは、途中からヴィアンヌとレノーによって、交互に一人称で描かれます。それによって、2つの側の対立構図が明らかとなり、スリリングな面白さが加わります。 最後の思いがけない結末には驚きましたが、ヴィアンヌ、アクリーヌ、そしてレノーも含めて、登場人物たち皆に対する愛おしさがこみあげてきました。その点が本作品の嬉しいところです。 映画を私は見ていませんが、本作品は登場人物の心の内を描いていくストーリィですので、多分映画と本書の面白さは異なったものでしょう。したがって、映画を見た人も、本書を読むことによってまた別の面白さを味わうことができると思います。 |
●「ブラックベリー・ワイン」● ★ |
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2001年11月 2004年09月
2002/03/02 |
「ショコラ」と同様、フランスの小さな村ランスクネ・スー・タンヌを舞台にしたストーリィ。 ヴィヴィエンヌとアヌークの母娘は既に村を去っており、今回の主人公は、ロンドンからやってきたイギリスの作家、ジェイ・マッキントシュです。 冒頭は、ジェイの現在の生活と、少年時代の思い出が交互に語られます。ジェイの少年時代にある大切な思い出は、老炭坑夫ジョーにまつわるもの。 そのジョーがジェイに残したのが、6本の果実ワイン。ジェイが再びその6本をワインを思い出した時、ワインはざわめき始め、ジェイはフランスの土地つき農家を衝動買いしてしまいます。 そしてジェイはランスクネにやって来ることとなった次第。読者は再び、カフェの女主人となったジョゼフィーヌ、クレルモン夫婦、ルーと再会することになります。 「ショコラ」のヴィアンヌに比べると、ジェイの存在感が薄く、ワクワクするような楽しさは感じられません。また、ブラックベリー・ワインのイメージが広がるということもない。 |