|
|
「さよならを待つふたりのために」 ★★☆ 訳:金原瑞人・竹内茜 原題:"The Fault in Our Stars" |
|
2013/09/27
|
癌のおかげで制約された生活を送っている少女と少年の、今を生きる瑞々しい青春ストーリィ。 主人公のヘイゼルは16歳。13歳の時に甲状腺がんが見つかり、その後がんが肺に転移して今は抗がん剤に酸素ボンベが手放せない生活を送っている。 そのヘイゼルがサポートグループで出会ったのが少年がオーガスタス、17歳。骨肉腫で片脚を切断し義足だが、現在はNEC(癌がない状態のこと)。 その他、オーガスタスの友人で目のがんを患い、残った目までも再び摘出することになったアイザックが登場します。 ヘイゼル、自分の命はそう長くないと覚悟しています。敢えて言うならいっそ死んでしまった方が再三味わっている苦しい思いをすることもなく、ずっと楽かもしれない。それでも彼女が生きる闘いを続けているのは、「十六歳でがんで死ぬより最悪なことはこの世でたったひとつ。がんで死ぬ子どもを持つことだ」と思っているから。何と強烈なセリフであることか。 上記3人の姿を見ていると、何と自分が底の浅い見方をしていたのかと思い知らされます。がんを患っているからといって、制約された生活をしているからといって、彼らは死にかけている訳ではない、今を満喫して生きようとしているのです。 オーガスタスから熱烈にアタックされた当初、ヘイゼルは彼を悲しませたくないという気持ちから彼を拒否しようと思います。しかしヘイゼルもまたオーガスタスのもつ魅力に抗えず、2人は互いへの想いを深めていきます。 そんなところは、同じ年代のごく普通の少年少女の姿と何ら変わるところはありません。いやむしろ、がんの闘病経験を互いに有しているからこそ、苦しく辛いことも2人の間では冗談として言い合うこともできる、判り合える。そんな若い2人の愛し合う姿はよりいっそう輝いて見えます。しかし、がんとはやはり過酷なもの・・・。 これまでも若くして死を迎えた主人公を描く小説、映画を幾つも観ていますが、本書ではお互いに闘病の同志である故に清冽な、かけがえのない青春ストーリィになっています。お薦めです。 ※本書は岩波書店“STAMP BOOKS”の一冊。ティーンの喜びや悩みをつづった作品のシリーズで、海外からエアメールのように届く、選りすぐりの物語だそうです。“新潮クレスト・ブックス”のティーン版のようなもの?でしょうか。 |