ジュリアナ・グッドマン作品のページ


Juliana Goodman  米国イリノイ州、ブルーアイランド生。2014年西イリノイ大学で英文学の学位、17年パデュー大学にてフィクションライティングの修士号を取得。22年「夜明けを探す少女は」にて作家デビュー。同作は翌年のアメリカ探偵作家クラブ賞YA部門の最終候補作となる。現在オーバーリン大学でクリエイティブライティングの教鞭を執っている。

 


                   

「夜明けを探す少女は ★★
 原題:"The Black Girls Left Standing"        訳:圷(あくつ) 香織


夜明けを探す少女は

2022年発表

2024年03月
創元推理文庫
(1260円+税)



2024/08/15



amazon.co.jp

ジャンルとしてはミステリですが、本質的には少女たちの闘い、成長ストーリーであると言って間違いありません。

主人公の
ボー・ウィレットはシカゴの高校生。治安が悪く、階級社会の最底辺と言われる低所得者用の公共団地に家族と共に暮らしている。絵の才能を活かし、卒業したらこの街を出ていくことを目標にしている。
しかし、6歳上の姉=
カティアが、不法侵入との理由で白人警官に射殺され、一家の生活は暗転してしまう。

カティアがそんな犯罪行為をする筈がないと信じるボーは、カティアの無罪を証明するため、カティアとその時一緒にいて事情を知る筈なのに姿をくらませた男=
ジョーダン・サムスンの行方を追おうとします。友人たちの協力を得ながら。
なお、ストーリーは、現在のボーと、カティア生前時の姉妹の緊密な関係(Before)が交互に語られて行きます。

ボーの友人は、
デジャ、ブレオン、ソネットという3人。
一口に友人といっても、3人それぞれ、育った環境や現在の状況も異なります。
ボーは三様の友人を持っている、と言えます。

ボーがジョーダンの行方を探す中で3人は様々な形でそれに関わりますが、その過程で3人もまた、(ボーとはまた違う)それぞれに過酷な状況を抱えていることが明らかになっていきます。
そうした意味で、本作品の本質は、少女たちそれぞれの闘いを描くストーリーなのです。
本作は、同じように困難な状況にある少女たち、少年たちに、勇気や希望を与える作品になっている、と信じたい。

※なお、本作の中で強く印象に残った部分は、(本筋とは関係ありませんが)ボーたちが警察官に暴力を振るわれる場面。
2020年に起きた、黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警察官に首を膝で抑えつけられ殺害された事件がすぐ思い出されます。
本作中でも同事件や類似する事件が例示されていますが、黒人に対しては何をやっても構わない、というのが警察官の通常態度なのか、と改めて暗澹たる気持ちにされました。

      


   

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