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Nina George 1973年ドイツ生。作家、ジャーナリスト、コラムニスト。小説、ミステリー、ノンフィクションを含め27冊の本 600以上の短編とコラムを執筆。 「セーヌ川の書店主」はドイツ国内でロングセラーになったほか、37ヶ国で出版され、累計 150あmン部を超える世界的ヒット作となった。 |
「セーヌ川の書店主」 ★★ |
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2018年07月
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艀を改造した書店船“文学処方船”の店主はジャン・ベルデュ、50歳。その命名は、文学は心の処方箋になりうる、という考えから。 しかし、そのジャン自身はというと、20年前、恋人に裏切られたという心の傷を今も抱え、人生も恋とその時から止まったまま。 ふとした偶然から、その恋人マノンから届いた手紙、読まずに放り出していたその手紙を、20年を経て読むことになります。 それがきっかけとなってベルデュは文学処方船の綱をほどき、マノンの故郷であるボニューを目指して川を下り始めます。 お供は、2匹の野良猫と、一緒に連れていってくれと強引に乗り込んできた若い作家のマックス・ジョルダン。 そして旅の途中から、サルヴォ・クーネオという料理上手の中年ナポリ男が仲間に加わります。 ジャン、マックス、サルヴォ、それぞれが胸に抱えた問題ごとを乗せ、船はセーヌ川〜ソーヌ川〜ローヌ川と下っていきます。 <ロードノベル>というものは、見知らぬ場所、新たな出会いがあるからこそ楽しいもの。本ストーリィは船、川という違いはあっても、ロードノベルの面白さには変わりありません。 しかも“文学処方船”という設定がユニーク。 一言でいえば、恋を失い本の世界に閉じこもっていた主人公が、漸くにして過去の恋に向かい合い、新たな恋に向けて再び時計の針を進め始めようとするための船出、というストーリィ。 川を下るストーリィというと、筏でミシシッピ川を下った「ハックルベリー・フィンの冒険」を思い起こしますが、ハックの冒険と違い、男3人の船旅にはいろいろ重たいものもあるようです。 それでも、新たなスタートを3人が切るまでの経緯、新たな恋の始まりという展開は、新たな世界が幕を開けるような清々しい幸福感があります。 良い味わいの、本&恋愛ストーリィです。 |