ヘレン・フィールディング作品のページ


Helen Fielding  ジャーナリスト、作家。ブリジットと同じ30代、ロンドン在住。オックスフォード大学で文学を専攻後、数年にわたりBBCで番組制作に携わる。1994年処女小説“Cause Celeb”を発表。


1.ブリジット・ジョーンズの日記

2.ブリジット・ジョーンズの日記−きれそうなわたしの12か月 春夏篇・秋冬篇

 


  

1.

●「ブリジット・ジョーンズの日記」● ★★☆
 
原題:"Bridget Jones's Diary"




1996年11月
発表

1998年10月
ソニー・
マガジンズ刊
(1400円+税)

2001年8月
同社
文庫本化

 

1998/12/06

ロンドンで独り暮しのシングル女性、ブリジット・ジョーンズ30代前半の彼女の関心事は、ダイエット、それとシングル・ライフの改善。
本書は、そんな彼女の一年間の日記を、同世代の作者が雑誌に連載して人気を博した作品です。
たまに実家に戻り両親の友人たちに囲まれると、結婚できるアテは未だないのか、恋人もいないのか、と当てこすられるばかり。
本人は日々体重の増減に一喜一憂しているけれど、なかなか世の中思うようにいきません。でも、そんな彼女には、悩みを打ち明ければすぐ集合して慰めてくれる、嬉しい友人たちがいます。
気が良くて、ドジで、不器用で、男性関係およびセックスに高揚し不安に陥り、気取ろうとするのにありのままの自分をさらけ出してしまって自己憐憫にかられる、というブリジットは、現代の一般的な女性の姿なのかもしれません。
男性である私としては好感をもってブリジットを眺めるのですが、同世代の女性読者なら、自分自身と照らし合わせてさぞ楽しめるのではないかと思います。
彼女のお相手として登場する男性は二人、ダニエル・クリーヴァーマーク・ダーシー。最期には奇天烈な事件まで発生して、さてブリジットの一年はどう終わることやら。それは読んでのお楽しみです。
作中、BBCでドラマ化されたJ・オースティン「自負と偏見が話題に上ります。そうなんです、この作品は現代版「自負と偏見」と言えるかもしれません。

これとそっくりな日記を実際に書いたイギリス人がいたことを思いだしました。その人はサミュエル・ピープス、チャールズ2世当時 (17世紀)の海軍省のお役人です。10年にもおよぶ長大な日記でした。(サミュエル・ピープスの日記)

  ※映画化 →  「ブリジット・ジョーンズの日記」

 

2.

●「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月」● 
原題:" Bridget Jones's the edge of reason" 




1999年発表

2000年6月
ソニー・
マガジンズ刊
春夏篇
秋冬篇

(各1000円+税)

 2004年12月
ヴィレッジ・
ブックス化

 

2000/07/02

相変わらず、ブリジットはちょっとしたことに一喜一憂し、七転八倒しまくる、という日記スタイルのストーリィ。
ただ、前作が仕事、恋愛と、シングル女性ならではの様々な変遷故の面白さがあったのに対し、前作の最後にマーク・ダーシーという恋人を割り当ててしまったことから、本書はストーリィ展開が制約されたような感じを受けます。つまり、ブリジッドが一喜一憂する中心は、マーク・ダーシーとの恋の進展具合に縛られてしまいます。
それをことさらにバタバタさせるため、友人達(ジュード、シャロン、マグダ)は余計な助言をブリジッドに与えて彼女を引っかき回し、嫌な女レベッカを度々登場してマークにちょっかいを出すという展開。
恋人に夢中な余り過剰に反応するパターンは、その愚かさが可愛いと思われているうちは良いのですが、邪魔くさいと思われるようになったらどうするのだろう?
前作に引き続き面白いという思いもありますし、愚かしさの骨頂のようなバタバタにはいい加減飽きてきたという思いもあります。平均値を考えるならば、所詮続編であって、前作に感じたような新鮮な面白さはもはや感じないというところでしょう。
「春夏篇」の圧巻は、BBC “自負と偏見”ダーシー役を演じたコリン・ファースにブリジットがインタビューする場面。まさに抱腹絶倒ものです。
「秋冬篇」では、ブリジットとマーク・ダーシーの関係破綻がどうなるのかという興味に付け加え、タイ旅行で監獄にぶち込まれる話、トニー・ブレア率いる労働党の勝利、ダイアナ妃の事故死と、ニュースも盛り込んでいます。
また、後半にJ・オースティン「説きふせられてと同じような場面が登場するのが、オースティン・ファンには楽しいところ。
酔っ払って出したクリスマス・カードと、最後のオチは、ブリジットらしいもの。愚かしいけれど、やはり可愛い女性なのだなぁと納得して、完。

 


 

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