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「ちいさな国で」 ★★ 高校生が選ぶゴンクール賞 |
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2020年04月
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アフリカの小国ブルンジで生まれ育った作者が、自ら経験した、内戦時代を含む故国の姿を描いた少年物語。 主人公のガブリエル(ギャッビー)は、フランス人の父親、ルワンダ難民であるツチ族の母親、妹のアナと4人家族、料理人や運転手らに仕えられ、何不自由ない平穏な生活を送っていた。 しかし、大統領の暗殺後、フツ族とツチ族が激しく争う内戦が勃発するや、穏やかだった生活は簡単に崩れていく。 まず母親のイヴォンヌが、ルワンダに住む親戚の安否を確かめようと出かけたまま消息が分からないままとなります。 そして、隔離されたように平穏だったギャッビーの家庭、友人たちの付き合いにも、フツ族とツチ族の対立が入り込み、幸せな生活は崩れていく。 本ストーリィは、ギャッビーの視点に立ち、彼の見聞きしたことを淡々と語っていくスタイル。そこにリアリティを感じさせられます。 ギャッビーにとってフツ族とかツチ族とかは関係ありません。家族か、親しい人たちか、友人か、というだけ。それなのに周囲はフツ族がツチ族かで全てを決めつけようとする。そこにはもう、個々の存在など全くありません。 内戦の悲劇とは、生き死に以上に、個々の存在、個々の繋がりが全て否定され、人間性が壊れていく、そこにあるのではないかと感じられます。 国際情勢を伝えるニュースでフツ族とツチ族の根深い対立、虐殺の悲劇については知っていましたが、こうしてリアリティを備えた物語を読むのは全く別のもの。内戦の悲劇、非道、痛ましさが強く胸に迫ります。 |