バーナディン・エヴァリスト作品のページ


Bernardine Evaristo  1959年英国ロンドン生。父親はナイジェリア人、母親はイギリス人。2009年大英勲章第五位を受章。ブルネル大学ロンドン校の創作科で教鞭を執り、王立文学協会の副議長を務める。2019年「少女、女、ほか」にてブッカー賞等を受賞。

 


             

「少女、女、ほか」 ★★★       ブッカー賞
 原題:"Girl,woman,other" 
    訳:渡辺佐智江 


少女、女、ほか

2019年発表

2023年10月
白水社

(4500円+税)



2023/12/23



amazon.co.jp

生きた時代も、そのルーツも様々な、英国黒人女性12人の人生を描き出す、まさに圧巻の傑作。

読み始めた最初こそ 500頁超という大部な一冊に、通勤鞄に入れて持ち歩くにも重たく辟易する処もありましたが、どの女性の人生も濃く、冒頭から最後まで少しも飽きることなく完走、いや完読。

読み終えた時の気分は一言、<世界が変わって見える!>

第一章で、まず登場するのは
アナ・ボンス、50代になる黒人女性劇作家にしてレズビアン。長く差別を受けてきたが、ようやくその才能が認められ、自作劇がナショナル・シアターで上演されることになったという次第。
ヤズはその娘で、ゲイの男性から精子提供してもらってアナが妊娠・出産したという経緯。その事実をヤズ本人も承知済なのですが、そのヤズが実にしっかり者。
ドミニクは、アナと一緒に劇団を立ち上げた仲間なのですが、その後袂を別って、米国で別のレズ女性と一緒に暮らし始めるのですが・・・。

一口に黒人といっても、ルーツはナイジェリアだったり、ガーナやソマリアだったりと実に広範。また、肌の色も濃かったり、混血故に薄かったりと、その程度も様々です。
さらにレズビアン、ゲイ、トランスジェンダーも当たり前に登場し、現代社会は何と幅広いことかと圧倒される思いです。

各人の人生にしても、レズ相手から心身とも拘束、少女時にレイプ、頑張って育てた娘から見下され、男に何度も遊ばれ20歳にして3人の子のシングルマザー、突然両親から捨て子だったと通告されるといったように、様々な痛みを抱えています。
どの一人の人生をとっても、それだけで充分なドラマです。
様々な苦労、痛みを抱えていようと、それでも今、それぞれにしっかりと生きている、それが大切なことなのでしょう。

※なお、
キャロルの母親がバミシャーリーの母親がウィンサムで、メーガンの曾祖母がハッティグレースはそのハッティの母親と、12人の女性は絡み合って登場します。
その中でもバミやハッティらの世代が味わった苦労は、やはり壮絶、それだけで一つのドラマになっています。
そして、バミが娘キャロルを励ます言葉は、まさに名言!

最後は予想もしなかった二人の女性の出会いが描かれ、最後の最後まで、本ストーリィは気を抜けません。 是非、お薦め!


第一章 アマ ヤズ ドミニク
第二章 キャロル バミ ラティシャ
第三章 シャーリー ウィンサム ペネロピー
第四章 メーガン/モーガン ハッティ グレース
第五章 アフターパーティ
エピローグ

    


    

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