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Bernardine Evaristo 1959年英国ロンドン生。父親はナイジェリア人、母親はイギリス人。2009年大英勲章第五位を受章。ブルネル大学ロンドン校の創作科で教鞭を執り、王立文学協会の副議長を務める。2019年「少女、女、ほか」にてブッカー賞等を受賞。 |
「少女、女、ほか」 ★★★ ブッカー賞 |
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2023年10月
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生きた時代も、そのルーツも様々な、英国黒人女性12人の人生を描き出す、まさに圧巻の傑作。 読み始めた最初こそ 500頁超という大部な一冊に、通勤鞄に入れて持ち歩くにも重たく辟易する処もありましたが、どの女性の人生も濃く、冒頭から最後まで少しも飽きることなく完走、いや完読。 読み終えた時の気分は一言、<世界が変わって見える!> 第一章で、まず登場するのはアナ・ボンス、50代になる黒人女性劇作家にしてレズビアン。長く差別を受けてきたが、ようやくその才能が認められ、自作劇がナショナル・シアターで上演されることになったという次第。 ヤズはその娘で、ゲイの男性から精子提供してもらってアナが妊娠・出産したという経緯。その事実をヤズ本人も承知済なのですが、そのヤズが実にしっかり者。 ドミニクは、アナと一緒に劇団を立ち上げた仲間なのですが、その後袂を別って、米国で別のレズ女性と一緒に暮らし始めるのですが・・・。 一口に黒人といっても、ルーツはナイジェリアだったり、ガーナやソマリアだったりと実に広範。また、肌の色も濃かったり、混血故に薄かったりと、その程度も様々です。 さらにレズビアン、ゲイ、トランスジェンダーも当たり前に登場し、現代社会は何と幅広いことかと圧倒される思いです。 各人の人生にしても、レズ相手から心身とも拘束、少女時にレイプ、頑張って育てた娘から見下され、男に何度も遊ばれ20歳にして3人の子のシングルマザー、突然両親から捨て子だったと通告されるといったように、様々な痛みを抱えています。 どの一人の人生をとっても、それだけで充分なドラマです。 様々な苦労、痛みを抱えていようと、それでも今、それぞれにしっかりと生きている、それが大切なことなのでしょう。 ※なお、キャロルの母親がバミ、シャーリーの母親がウィンサムで、メーガンの曾祖母がハッティ、グレースはそのハッティの母親と、12人の女性は絡み合って登場します。 その中でもバミやハッティらの世代が味わった苦労は、やはり壮絶、それだけで一つのドラマになっています。 そして、バミが娘キャロルを励ます言葉は、まさに名言! 最後は予想もしなかった二人の女性の出会いが描かれ、最後の最後まで、本ストーリィは気を抜けません。 是非、お薦め! 第一章 アマ ヤズ ドミニク 第二章 キャロル バミ ラティシャ 第三章 シャーリー ウィンサム ペネロピー 第四章 メーガン/モーガン ハッティ グレース 第五章 アフターパーティ エピローグ |