ピエール・コルネイユ作品のページ


Pierre Corneille 1606〜84 フランスを代表する劇作家。ノルマンディーのルーアンにて役人の家庭に生まれ、イエズス会の学校と法律学校に学んだ後、ルーアンにて弁護士開業。劇作家としての経歴は、30年パリで上演した恋愛喜劇「メリート」の成功に始まる。悲劇も書いたが喜劇の名人であり、モリエールが登場する以前において、「嘘つき男」はフランス最高の喜劇と評される。

 


  

●「嘘つき男・舞台は夢」●  ★★★      訳:岩瀬孝・井村淳一




1644年発表
1639年発表


2001年9月
岩波文庫刊
(660円+税)

 

2001/10/21

コルネイユの代表的な古典喜劇2作を収録。
原題:"LE MENTEUR" ,"L'ILLUSION COMIQUE" 

最初の「嘘つき男」は、まさに絶品の面白さ!
法律の勉強を終えてパリに戻ってきた貴族の息子ドラントは、通りがかりに知りあった美人に、早速恋を仕掛けます。
この辺り、フランス戯曲であればいつもどおりの恋愛喜劇の筈なのですが、何とこの主人公は最初から大法螺を吹き始めます。主人公に仕える従僕でさえ、呆気にとられてしまうというのですから、その嘘つきぶりはもう見事な程。
すぐばれてしまうような、見え見えの大嘘なのに、恋の相手、友人、父親と、まるで相手構わず、所構わず、そのうえ嘘の内容さえも構わずと、吹いて吹いて吹きまくるといった具合。
これだけ呆気らかんと嘘をつきまくられると、かえって爽快な可笑しさがあります。
それでいて肝心の恋愛騒動は、最後に落ち着くところに落ち着くのですから、この上なく楽しい、恋愛喜劇の傑作です。

「舞台は夢」は、劇中劇を用いた喜劇。
放逐した息子のその後を心配する父親の眼前に、魔術師が、息子が辿った波瀾万丈の物語を繰り広げて見せます。
これが喜劇なの?と思いきや、最後は井上ひさし「珍訳聖書」の如き逆転劇となり、芝居の面白さが高らかに謳い上げられます。

戯曲好きの人なら、間違いなく楽しめる一冊です。お薦め。

 


   

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