1994年6月
新潮社刊
1998年7月
新潮文庫化
(476円+税)
1998/07/28
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実際に起きたアポロ13号の宇宙空間での事故の一切を明らかにしたノンフィクション。
月着陸に向けて飛び立ったアポロ13号に、3基ある酸素タンクのうちの2基が爆発するという事故が発生する。それは酸素だけでなく、電池、水という必需品の不足に波及し、乗組員生命の危険のほかに地球への帰還すらも危ぶまれるという未曾有の事態に至った。
筆者はこの事態を途中タイタニックになぞらえますが、事実ははるかに恐ろしい。なにしろどこにも逃げ出し様がないのですから。
スリルたっぷりに興奮するという本では決してありません。
むしろ、細かな数値や計算を問題にする場面の繰り返しが多い。だからこそ、ちょっとした手違いがどんな悲劇を起こすとも限らないわけで、それを思うと恐ろしさに震えます。
この危機に、地上スタッフ、乗組員は能力・体力の限りを尽くして立ち向かう。その経緯には、アポロ11号の月着陸よりもはるかにアメリカという国の宇宙技術の凄さ、底力の凄さを感じさせられます。そして卓抜した危機管理能力。それこそ日本に欠けるものと痛感させられます。
訳者である立花隆氏の「このような失敗に対応できるだけの技術力を持っていればこそ、アポロ11号の成功があったといえるのである」という言葉にはつくづく共感を覚えます。
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