1995年発表
1999年9月
文春文庫刊
(667円+税)
2003/06/07
|
今は町医者として人々の敬意を集めるベン・ウェイド。
その彼が30年前のハイスクール、青春時代に経験した初恋を回想すると共に、その相手であるケリー・トロイを襲った悲劇的事件を回想してついに真相に至るという、青春回想ミステリ。
舞台はアメリカ南部・アラバマ州の田舎町チョクトー。
そこに北部から引っ越してきた少女ケリーに、主人公ベンは次第に惹かれていきます。学校新聞の編集を2人で手がけるようになってから、彼のケリーに対する思いはますます募っていく。しかし、結局彼の願いがかなえられることはなかった。そしてその直後、ケリーは暴行を受け、その後の人生を失うこととなる。犯人として有罪判決を受けたのは、地元で乱暴者として知れ渡っていた男性。
しかし、主人公ベンがいつまでもケリーの面影を引きずっているのは何故なのか。当時輝きのあった同級生が、その後人生の落伍者のようになったのは何故なのか。
ミステリとは言いながら、ストーリィは現在と過去を交互に繰り返しつつ、遅々として全体像は明らかになりません。ストーリィのかなりの部分は、ベンがケリーに恋し、そして挫折するまでの詳細な経緯が占めます。読み手の気持ちに余裕がないと、じれったくなる程です。
苦い初恋の回想が終わった時、そこにはベンの隠された秘密、そして驚愕すべき結末が、読者を待ち受けています。
最後に至って、漸くそれまでの過程の必要性が腑に落ちるという次第。どう読むか、どう感じるか。読み手の好みによって大きく違いそうです。
青春期に受けた心の傷は大きい、その思いが余韻としていつまでも残ります。
|