チョ・ナムジュ作品のページ


Cho Ban-hoo  1978年韓国ソウル生、梨花女子大学社会学科卒。卒業後、放送作家として社会派番組のトップ「PD手帳」や「生放送・今日の朝」などで時事・教養プログラムを10年間担当。2011年長編小説「耳をすませば」にて文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。16年「コマネチのために」にてファンサンボル青年文学賞、17年「82年生まれ、キム・ジヨン」にて第41回今日の作家賞を受賞。

 


             

「82年生まれ、キム・ジヨン」 ★★☆
 "Kim Jiyoung Born in 1982" 
      訳:斎藤真理子


82年生まれ、キム・ジヨン

2017年発表

2018年12月
筑摩書房刊

(1500円+税)



2019/05/02



amazon.co.jp

韓国社会における根の深い女性差別の実態を告発した小説。
刊行されるや否や、女性たちから共感され、大ベストセラーになったとのことですが、読んだ内容からするとさもありなん、と感じます。

主人公は
キム・ジヨン、33歳。3年前に3歳年上のチョン・デヒョンと結婚。小さな広告代理店に勤め、結婚後もそのまま働きたいと思っていたが、昨年女児を出産し、やむなくそれを機に退職したという女性。
そのキム・ジヨンが子供の頃から味わって来た女性差別の実態を、振り返る形で描かれます。
まず、家庭内においても男子優先。女子は男子を支えるためなら学業を諦めて働くのも当然、という考え方。
学校の場でも、就職活動の歳にも、常に男子が優先され、女子と言うだけで後回しにされる。
やっと就職しても、職場ではやはり男子が優先。結婚、出産しても、女子が働き続けるための制度は整備されていない。
ストーリィ中、ジヨンや同級生たちが、何度も憤懣やるかたないという声を上げていますが、そりゃ当然だろうと思います。

翻って日本社会ではどうか。
私が結婚した頃は、女性が結婚すれば退職、家庭に入って専業主婦、というのが一般的な考え方でした。
でも、ちょうど女性総合職という制度も出来始めた頃で、職場で女性を排除するような空気はなかったと思います(職場によるでしょうけれど)。
暗黙の了解はあっても、韓国のようにあからさまに行う、口にする、ということはなかったように思います。
まして、こんなに相手の気持ちを無視して言いたい放題、とは。これはやはり国民性の違いなのでしょうか。

いずれにせよ、男女差別のない社会を望みます。


2015年秋/1982年〜1994年/1995年〜2000年/2001年〜2011年/2012年〜2015年/2016年

     


   

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