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Janet Skeslien Charles 米国モンタナ州とパリに拠点を置く女性作家。2009年刊行のデビュー小説Moonlight in Odessaにてメリッサ・ネイサン賞のロマンティック・コメディ小説部門賞を受賞し、<パブリッシャー・ウィークリー>誌で2009年秋のデビュー作品トップ10の一つに選ばれる。パリのアメリカ図書館でプログラム・マネージャーとして働いた経験を活かし「あの図書館の彼女たち」を執筆、2021年 2月のAmazonベストブックの一冊に選ばれる。 |
「あの図書館の彼女たち」 ★★☆ 原題:"The Paris library" 訳:高山祥子 |
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2022年04月
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第二次世界大戦でのドイツ軍パリ侵攻下、パリの<アメリカ図書館>で、戦地や病院にいる兵士たち、そしてドイツ軍により図書館への出入りを禁止されたユダヤ人の人たちに本を送り続けた人々を描いたストーリィ。 本ストーリィは2つの時代に分けて語られます。 一方は1939年から。オディール・20歳は念願叶ってパリにあるアメリカ図書館の職員に採用されます。そこには多士済々の職員、利用者たちがおり、そこでオディールはイギリス人女性のマーガレットと友情を結び、オディールの誘いで彼女はボランティアとして図書館で働くことになります。 しかし、戦況は悪化し、やがてパリはドイツ軍に侵攻され、その支配下に置かれます。 もう一方は1983年、米国モンタナ州のフロイド。 母親を病気で亡くしたばかりのリリー・12歳は、孤独に暮らす隣人のマダム・オディール・グスタフソンと親しくなり、世代を超えた友情を結び、またオディールはリリーにとって信頼できる導き手となります。 それなのにリリー、オディールの過去に関心を抱いて・・・。 本を必要とする人たちへ本を提供し続ける、彼らの思いと覚悟には、本好きな人間として胸熱くなるものがありますが、本作は決してアメリカ図書館、その職員たちの姿を描くだけのストーリィではありません。 家族間での気持ちのすれ違い、思いを共有する仲間たちの気概と相互の信頼、慈しみ合い、友情、そして悔恨の物語。 誰でも後悔することは色々あると思いますが、取り返しのつかないこともあります。オディールのしたことは・・・かなりショッキング。 それでも最後に救い、希望が見出せたことに、心安らぐ思いがします。 |