レベッカ・ブラウン作品のページ


Rebecca Brown  1956年米国生、シアトル在住。「体の贈り物」にてラムダ文学賞、太平洋岸北西地区書店連合賞を受賞。

 


 

●「若かった日々」● ★★
 
原題:"THE END OF YOUTH"        訳:柴田元幸




2003年発表

2004年10月
マガジンハウス

2010年01月
新潮文庫刊
(476円+税)

 

2010/03/06

 

amazon.co.jp

作者のレベッカ・ブラウン、柴田元幸さんのアンソロジー「昨日のように遠い日」に収録された一篇「パン」にすっかり魅了されて興味を抱いた作家ですが、読んだのはまだその一篇のみ。
本書はその彼女の、少女時代を振り返った自伝的な短篇集、とのこと。

人間そして性格的に違うところ多く、父親と母親は行き違うこと多く、ついには離婚。その2人の間に挟まれた少女時代を過ごしたからこそ、著者には自分自身をも冷静に眺める姿勢が育まれたのでしょうか。
本短篇集を読んだ印象の第一は、少女時代の思い出が鮮烈な記憶として留められているらしいことへの驚き、です。
また、そのどれもが、作者自身の人生を左右する重要な入口、きっかけになっている出来事であるという印象を受けます。
父親に親しみを感じる一方で、戦争で英雄だったと明らかな嘘を後妻に語る父親への侮蔑心等々、父親への複雑な思い。
あるいは、サマーキャンプで出会ったカウンセラーへの想いをつづった「ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ」、中学校教師への想いを語った「A Vision」、それらは同性愛への作者のめざめを感じさせる瑞々しい篇。
そして母親の最後の日々を語り、また親から受け継いだところを持つ自分自身の現実について語った篇も印象的。
なお、「煙草を喫う人たち」、非喫煙者である私としては受け入れ難いところのある篇ですが(苦笑)。

平明な文章・ストーリィ、味わってみれば瑞々しく鮮烈。
若かった日々とは、忘れ難く、今の自分を築いていった貴重な日々、そして消えることのない日々。
そんな思いが胸にこみあげてくる一冊です。

天国/見ることを学ぶ/暗闇が怖い/魚/ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ/A Vision/煙草を喫う人たち/自分の領分/息/母の体/ある戦いの記録/受け継いだもの/そこに

       


 

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