2000年9月
岩波文庫刊
(560円+税)
2000/10/27
|
読んだ時期ちょうど仕事が忙しく集中力に欠けていた所為か、ストーリィがよく判らない、と思うことが多かった短篇集です。集中して読んでいればおそらくそうしたことはなかったのでしょうが、ちょっと油断するとストーリィの前後を見失ってしまう、という面を感じます。
第1グループ収録の作品は、ちょっと薄気味悪いところもあります。日本国内でいうなれば、内田百聞「冥途」あたりを思い出します。狂気と死が、人間にとって如何に間近なものか、そんな極限の場面を切り取って描き出したストーリィ、という印象です。
第2グループ作品は、著者の南北戦争従軍の経験と不可欠のものでしょう。人間が死に至るのは瞬く間のことであるけれども、死に直面している本人にとってその間は、深いドラマがある、という趣きの作品集です。
第3グループの作品は、さらっと書かれていますが、現実にはありえない、おぞましいような話。
それぞれ趣は異なりますが、いずれも奇怪なストーリィばかりです。
1.恐怖の世界)月明かりの道/板張りの窓/死骸の見張り番/環境が肝心/男と蛇
2.戦争の世界)アウル・クリーク鉄橋での出来事/チカモーガの戦場で/宙を飛ぶ騎馬兵/哲学者パーカー・アダソン/行方不明者のひとり/とどめのひと突き
3.信じられない話の世界)ぼくの快心の殺人/猫の船荷/不完全燃焼/犬油/底なしの墓
|