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●「女子高生記者ヒルディのスクープ」● ★★☆ |
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2012年08月
2012/10/15
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ヤングアダルト(YA)小説ということですが、かなり良質で一般小説に少しも引けをとっていない作品。 原題の「ピール」とは「皮をむく」という意味。 主人公のヒルディ・ビドルが暮すのはニューヨーク州ベインズビルという、果樹農園の多い小さな町。そこでヒルディは、地元ベインズビル高校で高校生新聞「コア」の記者を務めています。 その地元で幽霊屋敷として噂されているのがルドロウ邸。その邸内で死体が発見されたことから騒ぎになりますが、やがてベインズビルの町に得体のしれない余所者が移ってきたり、いろいろと不可解な出来事が続いて起こります。 全ての背後にある真相は何? ヒルディら「コア」のメンバーは著名ジャーナリストの指導を受けながら、地元紙「ビー」の向こうをはって真相究明に奔走します。しかし・・・。 地元に根を張った新聞発行活動を繰り広げる高校生という設定も面白いのですが、彼らの成長を描いたストーリィ部分がお見事。 またそれと並んで興味深いのは、如何にもアメリカらしいと感じる部分です。つまり、地元の出来事を報道する新聞が地元紙「ビー」の他にはヒルディらが発行する高校生新聞のみであるという設定や、これが草の根の民主主義だと感じる処です。 そして何よりも本作品の素晴らしいところは、彼らをスーパー高校生として描くのではなく、可能性を秘めつつも現実にはただの高校生に過ぎないのだという現実をきちんと描いている点。 主人公ヒルディは、インタビューの仕方や記事についてベテランジャーナリストのベイカー・ポルトンに完膚なきまでにやっつけられて悄然としますし、自分たちの力の限界を悟って敗北感にかられたり弱気になったりもします。 それでもヒルディらの成長を一歩も二歩も後押ししてくれる応援者たちがいて、彼らの成長ストーリィが成立している。大人と子供の理想的な関係をきっちり描いている点も評価したい。 1ランク格上の良質な高校生成長物語。お薦めです。 |