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「きらめく共和国」 ★★ エラルデ小説賞 原題:"Republica luminosa" 訳:宇野和美 |
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2020年11月
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亜熱帯、スペイン語圏という架空の町=サンクリストバトルを舞台にした、ファンタジーともホラーとも思えるストーリィ。 主人公はかつてその町に、妻マーヤと連れ子である娘ニーニャと共に移り住み、町の社会福祉課に課長として勤務した人物。 その町で22年前に起きた奇妙な出来事を、回想して語る、という設定です。 そのサンクリストバトルに何時の間にか現れた、32人の子どもたち。一体彼らはどこから現れたのか、ジャングルからなのか。 そのうえ、彼らの間で交わされる言葉は理解不能。さらに社会ルールに反して物乞いをしたり盗みをしたりと、次第に町の人々に不安を与えるようになります。 そして、ついにその子どもたちが群れとなってスーパーを襲撃するという事件が発生します。 しかし、その後子どもたちは揃って姿を消してしまう。いったい彼らは何者だったのか。そして何処に消えたのか・・・。 本ストーリィからはっきり浮かび上がってくるのは、大人と子どもの対立、既成社会と新たな社会の対立、そして暴力の問題。 作者が本物語を通じて何を伝えようとしているのか、今一つ理解できていないのですが、大人たちが自分たちの論理だけで子どもを抑えつけようとした時、何処からか綻びが生じてしまう、そうした怖れを警告しているように感じます。 なお、題名の「きらめく共和国」の意味は、姿を消した子どもたちの居場所が分かった時、はじめて分かります。 |