エドワード・セント・オービン作品のページ


Edward St Aubyn  1960年生。英国の作家。男爵家の末裔として生まれ、イギリスとフランスで育ち、名門ウェストミンスター・スクールを経てオックスフォード大学で文学を学ぶ。幼い時に父親から性的虐待を受け、後にアルコール依存症、ヘロイン中毒に苦しんだ半生を綴った「パトリック・メルローズ」シリーズ(全5作)が高く評価され、中でも「マザーズ・ミルク」はフェルミナ賞外国賞を受賞、ブッカー賞の最終候補作となる。

 


                                   

「ダンバー-メディア王の悲劇- ★★     
 
原題:"Dunbar"             訳:小川高義
 -語りなおしシェイクスピア2:リア王-




2017年発表

2021年03月
集英社
(2700円+税)



2021/06/27



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“語りなおしシェイクスピア第2弾。

カナダで巨大なメディア王国を一代で築き上げた
ヘンリー・ダンバーは、高齢いなった今、業務執行にはもう携わらないが今までどおり会長に君臨すると宣告しますが、それに反旗を翻したのが長女アビゲイル次女メガン
2人は父親を北西イングランドにある療養所に放り込んで監禁、来たる取締役会で王国の権限を掌握して、多額の利益を得ようと画策します。
ところがそのヘンリー、アル中の喜劇役者と共に療養所を脱走、荒野を踏破して逃亡を果たそうとします。
父親の窮地を知った末娘フロレンスは、長く父親の友人でもあり相談役であった顧問弁護士ウィルソンと共に、父親の救出のため現地へと向かいます。
そして・・・・。

「リア王」を読むと、如何にも古代という印象ですが、こうして現代の物語に置き換えられると、その内容がよく解ります。
父親を裏切った娘2人、元々父親ヘンリーの娘に対する態度にも問題があったのだろうと思われる処ですので、ことさら凶悪にして淫乱という性格設定を与えられているようです。

療養所を脱走したヘンリーの意志の強さ、苦難に負けるものかというエネルギーは、ちょっと読み処。スリリングな面白さを掻き立てています。
ただ、結末を原則どおりにした処はちと残念。かなり無理矢理なしようと思いますので。

     


        

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