ジョゼフ・エイミエル作品のページ


Joseph Amiel 米国の作家。他の著書に「仮想結婚の終わりに」等あり。

 


   

●「女銀行家デボラの復讐」●  ★★★
 原題:"BIRTHRIGHT"   訳:間山靖子


女銀行家デボラの復讐画像

1985年発表

1987年11月
新潮文庫刊
上下
(各560円+税)
絶版

 

1988/04/04

 

amazon.co.jp

数多く読んだ小説の中でも、面白さという点で群を抜いている、と思う作品です。
邦題はストーリィの内容が判りやすい題名になっていますが、原題は“長子の権利”という意味の言葉。ロスチャイルド家をモデルにしたような、ヨーロッパ各地にまたがるクラウネンゴールド家という個人銀行財閥を描いた物語です。

英国クラウネンゴールド家の養女デボラは、デボラを愛した祖父サミュエル、養母マドレーヌの死後、養父レスリーによってその相続財産を奪われたばかりか、家からも放り出されます。
恋も失って傷心のまま単身アメリカに渡ったデボラは、やがて金の投資で巨額の資金を入手し、証券会社、損保会社を立て続けに買収、若い女性という身でありながら投資で大成功し、デボラ・ド・クラウネンゴールド・コーポレーションという金融グループを築き上げます。そしてついにデボラは、自分を締め出した養父レスリーへの復讐へと取り掛かります。
ところが、ストーリィはその程度では終わりません。アラブがユダヤ系であるクラウネンゴールド家への攻撃を開始したことを知って各国のクラウネンドールド家を結集したデボラは、乾坤一擲の大勝負に打って出ます。さて、その結末は....。

テンポの良い展開に加えて波乱含みのストーリィ、そして次第にスケールアップしていく内容、読み出したらもう手放せなくなる面白さです。
天才銀行家だったサミュエルがデボラの才能を早くに見抜き、息子のレスリーを除外してまでも銀行の経営をデボラに委ねようとした大胆な行動。アメリカでデボラが最初に勤務した投資銀行における女性への偏見。恋愛に拘束されまいとするデボラの、英のバシュ・ローエン、米のデイヴィッド・ホルツという2人の男性との恋愛の行方は、という見所もたっぷり。そのうえ、世界の金融動向、投資銀行業への傾注、女性の地位向上という社会情勢ををしっかり踏まえていることが、この物語を魅力あるものにしています。
抜群に面白いこと、間違いありません。お薦め!

  


 

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