デイヴィッド・アーモンド作品のページ


David Almond  英国北部の炭鉱町で誕生。20代初めから小説や詩、戯曲を書き始める。1998年初の小説「肩甲骨は翼のなごり」が大ヒット、カーネギー賞、ウィットブレッド賞の両賞を受賞。


1.肩胛骨は翼のなごり

2.ヘヴンアイズ

3.ポケットの中の天使

 


   

1.

「肩胛骨は翼のなごり」 ★★    カーネギー賞・ウィットブレット賞
 
原題:"Skellig"    訳:山田順子


肩甲骨は翼のなごり

1988年発表


2000年09月
東京創元社刊

(1450円+税)

2009年01月
創元推理文庫化

2004/07/26

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主人公マイケルと隣家の少女ミナによる、不思議な体験を描いた児童向け小説。

マイケルは両親と赤ん坊の妹と共に、新しい住まいに引っ越して来ます。その家にはガラクタばかりを詰め込んだ廃屋のようなガレージがあった。
そのガレージへの出入りをマイケルは両親から禁止されますが、禁止されるとかえって覗き見たくなるのが子供の心理。
赤ちゃんが生死を危ぶまれる病気で入院したことから、両親は赤ちゃんにかかりっきり。マイケルは禁じられていたガレージに忍び込みます。そこでマイケルは、不思議な存在である“彼”(スケリグ)に出会います。

生死の境にいる赤ちゃんの苦難を感じ取って、マイケルの心情は不安に揺れ動きます。その一方で、風変わりな少女ミナと共にスケリグへの関心を抑えられない。果たしてマイケルが出会ったスケリグとは、現実的な存在なのか。

懐かしさを感じるような幻想的雰囲気と、ストーリィにある気品が印象的。
邦題と共に、ちょっと忘れ難い作品です。

     

2.

「ヘヴンアイズ」 ★☆
 
原題:"Heaven Eyes"    訳:金原瑞人


ヘヴンアイズ

2000年発表

2003年06月
河出書房新刊

(1500円+税)



2003/09/28



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正直言って、捉えどころに困惑した作品。
自由と冒険を求め、3人の子供たちが孤児院を抜け出し、筏で川を下ります。しかし、3人が行き着いたのは“ブラック・ミドゥン(黒い泥沼)”と呼ばれる地帯。
身動きの取れなくなった3人がそこで出会ったのは、両手に水かきのある少女と奇妙な老人。3人は、崩れかけた倉庫や工場が立ち並ぶ一画で、その2人と暫し暮らすことを余儀なくされます。
2人はいったい何者なのか。幻想的でややホラー的な雰囲気が、本作品の全体に漂っています。

主人公である少女エリン・ローと仲間である2人の少年は、いずれも愛する親を失ったというトラウマを抱えています。それが、孤児院からの脱出を彼らが繰り返す理由。
そんな3人を、不思議な少女は純粋に兄姉のように慕います。“ヘヴンアイズ”という少女の名前は、「天国」を見いだし楽しむことができるというその性格から、老人が名付けたもの。
守るべき愛する存在を抱えるに至ったエリンは、やがて自らの意思で孤児院に戻り、問題から逃避せず正面から受け止める姿勢を身につけています。
本書は、エリンらの幻想的な冒険、そして成長の物語と言うべき作品。叙情的な雰囲気とともに、ヘヴンアイズという少女の存在が、とても印象的です。本作品の魅力はそこにあります。

※同じ孤児の川下り冒険小説であっても、開放的なM・トウェイン「ハックルベリー・フィンの冒険と対照的に、本作品は閉鎖的かつ幻想的。いかにも英国文学らしい、と感じます。

   

3.

「ポケットの中の天使 ★★
 原題:"The Tale of ANGELINO BROWN"    訳:山田順子


ポケットの中の天使

2018年02月
東京創元社

(1900円+税)


2018/04/08


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定年間近の路線バス運転手、バート・ブラウン。かつてはバス運転が大好きだったものの、長年運転手をしてきた今は、面倒な乗客、うるさい子供たちへの愚痴ばっかり。
ある日の運転中、自分の胸に何か異常が?と心配して見ると、何と胸のポケットの中に小さな天使が!
翌日、セント・マンゴー校で調理師をしている妻
ベティが、アンジェリーノと名付けた天使を学校へ連れていくと、気付いた生徒たちが大興奮。
その一方、アンジェリーノの姿を窺う怪しい人物の影が・・・。

小さな天使のアンジェリーノ、彼が何かをする、という訳ではありません。でもその愛らしい姿にブラウン夫婦や心ある人たちの気持ちが変わっていく、というストーリィ。
そしてアンジェリーノの危機に、3人の生徒たちは積極的に冒険します。

どちらかというと児童向け作品でしょう。でも、大人たちの中にある純真な気持ちを引き出すストーリィにもなっています。
最後は、あれっ?という結末でしたが、何やら心ウキウキと楽しくなってくる気分です。

 


   

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