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Caroline Adderson カナダの小説家。ブリティッシュコロンビア大学で教育学を修める。処女作がカナダの総督文学賞にノミネートされ、Ethel Wilson Fiction賞を受賞。2006年に創作活動全体に対してMarian Engel賞を受賞。 |
「母さんが消えた夏」 ★★ |
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2014年06月
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12歳のカーティスは、母親デビーと5歳の弟アーティスとの3人暮らし。 高校も卒業していない母親は、ガソリンスタンドで真夜中勤務をして働いていたが、ある日から家に帰ってこなくなります。 元々貧しい家庭、すぐ食べるものにも不自由しますが、カーティスは何とか幼い弟をなだめつつ、母親が帰ってくるのを信じて待とうとします。 何故ならかつて一時期里子に出されたカーティスは、その家の息子にひどいイジメを受けた経験があるから。 困窮するカーティスに手をさしのべたのは隣家のバートという老女。歩行器を使わなければ歩けないバートはカーティスに買い物を頼むようになり、そこから老女と兄弟の持ちつ持たれつの関係が生れます。 やがて老女は兄弟を誘って車に乗せ、湖の近くにある小屋へと向かうのですが・・・。 何故母親は家に帰ってこなくなったのか、そして老女はどんな意図で兄弟を山中の小屋に誘ったのか、というミステリ要素。そして、母親のいない家を守ろうとする町中サバイバルに、山中でのサバイバル体験という冒険要素を備えた児童向け作品。 母親はきっと戻ってくると信じ続けると共に、弟を守ろうとするカーティスの姿にはとても切ないものがあります。 けれどカーティスは、決して同情されるだけの存在ではなく、勇気ある決断を下すことができる少年でもあります。そのことを身をもって示したところが素晴らしい。 ひと夏の、感動的な、少年の逃避行&冒険物語。 |