Stanley Meltzoff (1917- )
略歴
New York生れ。City College of New York (CCNY), New York University Institute of Fine Artsなどで学ぶ。第二次大戦従軍後、CCNYで美術史、実技など教えた後、1940年代終わり頃からPratt Instituteで教職に就くと共にイラストレーターとして出発。ペーパーバックのカバーの他、Esquire、Saturday Evening Post、Life、Scientific American、Fortuneなどの雑誌で活躍。スキンダイビングが趣味で、海中の魚の絵を得意としてNational Geographic誌では常連の画家であった。1960年代以降は海中ものを中心とする自然画家として独立、今日に至っている。
1999年にSociety of IllustratorsのHall of Fame Artistに選出されている。このSociety of Illustratorsというのは、1901年に設立されたイラストレーターの団体で、ひと頃Vincent Di Fateが会長(President)を勤めていた事がある。1958年からHall of Fame Artistを選出し始め(歴代の会長が集まって選ぶそうな)、その第1回はNorman Rockwell。SFに多少とも関係ありそうな人を挙げると、1988年にRobert T. McCall、1995年にJoseph Clement Coll、1997年にDiane and Leo DillonとChesley Bonestell、1998年にFrank FrazettaとBoris Artzybasheff、2000年にJames Allen St. Johnといったところ。どうしても高級誌に描いていた画家が高く評価されてしまってペーパーバック画家は1級下に見られてしまう様だ。James Avatiですら1995年になるまで選ばれなかったし、その後James BamaやMitchell Hooksといった人(そう言えばBamaやHooksもSFの表紙は幾つか描いている)が選ばれてはいるものの数は少ない。
James Avatiは、現実的、ドラマチックな絵でペーパーバックの表紙に革命的な変化をもたらし、ペーパーバック界のレンブラントと呼ばれた人で、MeltzoffはそのAvatiと非常に親しかったらしい。一時はスタジオを共有し、家族ぐるみで一緒に生活したこともあるくらいで、影響も相当に受けている。もっとも50年代初めのペーパーバック画家の大半はAvatiの影響を受けており、特にSignet Booksの表紙にはその手の絵が氾濫している。最近出たAvatiのビデオにもMeltzoffが出演している。
その頃のAvatiの絵は例えばこんなもの。
ついでにMeltzoffのものも。
MeltzoffのSF表紙画は非常に少なく、知りうる限りでは以下のもので全部である。
*は本の中にに画家名が明記されているもの
著者 |
タイトル |
出版社 |
出版年 |
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1 |
Heinlein | The Day After Tomorrow | Signet 882 | 1951 | Meltzoffのデビュー作?Di Fateの本にはMeltzoffの絵ではないと書いてあるが、どう見てもMeltzoffである。この写実的でありながら夢の中の様な雰囲気がなんとも言えず良い。 | |
2 |
Heinlein | The Green Hills of Earth | Signet 943 | 1952 | MeltzoffのSF画で最も有名なもの。何度見ても素晴らしい。最近この原画が取り引きされたが、高級車1台分のお値段だったとか。 | |
3 |
Heinlein | The Puppet Masters | Signet 980 | 1952 | これも有名な絵。Meltzoff本人はこれが1番のお気に入りだそうである。 | |
4 |
van Vogt | Destination: Universe | Signet 1007 | 1953 | 人も宇宙船も星も何もかもMeltzoff風。 | |
5 |
Heinlein (ed) | Tomorrow, the Stars | Signet 1044 | 1953 | 同上。 | |
6 |
Asimov | The Currents of Space | Signet 1082 | 1953 | このロケットの格好がMeltzoff独特のものなのです。それとこの空。Meltzoffの空と言いたい。 | |
7 |
Bester | The Demolished Man | Signet 1105 | 1954 | これは素晴らしい。上でも書いたように背景の非現実と前景の現実のアンマッチがMeltzoffの魅力か? | |
8 * |
Matheson | I Am Legend | Gold Medal 417 | 1954 | これも素晴らしい。それにしても名作の表紙ばかり描いていますね。 | |
9 * |
Sloane (ed) | Stories for Tomorrow | Funk & Wagnalls | 1954 | ハードカバーSFの表紙はこれだけだと思う。なかなかムードのある絵だ。 | |
10 |
Leonard | Flight Into Space | Signet Key s317 | 1954 | どこにもMeltzoffの絵だと書いていないし、この本のことに言及しているものも見た事ないが、まず間違いなくMeltzoffの絵だと思う。SFではなく宇宙科学書。 | |
11 |
Heinlein | Revolt in 2100 | Signet 1194 | 1955 | この絵はMeltzoffのものだということになっているし、そうだろうと思うが、人の描き方が何となくRobert Schulz的で気になる。但し絵自体は素晴らしい。 | |
12 * |
Conklin (ed) | Science Fiction Terror Tales | Pocket 1045 | 1955 | これはMeltzoffとしては面白くない絵である。 | |
13 * |
The Magazine of Fantasy and Science Fiction | May 1955 | MeltzoffのSF雑誌の表紙絵はこれだけだと思う。 | |||
14 |
Margulies & Friend (ed) | Race To the Stars | Crest s245 | 1958 | 背景のロケットや土星みたいな天体はかなりいい加減な描き方である。もうSF画には飽きてきたのかもしれない。実際これを最後にSF表紙は描いていない、というよりペーパーバックの表紙絵を描かなくなってっしまった。 |
MeltzoffはSF画には滅多にサインしなかったし、当時のペーパーバックは表紙画家の名前を出す事は稀だったから全部特定する事は難しいけれど、以上のものはまず間違いない。他にもMeltzoff風のものはあるが、多分別の画家が真似したものであろう。一例としてこんなのはどうでしょう?
Meltzoffは作品が少ないしSF専門でもないので、SFファンの中でそれ程名が通っていた訳ではないが、Vincent Di Fateが著書のINFINITE WORLDS、その他で極めて高い評価をしたので一遍に知名度が上がってしまった。何しろMeltzoffのSF画は上記のものしかないので、当然のことながらその原画が(殆ど出る事はないが)出るととんでもない値段になる。