その6

Harlequin Books

Harlequin Booksというと今ではロマンス小説の代名詞みたいになってしまっているが、元は1949年に設立されたカナダの普通のペーパーバック出版社だった。1950年代の終り頃からロマンス小説専門になってしまい、どうでも良い出版社になってしまったが、初期のものはマニア好みの表紙が多いこともあって人気が高い。SFは数は少ないが(ここに紹介するもの以外でめぼしいのは、WinbaumのThe Black Flameくらい)、軒並み高値が付く。

Harlequin Books 1953

表紙:William Book

Harlequin Books 1954

表紙:Paul Anna Soik

Harlequin Books 1958

表紙:Norm Eastman

Harlequin Books 1953

表紙:不明

1930年代から1950年代にかけて本名と、Thornton Ayre、Vargo StattenなどのペンネームでSF、ウェスタン、ミステリを書きまくった(100以上の長篇がある)英国の作家John Russell Fearnの代表的シリーズもの、Golden Amazonからの3冊。

原型は1939年から1943年にかけてFantastic Adventures誌にThornton Ayreの名前で掲載されたスーパーウーマンものの連作だが、上の3作の初出は、1944年にWorld's Workから出版されたハードカバーと、1945−46年にToronto Star Weekly誌に掲載されたもの。シチュエーションも、原型では金星に墜落したロケットから救い出された孤児が原住民に育てられてスーパーウーマン化したもの(要するに女ターザン)だったのが、戦争の孤児が外科医によって”改造”されたという風に変えられている。

このシリーズは人気を博し、その後も続々20作以上書き継がれたが、作者の死(1960年)と共に終ってしまった。初期の6冊のハードカバーと共に、3冊のHarlequin Books版もコレクターズアイテムとなっており、100ドル近い値段がつくが、最近米国のGryphon Booksからペーパーバック化されている。

なんともはやの表紙だが、この小説こういう扱いをされる事が多くて、1960年にBeacon Booksから出た時は、同じ様な表紙に、タイトルまでThe Mating Cryというすごいものに変えられている。

ということはこの小説にも問題が有るのであって、こういう場面が出て来る事はまちがいないのだが、未読なのでよくわからない(注1)。あまり出来の良い作品とは言えないようだし(注2)、そもそもVan Vogtに誰もそんなものを期待しないだろう。

初出は1950年、Greenberg社からのハードカバー書き下ろし。このHarlequin Books版の方が古書価は高いと思う。

(注1)その後読んだらありました。

(注2)ひどい出来でした。

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