瀬戸内海を自転車で渡ろう
(ツール・ド・しまなみ/ぶなば版)
1999/8/14

'99/9/11 登録

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【プロローグ】

 こぶなはMTBで親子一緒に走ることを、以前から楽しみにしていた。お盆で愛媛に行く。愛媛といえば旬な話題は「しまなみ海道」。 オープンのニュースを聞きかじるうち、自然と頭の隅に入ったこと。瀬戸内三橋のうちで唯一、歩いて渡れる橋らしい。んでは、『瀬戸内海を自転車で渡ろう』!。

 いったいどれくらいの距離なのか、どれくらいで走れるのか。できれば自分のMTBを持ち込みたい。レンタカーに乗るのか?ついでに、瀬戸大橋を渡っていないので、行きに(車で)そちらも渡ってみたい。帰りに淡路島にも立ち寄りたい。お盆だから。

 こうして、観光案内雑誌やらインターネット検索やら、道路地図やら。いつものレンタカー屋さんに『自転車二台(親子)乗せられる車は?』。しまなみサイクリングコースは、全長で80kmあるらしい。走れるか?。一日で行けるのか、二日に渡った場合はどうするか?。尾道大橋は車道との区別が無く、危険だともある。よし、渡船場がゴール!。最終的に決まったのは、出発当日(8/12)の朝、レンタカーを借りてから。何とかMTB二台が乗った。『予定どおり、さあ出発だぁ〜!』。

【一路、愛媛へ】(8/12)

 以前の勤務地なら前夜から車を借りるのだが、今は仕方がない。西淀川の自宅を親子4人で出発。高速料金は節約型。阪神高速の尼崎東ICに入る。ところが月見山まで25kmの渋滞とある。次のICで降りる(笑)。こぶな『一つで降りる人なんていないんぢゃない?』。

 どうせのろのろなら43号線を走ろう。が、これではいつ岡山に着くか!?。出発直後に車内で家族協議(苦笑)。結果、瀬戸大橋は次の機会にして、勝手知ったる明石大橋〜鳴門大橋へコースに変更とあいなった。新神戸トンネル〜箕谷〜布施畑から明石大橋に突入する。月見山の混雑が避けられる便利なコース。淡路島への盆参りは帰りにと、高速縦貫道をひた走り。

 二車線とものろのろとはどういうことや!と、パッシングしてみても、何故か反応がない。すると、なんとずっと前にパトカーが居た…。この忙しいときに頭押さえんでも!と文句を言いつつも、自分ものろのろの仲間入り。といっても80kmくらい(はは)。

 やがてパトカーが高速から降り、また快調に走り始める。このイブサム(7人乗り)、2,000ccで高速道路は余裕があるな、けど、山道のワインディングロードでは、どうやろかなどと評論が続く。そんな道をスイスイ走れる車でないと、我が家では評価されない。

 昼食を済ませて四国・徳島に入る。地道にうどん屋さんがいくらでもある。もっとええところで食ったら良かった(笑)。徳島道を池田へ。『去年は剣山でキャンプしたよな』。こぶな『…』。『もう忘れたのか?』(苦笑)。川之江で高速に乗り、いよ西条ICで降りる。そう、ここは石鎚山の麓。周桑郡は小松町が今回の、いや、いつものベースキャンプである。

【ツール・ド・しまなみ/ぶなば版】(8/14)

参考(しまなみ海道自転車マップ):http://www.hsba.go.jp/3kan/jitensha/jitensha02.htm

 朝の涼しい間にできるだけ走ろう。『朝早く出るぞ!』。こぶなが朝3時半から起きてごそごそしていたというから親としては嬉しい。持ち物はできるだけ軽く。飯は途中で調達。走破が第一の目的。こぶなは長袖に長ズボンのトレーナー。自分はTシャツと薄手のGパン。軽いハイキングという出で立ちで、サイクラーのかっこ良さではない。

 まずは起点の今治へ。そう、「サンライズ糸山」。来島大橋の手前である。ここまでは車で送ってもらう。『橋が見えたぞ!』。自然と気持ちが高ぶる。施設の前で記念写真を撮ってもらう。が、実は写ってなかった、残念。7:25 出発。天気は晴れ。絶好のハイキング、いや、サイクリング日和である。自転車では橋ごとに登らねばならないが、そこはMTB。ギアを軽くしてゆるゆると登る。見送ってくれる家族に手を振り、未知の旅へ一直線だ。

 来島海峡大橋は今治側から第三、第二、第一と三つの橋が連なっている。1,570m+1,515m+960m=4,045mの箱桁形式の吊り橋、三連チャン。車道と並行して走る道。ギアを最大にあげて、かなりのスピードで駆け抜ける。高台を一直線に、風を切って走る爽快感は、何とも言えない。足下は海峡。紺碧の海が広がる。見上げれば青い空。それに、瀬戸内の汐風は、昔懐かしい味がする。息子のこぶな(小4)も後ろをついてくるが、ギア一つ早さが違うようだ。

 7:46〜51 休憩。来島大橋は一つの橋としか感じなかった。ここは大島。石の島である。村上水軍も、城の石垣はここの石で作ったか。橋を渡りきったところで降る降る。それがこのサイクリングロードの常識。R317を走る。少々の登りがあるが、そこはまだ走り初め。余裕がある。降りと平地は快適そのもの。二人連れのサイクラーが追いつき併走するが、そこは鍛え方が違う。やがて前に、そして見えなくなってしまった。

 海岸渕を巻くように走ると、やがて伯方・大島大橋が見えてきた。この橋の袂で一休み。8:43〜53。橋は頭の上。凍らした麦茶が美味い。いろんな自転車に乗った人たちが行き来する。通称「ママちゃり」も。高台への、いや、橋への登り。ゆるゆると。ほぼ橋の高さに届いたかというころ、一人のサイクラーが行き違う。後ろを来ているこぶなに、
  『ファイトぉ〜』
と、なんとも美しい声が。気がつかなかったが、女性だったんだ。

 伯方・大島大橋は、大島大橋と伯方橋の二つが連なっている。840m+325m=1,165m。箱桁(補綱桁)吊り橋と綱箱桁(ようわからん)。この間の身近島にはキャンプ場が見えた。遙か下に芝生の広場が。渡って休憩。9:07〜15。ふたたびR317を走り、続く大三島橋へ。

 大三島橋。328mのしまなみ海道唯一のアーチ橋だ。ここも車に並行した道を走り抜けた。快調そのものである。9:30 大三島に入って一休み。この島には大山祗神社がある。一人相撲の話題でテレビに出ていた。立ち寄りたいところだが、今回のイベントは完走が目的。目もくれずに一目散しかないのだ。

 大三島の東端、海岸沿いのR317を多田羅へ向かう。しまなみ海道で一番大きな島ではあるが、海道はかすめているだけ。こんな位置関係では高速道を通り過ぎてしまうではないかと思ったら、そこはそれ。ちゃんと引き留める施設があります。多田羅大橋の袂。橋の見学場所ですな。

 子供たちがプールで遊んでいる姿を見て、海のそばなのにと思い、元自衛隊のヘリコプターが何故こんなところにあるのかとも思い、またゆるゆると橋の高みへ登っていく。ここは観光客も多い。多田羅大橋。1,480mの斜張橋。この橋の美しさは塔のような橋脚と、ピンと張りつめた綱の数々が作り出す直線の美にある。自転車で走ると橋頂の高さは仰ぎ見るばかり、そう、空の高さそのもの。

 10:10 生口島に入る。広島県に入った。朝早かったからそろそろ昼飯時。こぶなに聞く。『美味しいタコが食べたいかい?それとも先を急ぐかい?』。目の前に吊り下げたタコには興味がないらしい。結果、最短路のR317へ。後で判ったことだが、店がある北回りが本来のサイクリング道だったんだな、これが。本来のコースを外れてしまったが、仕方なし。

 海岸沿いの道で、車も高速道路ができていないためにこの道を走る。昼食を食べるも調達するも、何もない道。そろそろ暑くなってきた。あまりに暑いので自然と入った測道にあるタクシー屋さん前で一休み。11:10〜25。日陰を求めて座るが、凍らした麦茶では水分が足りない。氷のみが残る。この島は高速道路がまだ開通せず。これが大渋滞。島に入って以降、尾道側からの車がずっと渋滞している。

 横をスイスイとまではいかないのが辛いところ。尻が痛いぃ〜!!。少し走ってコンビニで一休み。無料休憩所で昼食とした。11:30〜12:05。ペットボトルや缶を無駄に費やしても仕方ないから、水を拝借して出発。なんとサドルが熱い。日陰に止めたつもりが、もう日が傾いたのだ。なおも海岸沿いを走ると橋が見え、その下を抜ける。こぶなも黙々とついてくる。ゆるゆると暑い中を登る。

 生口橋。790mの箱桁型斜張橋。一気に駆け抜けて休憩。12:35〜45。写真を撮り、橋を眺め、日陰を求めて横になる。と、ホオジロの声。休憩所の囲いに留まって囀っていた。『頑張れ!』ってか?(笑)。R317に向かう。はて?。交差点を曲がって登り始めるが、どうやら違う。こんな狭い道を車と区別無しでは。おまけにトンネルあり。こりゃいかんと戻って海岸沿いを再び北上する。これが正解。どうも広島側はサイクリングロードへの力が、愛媛側とは違うようだ。鬼岩で右折。しまなみ海道の宣伝旗を頼りに進むのがコツらしい。

 サイクラー二人が建物の影で寝ている。こんな熱い時間帯、寝て過ごすのが良いのだろうとは思われる。できるだけと思うが、すぐ先の登り道で『休憩、休憩、暑い、暑い』。それでも、日陰で休憩を決め込んでいたら、数名が登っていった。高速道路と並行する道を行く。登り切ったら後は、らくちん。ブレーキをかけるのを惜しみ、とにかく前へ。

 海岸沿いに出る。海水浴客が多い。それだけならどうってことないが、車を歩道に乗り上げて駐車しているのが問題。愛媛側は車止めがあり、サイクリングロードが確保されていたのに、ここはダメ。歩道を走れない。仕方なく海岸側の車道を行く。

 因島大橋。1,270mのトラス桁吊り橋。これまでの橋と同じく、少々の通行料を料金橋に入れる。スタンプカードも押して、もらう。が、ここのサイクリングロードは、がっくり。車道の下で狭い。自転車道が狭いのでバイク道をいっとき走るが、これはバイクには迷惑。

 14:10 向島に入る。どこかで橋の姿をと思っても眺めの良い休憩所がない。どんどん降り、完全に通り過ぎてしまった。14:25〜35 休憩。海岸沿いに出ると、ここも車が歩道に縦列駐車。仕方なく車道の海岸側へクロスする。向こうから来た車が、続くこぶなと行き違う。このときクラクションの音が。『馬鹿たれぇ〜。大きな顔をするな!』と言いたいところを押さえる。勝手がまかり通る地域とは情けない。

 海岸沿いを北上。R317に入らずR377を行く。途中、朝日堂スーパーで休憩。喉が渇いてやむなく飲み物を調達。飲料水もからっけつだし。店のおばさん『そう、今治から来たの』『尾道ででも泊まったら』。有り難いお言葉だが、迎えの車を頼んでいる。大渋滞らしいけど〜。

 こぶなも自分も「尻が痛い」。膝に力が入らなくなっているが、だましだまし先を急ぐ。向島町役場へは右折、左は渡船場とある。ここや!。川沿いに北に入る。車が一台通れるだけの狭い道を行くと、渡船場。見上げると眼前には尾道城が。フェリー乗り場の人に確認して本日の終点。《完走だぁ〜!》。ときに15:10。約8時間の行程だった。

【完走して、その後】

 完走した足で「打ち上げ」「ビール!」といきたい親だったが、『このうどん屋で軽い食事を!』という親に、こぶなは『おなか空いてへん』。もう体力を使い果たした気が抜けた状態で、元来た道を鞭打って戻る。もちろん、子供にはそんな弱音は吐けない。ただただ無言でペダルを踏む。くだんの朝日堂スーパーに着いて、迎えの車にSOS(笑)。ちと完走の充実感とは裏腹に貧素な打ち上げ。が、このままでは終わらんぞ〜。

 実は『往復自転車は無理や。勘弁してくれ』と車での迎えを頼んでいた。携帯電話で休憩の都度、連絡を入れていた。昼前から小松町を出た車が、なんと渋滞に会い、いっこうに近づかない。しまなみ海道は賑やかである。拾われた、いや合流できたのは、なんと日暮れ近かった。

 大三島で別働隊の親戚と合流。さて夕食っと。ところが19時も回ると、この近辺に開いている食堂はない。ガイドブック片手に携帯電話をかけ回り、やっとのことで大山祗神社近くの店で「鯛飯弁当」を調達。夜空を見上げながらの食事。良かったのは帰りに見た伯方島の花火。子供たちと歓声を上げる。回りも同じ。高速道路なのに次々と路肩に駐車する車が出る。気が付いたら向かい側でパトカーが叫んでいた。『駐車違反だ』と(笑)。

 ベースキャンプにたどり着いたのが22時。子供たちは風呂も入らずに寝入ってしまった。仕方ないわなぁ〜。自分は風呂に入り、感動の一日を思い起こしながら眠りに吸い込まれる。

【明くる日】(8/15)

 体の疲れは温泉でとる。そう、愛媛の温泉といえば「道後温泉」。家族揃って、ゆるりと道後温泉の本館へ。昼というのに階上は満室。昼食をとり、時間をずらせて再び窓口へ。3階に部屋を確保。おっと、窓外に山くんの泊まったビジネスホテルが。そして地ビールが飲める店もあるぞ。舌なめずりをするが、今は飲めない。温泉を堪能し、地ビールを調達してベースキャンプへ戻った。

【エピローグ/帰阪へ】(8/16)

 例によって深夜の行動を起こす。真夜中、来た道を走る。ただ、この辺り、国道は高速道路並みに走れる。川之江まで料金の節約だ。徳島道、鳴門大橋をひた走り、明け方に淡路島へ。こういう動きをすると、鳴門SAは、いつもゴミの山。人々が生み出すゴミの容量が、ゴミ箱の容量を越えているのだ。時代は考えものである。

 こうして淡路島の墓参りも済ませ、10時ごろには帰阪したのだが、困ったことがあった。筋肉の痛みや尻の痛みではなく(笑)、手指に力が入らなくなったこと。何故か左手の指だけが力入らず。MTBの前傾姿勢が影響したのか…。タバコが指に挟めない・・・・・、なんともこんな状態から復帰するのに一週間近くかかった。

 とはいえ、この夏の我が家のイベント、その一つが成功裏に終わった。そのときの感動を思い起こしながら書きつづらせてもらいました。「ツール・ド・しまなみ」サイクリング大会は、秋にも催されるとか。皆さんも、チャレンジなされては如何でしょうか。


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