六甲山/紅葉谷道
1999/2/11

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 2月の11日、久しぶりに六甲へ入った。今回は、宮城県は川崎のお客さんを案内してのハイキングである。ことの発端は昨年、船形山に登ったときから始まった。蔵王や船形連峰の話をお聞きした、その人が夕刻の飛行機に乗るまで時間が空いているという。短時間で関西の山を案内できる場所、いつもの散歩コースが頭に浮かんだ。

《あいにくの雨》

 せっかくのお客さんだからと、ぶん氏に声をかけて3名となる。ところが、朝からあいにくの雨。自宅から六甲山を眺めると、まったく姿が見えない。三宮に集合し、地下鉄で谷上駅を経て有馬温泉に出る。雨が雪になっている。この方が都合がいいやと、傘を差して歩き始める。10時過ぎ。元湯の説明をし、ロープウェイ有馬温泉駅を通過、車道を行く。

《登るにつれ、新雪が》

 紅谷出合にたたずむと、まったく静か。都会の喧噪は聞こえない。ただ雪がしとしとと降って積もり始めている。これほど雪が降るとは思わなかったと、ぶん氏と異口同音に感慨を深める。宮城の熊谷氏は雪は珍しくないだろうが、昨今の暖冬化の流れの中で珍しいことだとの話は感じてくれたようだ。案内板の雪を除け、コースの説明をする。

 昨年の9月以来のハイクで、この間の不摂生が祟ったのか、なんとも調子が出ない。続く熊谷氏は、さすがに山慣れた健脚。息も乱していない。さすがに国体のフリークライミング審査委員をされる方である。海外登山もされたとの話だから格が違う。先頭で汗をかき、荒息を吐いている自分が情けない(苦笑)。

《約15cmの新雪だぁ〜》

 ときどき小鳥の声がして姿も垣間見る。コガラとヒガラと見た。あまり時間の余裕がないので、持参した鳥見道具(双眼鏡)もリュックに仕舞われたまま。本来は冬場は落葉樹も葉を落として鳥見には良いシーズンなんだが。

 水場で一息。この辺りは六甲では珍しいブナの森、いや、林という程度か。このコースの最後の楽しみ場所ですと説明。すぐ上は下界ですなどとも(笑)。ブナの看板前で、こんな大きなブナが残っているものだとの感想が聞こえた。

 尾根筋に出ると、なんとも、なんとも、予想もしなかった新雪。誰の足跡もない新雪を踏みしめて、極楽茶屋へ。ここから遙か神戸の町並みが眺められるのですと説明するが、まったくの視界ゼロ。『景色はいいですか?』と六甲を薦めたときに聞かれて浮かんだ景色は雲の中。これは、またの機会を待つしかない。ただただ珍しいことだと新雪を踏んで凌雲台へ。

《なぬ!?バスが来ない?》

 これでハイキングは終わりと説明、凌雲台の店に入り、ラーメンを頼んで昼食とする。んで、『バスの時刻はわかりますか?』と聞くと、この雪で、バスが止まったとの返事。ん?そんなの聞いたことがないぞぉ〜。12:30。仙台への飛行機が16:30、三宮のリムジンには15:10には、お乗せしないと…。石切道を降るか!?早足でないと…。うむ、ラーメンの味がしない(苦笑)。

 店の人が、スキー場までバスが来ていると。それなら歩いて10分ほど。これ幸い、それなら充分間に合うと一安心。が、当の本人、ぶん氏もあわてる。そそくさと昼食を終えて歩き始める。スキー場への入り口に入って、ここまで来れば安心と話していると、前からバスが来た。強引に止めてもらって、バスに乗り込む。春まで六甲ケーブルがリニューアル中なので、代わりの代替バスである。さすがにチェーンを巻いていた。

《ん?下界の方が「耐寒」だぞ!》

 ケーブル下で御影行きのバスに乗り、阪急六甲駅から三宮へ。雪が積もっていた山より、なんと、町中の方が寒い。汗をかいたこともあろうが、確かに冷えている。これでは「耐寒ハイク」ならぬ「耐寒街中」である。14:20発のリムジンにお乗せして、無事に解散とあいなりました。

 『これくらいの雪が降っただけで麻痺してしまうんですね』
 『関西は商売人ですから・・こんな日に山に登るのも少ないから・・』

 ま、歯切れの悪い救いの言葉でしたが、六甲に珍しい新雪を紹介し、バスが来ないというハプニングにも出合い、旅らしさを付け加えられた山行きでした。


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