六甲・紅葉谷道へ
1997/1/15

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 『六甲が雪で白く見えたら行くぞ!』と、こぶなと約束してから2シーズン目である。昨年は実現できなかったから今年こそ!と狙っている。今期はまだ自宅から眺める六甲が白く見えたことがない。そう、東六甲を宝塚から最高峰までを縦走するのを狙いとしている。今回は、白く見えたわけではないが、足慣らしをしておこうと狙っていた休み。ぶんさんの薦めてくれていた紅葉谷へブナを見に行こうと思い立って出かけた。

 朝、ゆるりとしていたので、自宅を出たのが11時。阪神電車で三宮に出て六甲山の下を谷上駅へ抜け、有馬温泉に出る。昼食は電車の中で済ませても、歩き始めたのは13時。快晴で日が射していると暖かいが、風は冷たい。冬は落葉樹が葉を落としているので鳥見がしやすいのも楽しみである。案の定、ロープウェイ駅の手前でヤマガラが出迎えてくれた。双眼鏡がなくても、充分観察できる。

 紅葉谷へ入っていくと降りの人たちが次々と現われる。この時間なら、ゆっくりと有馬温泉に浸かれるのがうらやましいなと思いつつ、遅出の我が家は逆に登りを選んだ。紅葉谷を楽しんで、帰りは楽をする予定である(^_^;)。

 考えたらこのコースは実に久しぶりである。以前も雪が積もったときに来た覚えがあるが、今回はこぶなとの親子山行き。アイゼンも持ってこなかったし、ゆるゆると歩こう。『アイゼンを持ってきて良かったわ』と降りてくる人が話していたり、『この先はアイスバーンになってますよ』とか声をかけてもらったが、『土の上を歩けよ』『蹴り込んだら滑りにくいから』『かかとを立てて歩けばよい』とか、残雪の歩き方を息子に教えながら進む。

 ハンノキの実が多いなと思いながらスギやマツの林を歩いていると、やがてブナが育っていそうな雰囲気が出てくる。もう極楽茶屋も近いなと思う頃である。ブナ林の看板があり、その手前のブナが目立った。しばし周囲を眺める。おもむろに足下の山道を見ると、ブナの葉が落ちている。手に取ってみると、6cmほどしかないコハブナである。もう少し大きな葉があるかと捜してみたが、どうやら目につかず。

 ここのブナは六甲で珍しく細々と残っているブナ林である。笹が生えているし、次世代更新は難しかろうと思う。その幹に数々の落書きが残されていることは、実に情けない。

 極楽茶屋から神戸の街並みを見下ろす。そう、2年前の同日、同じ場所から平和な町並みだなと眺めたこの街並みが、直後からいろんなことがあったんだと感慨深く眺める。そのとき誘った東京の友人も、この時期、いろんなことを思い出しているだろうと思う。まだまだ復興中の街並みである。

 もう15時を過ぎている。帰りを急ごう。ロープウェイの山頂カンツリー駅から六甲ケーブルへと乗り継ぐ。寒椿の赤い花が目立つ。と、小川のせせらぎの堰堤でジョウビタキが美しい声でさえずっている。『またおいでね』と見送ってくれたと解釈する。アウトドアから離れていた自分には、今期初めてのジョウビタキであった。有り難い。


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