大峯登山/こぶなの「西の覗き」体験
1999/8/29

'99/9/11 登録

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《プロローグ》

『男と生まれたからには、若いうちに一度は大峯に登っておかねば』

とは、子供のころ田舎(淡路島)まで伝わっていた言葉であった。中学生や高校生が洞川の旅館に泊まり、大峯登山を行なっていた時代がある。いや、今でも続いている風はある。ただ、洞川が俗化される姿を見るにつけ、もうそんな時代は終わりを告げるのかとも思っていた。

 ところが、息子の学校(西淀川区)で、5年生が2泊3日で行くという。来年こぶなが行くことになるのなら、それより早く行かせてあげよう。そんなことで、夏休みの最終の日曜日、日帰りで大峯登山に出かけた。狙いは本来の大峯登山。「西の覗き」が主題である。

《旅立ちへ》

 朝6時過ぎに自宅を出る。普段の我が家の出で立ちと違い、軽装である。必ず入れる双眼鏡、一眼レフ、ストーブにコッヘルたちは今回は留守番。つまばやしにおにぎりをと話していたら、おかずが一切無い(苦笑)。ラーメンくらい作るのだと思ったと。妻も「大峯登山」を理解していなかったというわけ。ま、それなりに精進料理ってことで良しとする。

 阿部野橋で一番の特急(07:10発)に乗る。下市口でマイクロバスに立つ。修験道の姿は見えない。特急にも、バスにも。時代が変わった。バスは新しいがマイクロ。ワンマン。少人数のオーバーでは臨時も出ない。

 その昔、大型バスで若い乗務員たちが2人は乗り、荷物は最後部席に積み上げ、補助席に座れる程度で臨時バスが無線を駆使して調達された。狭い山道をものともせず、一般車の指導もしつつ運行していた。修験道の人たちも登山者も荷物の積み降ろしを手伝う。皆、仲間であった。こんな様子をこぶなに体験させてやりたいのだが、もう無理となったか。

 洞川バス停に降り立つ。清浄大橋まで黙々と歩く。この道、大橋からの登りの助走路と考えれば苦にならない。洞川の街中はバブルのときよりは「けばけばしさ」がおさまったようで、子供連れには何よりである。やはり山奥に切り開いた街、そんな位置づけが似合うように思う。

 すでに秋の風情が見える。道沿いにハガクレツリフネ、キツリフネやホタルブクロの花が咲き、モンキチョウが、ミツバチが、蜜をあさる。ゴロゴロ水(名水)は交通の妨げになるのでお休み中。道路を改修?。稲村ヶ岳への本来の道が通っている鍾乳洞は土砂崩れで立入禁止とある。やがて清浄大橋。広い駐車場。調達した柿の葉寿しをおなかに補充。

《いよいよ登り》

 10:45 ここからは修験道の人たちに混じり登り始める。途中でこぶなが『しんどい』と声を上げるが、水場まで頑張れと励ましつつ先を急ぐ。11:35-45 お助け水。昔と変わらず美味しい水を飲ませてくれる。12:00 洞辻茶屋。吉野からの道と合流する地点。この辺りからブナが眼前に見えだす。オオカメノキも赤い実をつけている。黄色い花はオタカラコウか。12:35 鐘掛岩通過。この辺りでトリカブトを見た。

《西の覗き》

 12:50 に西の覗きに至る。修験道の人たちが済んで、息子をと頼む。料金は鉢巻きと合わせて1,000円也。谷までよく見える絶好の「覗き」日和。ロープ一つを両肩に結わえて崖っぷちへ身を乗り出す。手は合わせる。あ、いや、こぶなが、ね。自分は高校2年のときか経験済みにより略(笑)。

 『親の言うことを良く聞くか?』との声に『はい!』と応える。声が小さければ、ずりずりっとロープが伸ばされる。大きくても同じ(笑)。空に浮いたこぶなの足が怖さを表現する。谷底までしっかり見えたのだろう。頭から谷底へズリッ!。冷や汗なんてもんぢゃない。身が凍る感触。こうして最大の儀式が済んだ。小学校4年で経験できるのは幸か不幸か。

《頂上へ》

 立派なホテルと見まがう頂上宿坊を横目で見て過ぎ、13:05 大峯山寺着。お参りを済ませて昼食。三角点にタッチし、お花畑で一休み。が、ここで目立った花を見たことがない。よくこんな名前を付けたものだと思うが、時期を選べばそうなのか?。

 あれが3年前に登った稲村ヶ岳と大日岳。稲村の頂上で絵を描いてたんだぜ。正面が弥山と釈迦ヶ岳。左が大普賢岳だよとこぶなに説明。小普賢岳は2つあるんだとも。旧ハンドル「こふげん」に登るのは何時になるか。大峯山寺の端っこで、ここから縦走路が続いていると入口を教える。

《それ急げ、やれ急げ》

 14:00 大峯山寺を出発。一目散に降らねばならない。といいつつ、こぶなの希望で鐘掛岩の頂上に立つ。実に眺めが良い。山の良さが判ったかどうか。14:45 洞辻茶屋、15:00-05 お助け水、15:45 清浄大橋と降った。登りの洞辻茶屋からびっこをひくようにしていたが(揉んでやった)、こぶなのペースが平地に入ってももう一つ。これも一つの試練と続けて急がせた。16:35 洞川バス停着。やった〜、よく歩いた!。

 1時間以上バスがない。客も少なく、臨時のバスも期待できるわけがない。であればと、バス停前の店に入る。疑似修験道モード解除ぉ〜ってわけで、名水豆腐(冷や奴)、アマゴの塩焼きを注文。ん?時間がかかる?、大丈夫、最終バスだから1時間はあると店の人に言い、冷えたビールとともに舌づつみ。あ、いや、こぶなが山の幸を。ま、良し。食える気力が残っていれば。

 17:51 最終バスで洞川発。途中で暗くなり、19:10 下市口駅。そういや暗くなって下市口に着いた記憶がない。以前はなかった最終便かと自問自答。19:18 下市口発特急に乗り、20:28 天王寺、21:25 自宅着。

《エピローグ》

 こうして我が家の第二のイベントが完了した。充実した一日だった。ちなみに、第一のイベントは「瀬戸内海を自転車で渡ろう!」(しまなみ海道)でありました。汐風を切って走ったことの気持ち良さは、忘れようがない。海も山も、大自然を楽しみ、海の幸も山の幸も託したい。そんな親の自己満足ですが、さて、いつまで続けられるか。

 西の覗きで、9/5(日)9時からNHKで「西の覗き」がテレビに出ると聞いた。朝の9時と聞いたのだが夜の9時で、1時間弱に渡り奥駈道の特集が放映された。こぶなも体験したところということで、一家でしっかり見せてもらいました。前鬼から南は未知の世界だが、いつかはとは思う。


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