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ブナ観察紀行(鳥取・大山)

1998/5/3〜5/5


《プロローグ》

 この連休、当初は京都の芦生に家族で出かける予定だったが、この雨、それにいろんな情報をまとめると家族キャンプは難しいと判断し、急遽、大山に向かうこととした。

  最初一人で出かけたときはブナの芽吹きが見られた。
  家族で昨年出かけたときは、ブナの赤い花?が見られた。
  今回はブナの新緑を見ることになるかも知れない。

 今年は山の花の時期が1週間〜1ヶ月早いという。それならまったく同じ様子を見るのではなく、少し時期をずらせた観察ができるかも知れない。同じ連休を使っていても。これが楽しみ。ひめしゃらは2度目のキャンプとなる。


《大山頂上へ(1998/5/4)》

 大山の夏山登山道へ踏み込む。昨年は2合目までの下見で終わったが、今年は、『頂上まで行くぞ。途中で絶対に引き返さない』と子供たちに言い含めての出発となる。今朝は早朝から満天の星が見えて快晴。ぶな一家の頂上トライとしては申し分ない。昨日から下山でキャンプしていたというのに、遅い出発となったことだけが気がかりだ。

 歩きたいというひめしゃら(下の娘、2歳)を歩かせながら、自然観察をしながらゆるゆると歩く。シャガとヤエヤマブキが見事だ。『ここの鳥達はね、居着いているんだよ』などとのんきな会話をしながら歩を進める。ところが9時を過ぎると怒濤のように人が押し寄せてくる。広い登山道のところはまだ良かったが、小さな子供を歩かせて、時々は双眼鏡を眺める人種は厄介者。『お先にどうぞ』と言える間は良かったが、登山道が狭くなるにつれ、数珠繋ぎで押し寄せてくる人波にはもう我慢ができず。徐々に登ることに専念するようになった。

 それでも休憩のときに、ブナの新緑の様子を双眼鏡で眺めたり、ミツバツツジ、スミレ、クロモジ、オオカメノキなどの花を眺めたり写真を撮ったりする。そう、ブナの花が見えないと思いつつ、ブナ帯の最後の方で、やっと見つけた。雌花と時期の過ぎた雄花たち。スミレは一帯に咲き誇っていた。オオカメノキも頂上に近づくにつれ白い花を目立たせていた。鳥達は人が多くなるにつれ声が少なく。これは時間もあったのだろう。

 登るにつれ、段差が高くなってくると、もうひめしゃらの歩く出番はなくなる。背負子(この場合、ベビーキャリア)に乗ることがほとんどとなり、こぶな(上の息子、小3)を伴っていることもあり、『大変ですね、頑張ってください』という声やら<、『すごいお父さんだ』との声も^^;。でも、違うんですね。自分が娘を背負っているとき、つまばやし(妻)が一番しんどいのです。観察セットやら炊事道具を詰めたザックの方が重いから(^_^;)。

 尾根道に出ると眺めも良くなり、登ってきて良かったと思う。自分にはなぜか戻ってきたという感覚。『すごい眺めだね〜』と言うと、背中から『すごい、すごい』と山彦のように声がする(^_^;)。六合目避難小屋前で休憩。例のアマツバメが今年ものびのびと飛んでいる。向かいのユートピア小屋から頂上の稜線、元谷までもがくっきりと眺められる。この先の道横にフキノトウがあったはずと思って見たが、もう食べられる時期ではない。残念。

 大山頂上に着いたのは13:30ごろ。なんと6時間近くかかっている。下りを急いだとしても15時がタイムリミット。けど、そんな心配をしているのは、両親のみ。9合目を過ぎてなだらかな木道になったとたん、歩きたいと言って、頂上を踏んだひめしゃらと、止めるのを聞かず先行気味だったこぶなとは、頂上でもひとしきり走り回って遊んでいる。迷惑かけた皆さん、ごめんなさいね。

 途中から辛抱していたトイレを頂上小屋で並んで済ませ、眺めの良いところは確保できずに小屋そばでラーメンの昼食となる。自分はゆるりと観察できなかった頂上付近の様子を顧みる。ダイセンキャラボクの林床に、黄色花のスミレがあり、ショウジョウバカマが至る所に咲いていた。同じ連休に来て、まったく時期の違う観察ができることは幸か不幸か。ま、楽しめたとしておこう。

 15時前に下山にかかる。急がねば日暮れになるし、急坂はとても歩かせられない、そんな状況をひめしゃらに言い含めてキャリアに乗せることから始まった。ぶな一家にとっては一目散で降る。それでも撮り残した花を写真に収めながら。

 17時に四合目に着いて人心地着く。ここで観察の思いがもたげてくる。もうこの時間、さすがに登山者が少なくなり、いわば鳥の観察に絶好の時間帯。そう、鳥達の夕食の時間だ。そんなことを子供たちに話しながら鳥の声を聞く。「ききなし」はいっこうにうまくならないが。そのうちに鳥達も姿を見せるようになる。ここはヒガラが多い。木の幹をくちばしを下にして降りる鳥もいると話していると、ゴジュウカラの鳴き声も聞こえた。

 阿弥陀堂の表示があるところで、一家はへたりこんだ^^;。なんとか日暮れとの競争に勝った。ここでやっとひめしゃらを解放。最後は全員が歩いて登山口へ。テントに戻っての夕食も手抜きとなったが、充実した一日に満足した一家である。

 次の朝、残った食料を全部並べて豪華に朝食を取り、鳥達の姿を眺め、声を聞き、野鳥の姿が自然に見える野営場を楽しんで撤収にかかった。何やらほんに近くでカタカタカタ…と音がする。あの枯れ木かと眺めていると、ピョンと姿を見せてくれたのが雄のアカゲラ。昨日の夕刻に姿を見せてくれた鳥たちを含めて、「またおいで!」と言ってくれたような気がしたものだ。ただ、今回の山行きはトラブルも多かった。
  ・登りの七合目辺りか、虫に刺された(3名)。蜂かアブか(小さい)。
  ・登りのキャリア上で木の枝に頭をぶつけた(ひめしゃら)。
  ・下りの六合目避難小屋前で1回転した(こぶな)。針金に足を取られたもの。
 応急処置の薬を持っていて良かったと思う山旅だった。

 【日時】  平成10年5月3日(土)〜5月5日(月)
 【山域】  鳥取・大山
 【コース】 大山夏山ルート
 【メンバー】ぶなばやし、つまばやし、こぶな(小3)、ひめしゃら(2歳)
 【形態】  家族キャンプ&ハイク


《大山の植物たち》

 大山行キャンプ&ハイキングで見かけた植物たちは次のとおり。

<道中にて>

 ●ヤマフジとキリの花/高速道路のあちこちで見事に咲いていた。

 ●レンゲソウ/野道で見事な絨毯が。

<夏山登山道にて>

 ●ブナ/新緑は見事だったが、花は上限地帯でほんのわずか見たのみ。
      花の後は消え去るのか、まったく少なかったのか。
      若い(緑色の)虫コブを見つけた。

エゾユズリハの花●エゾユズリハ(?)→
若い葉っぱが伸びていた。花も見た。
初期はこんもり、その後伸びて。

イワカガミの花か?←●イワカガミ/ひっそりと目立たず咲いていた。


コバノミツバツツジの花か?● コバノミツバツツジ→
雄しべは10本。三つ葉から。

アサノハカエデの葉←●アサノハカエデ/芽吹きの跡がピンク色で美しい。


クロモジの花●クロモジの花
登るにつれ花が多くなった。

 ●オオカメノキ/登るにつれ白い花が目立つ。上の方では見事に。

タチツボスミレか?←●スミレ/タチツボスミレか?上の方で一面に咲いていた。


真っ赤なショウジョウバカマの花●ショウジョウバカマ
頂上付近のダイセンキャラボク地帯で咲き誇る。
濃い赤い色のを見つけた。その他はピンク色。

黄色いスミレ←●スミレ/黄色いスミレ。判別できず。


 ●ダイセンキャラボク/実の時期でなければなんとも引き立たない。

<下山キャンプ場にて>

 ●マムシグサ/例の仏炎苞。至る所に育ち始めていた。

アマドコロ?●アマドコロ?→
この種も判別が難しい。

 ●カキドオシ/這い蹲る例のなんたらとよく似た花だ。

クルマバソウ←●クルマバソウ/八つの葉っぱに白い花。


オドリコソウ●オドリコソウ→

ムラサキサギゴケ←●ムラサキサギゴケ/なんともおかしい顔立ち。


 ●エンレイソウ/キャンプ場への道沿いに。

 ●ヤエヤマブキ、ヤマブキ/夏道に入ったところで。

 ●シャガ/白花はこれなのね。ヒメシャガは薄い紫色。夏道入ったところ。

 ●ミヤマキケマン/もう伸びて美しくなかった。

 ●フキノトウ/六合目くらいか。もう食べられる時期は済んで。


《大山の鳥たち》

 3日は雨で声のみ。

 4日の行動中。人も少なくなった夕刻のみ…。
  ヒガラ
  シジュウカラ

 ということで、主な観察は5/5日の朝となった。
  シジュウカラ
  ヒガラ
  ヤマガラ
  レンジャク?/これ、シルエットで感じたもの。違うやろうな。
  アカゲラ/最後に姿を見せてくれた。感動!

 5月4日の朝、キャンプ場で「ききなし」をしたところによると、
  シジュウカラ
  ツツドリ
  キツツキ(判別つくわけがない)
  ハシブトガラス
  コガラ
  ウグイス

 ※下山キャンプ場は、実にいい。鳥が居着いているところとは珍しいと思う。


《大山のブナ》

 今回、夏山登山道を歩きながら、ときどき立ち止まって双眼鏡で眺めた。

ブナの新緑 ブナの新緑は見事だった。淡い緑色ってのは目に快い。あの幻の赤い実?には出会えず。その前後の経過も見られず。ブナの花のその後は、跡形も見られず、想像できず。どうやって実になっていくのであろうか。ブナの花は、ブナ帯の上限で、やっと見られた。ごくわずか。今年はブナの花が多かったのか、少なかったのか想像がつかず。よって今年はブナの実が多いのか、少ないのか想像つかず。


ブナの葉についた虫コブ ブナの葉につく虫コブの若いもののようなのを見つけた。新緑のブナと同じ緑色をしていて、これから茶色に変わるのかと想像する。



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