湖北・赤坂山へ
'98/9/13

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《秋を感じに赤坂山へ》

 この秋、ブナの実採りをしたいと思っている。手近なブナの森がある赤坂山へ様子を見に行った。頂上付近からずっと双眼鏡で枝を眺めつつ歩いたのだが、残念ながらブナの実が見られなかった。お盆に四国の剣山と石鎚山でブナの実がたわわにできているのを見ていたが、どうやら地域的にかなり差がありそうだ。とはいえ、秋の花たちを眺め、快適な山歩きが楽しめた。

《記録事項》

 【日時】  平成10年9月13日(日)
 【山域】  奥琵琶湖。赤坂山(823.8m)。
 【コース】 マキノ高原登山口〜赤坂峠〜赤坂山〜三国山分岐〜黒河峠登山口
       〜白谷(三国山頂上はパス)
 【メンバー】単独

 【タイム】(植物観察しながらにより、一部は参考にならず)
   07:00自宅発…07:45大阪発(新快速近江今津行)…09:15近江今津発(各駅)…
   10:06マキノ駅発(バス)…10:20マキノ高原バス停発〜10:30登山口10:40〜
   11:30武奈の木平11:40〜12:35昼食13:35〜13:55赤坂峠〜14:15赤坂山頂上
   14:20〜15:10三国山方面分岐15:15〜15:20三国山湿原〜15:35アザラシ岩
   15:45〜15:50林道〜15:53再び山道へ〜15:57黒河峠登山口16:00〜16:36
   県道出合〜16:52白谷バス停…(車に便乗)…17:10近江今津駅17:45…19:00
   京都駅発(新快速)…20:10帰宅

 【地図】  赤坂山の自然ガイドブック(地元有志が編集されたもの)

《快晴の中、胸が高鳴る》

 天気は快晴。大阪駅では登山者の姿が多い。京都駅で半分くらい、比良山系でほとんどが降りてしまった。湖西線からの比良山系の眺めは良い。ヒガンバナが咲いているのを見て秋を感じる。マキノ駅に降り立つと、バスの時刻には、少し間がある。駅前の観光協会に入ってみると、この30日に観察された花たちの記録がコースに記されている。こういう情報は有り難い。

 バス停に戻ると、3人組がタクシーに相乗りしませんか?と。資金の補充を忘れて出てきたので、ぎりぎりしかなく(苦笑)、お断わりする。節約節約。登山者はというともう一人のみ。マキノ高原スキー場でビックリ。なんともテント村!。実にキャンパーが多い。さすがに秋の連休である。ツユクサ、萎れたクズの花、タムラソウ?が見える。

《登山道へ》

 登山口で一休み。周囲に赤い花が。3出複葉でどうやらヤマハギか。赤松の多い樹林帯に入ると、階段の登りで暑い。真っ白い大きなきのこがある。今日はカメラを持参してないので(リバーサルフィルムの買い置きがなかった)、文字と簡単なスケッチでの記録が続く。スジグロシロチョウか。黒い筋が見えないのだが、モンシロチョウの斑紋も見られず、これにする。

 丘陵地帯の登りで、木の下に白花のような。ホツツジの過ぎた花であった。ヒガラの声がする。近づいてくるようで、すぐに姿を現わすのではないかと待つ。覿面に現われたが、自分の姿を見てか飛び去った。目の前の枝に全く赤のトンボ。手を出すと飛び立つが、また同じ枝に戻る。アキアカネかと思ったが、体全体が赤で、ナツアカネのようだ。白花、葉は互生で鋸歯あり。シロヨメナか。風が出てきたようだ。

《ミズナラに実が。ところがブナに実が見られない!》

 武奈の木平に至る。何組かのパーティーと行き違っが、静かな山歩きである。周囲を観察すると、ミズナラが実を付けている。頂戴をして帰ろうかと思ったが、なんとも少ない。周囲にもあるかと見て回ったが見られないので諦めた。この間に7〜8名のパーティーが先に行った。明王禿が、麓の美田がよく眺められる。

 ホツツジの花を眺めつつ行くとブナの森に出る。左手が清水の流れる沢となり、実に涼しい。ブナの実が生っていないかと双眼鏡でも眺めるが、見られない。石畳を行くと小さな堰堤がある。ここで水を確保と汲んだが、もう少し先が良かった。ここで1パーティーが先行する。ミズヒキアキチョウジが姿を見せてくれる。最後の水場を過ぎるとオオカメノキの丸い葉っぱも見られだした。

《腹が減ったぁ〜!。ブナの森で昼食だ》

 おっ!大きめの蝶だ!と眺めると、アサギマダラ。腹が減った〜!と昼食とする。ブナの森の中である。アサギマダラは何を求めて飛び回っているのであろうか。さて、餅入りラーメン!と作っていると降ってくるパーティーが。そんな時刻であろう。携行食も忘れたので、餅を焼いて食べれるようにする。味を付けてと、醤油を付けると、火の強さもあってか焦げがいっぱい。失敗作である。

《稜線へ。ヤマボウシの実も無い!》

 ぜんぜんブナの実が見えん!と後にして稜線に出ると、トガクシコゴメグサの群落があった。ススキの穂とヤシャブシ類の実が多い。鉄塔への入り口には、ツユクサ。ピンク色のナデシコが1輪、ひっそりと咲いている。このあたり、6月に来たときヤマボウシの花が咲いていたが、なぜか実は見られない。過ぎてしまったのか?

 赤坂峠(粟柄越)に出ると風が吹き通っている。そんな稜線に、紫色の鐘形の花が咲いている。花の先が5つに裂け、めしべが長く突き出ている。根元の葉は輪生し、伸びた茎では互生している。葉には鋸歯あり。萼は5つ反り返っている。ツリガネニンジンとしておこう。この花にはこの後も稜線で何度か出会った。

 ヤマジノホトトギスの特徴のある花、黄色いニガナ?を眺めつつ頂上へ。先に登ってきた単独行者が休憩していた。自分は頂上の岩のところで休憩。ランナーらしき人が通り過ぎた。天気は快晴だから、今度こそ3度目の正直で展望が眺められるかと思ったが、北西側から風が吹き、雲が湧き出ている。もう一つだった。

《早い秋の花を見て、稜線漫歩》

 三国山へと向かうと、ヤマボクチ類。ハバヤマボクチであろうか。クリのイガのようであるが触ってみると柔らかい。葉っぱの裏は白い。ブナが混じる樹林帯に入ると、風車のような白い花が浮き出ている。葉っぱは5裂してモミジのようだ。モミジハグマという。このあたり、ホツツジも多い。昼食場所で観察したところ、花の跡には、ヤブツバキの実のように、3つの種子がくっつきあった姿をしていた。まだ緑色の「なりかけ」であったが、この後、どのような姿になるのであろうか。

 明王禿周辺には、ミヤマママコナの花が。この花、覗き込むと、かわいい子供の顔のように見える。黄色いほっぺと赤い目。なんともおとぎの世界のように見える。面白いものだ。トガクシコゴメグサホツツジの花があり、稜線歩きは楽しい。

 三国山頂上への分岐を過ぎると、アメンボウも歩き回っている水の流れがある。この小さな湿原地帯では、どうやらイワショウブが生えている。双眼鏡で水源の方を眺めているとリンドウが一輪見えた。このあたりのはエゾリンドウらしいが観察できず。もう少し先を回り込んだところに三国山湿原がある。ここで咲き方、葉がすべすべと確認。エゾリンドウだ。イワショウブも茎を触るとねばいことから間違いなしとする。

《早く帰ろう。急げや急げ》

 アザラシ岩で一息。黒河林道をさきほどのランナーが走っている。大したもの。青い乗用車も走り降りている。この前後でタムシバの実であろうか、見かけた。黒河林道に出ると白谷まで長い林道歩き。途中、真っ赤なツリフネソウが群落を作っているのを観察しただけで、足早に急ぐ。6月に来たときに書いていたバスの時刻を見ると、16:55のあと1時間ほど無い。こりゃ急がねば!と飛ばす。

 3分前で間に合ったぁ〜!と思いきや、温泉前で止まっていた青い車がバックしてきた。近江今津まで乗せましょうか?と聞かれて、好意に甘えることに。今日は温泉だけだったようですが、ときどきは山歩きをされるそうな。何やら首筋にと思ったら、毛虫!。どこからついてきたのであろうか。近江今津の駅前で、植木に離してやりました。

《一人、悦に入って乾杯!》

 駅でビールを調達。新快速が出たところだったので、ベンチで一人、祝杯をあげていたら、隣に来たおばあさん。「秋の花」本を取り出していると、『良い趣味ですね』と。ところが、耳が遠いらしく、話が繋がらない(笑)。比良の山々を眺めつつ、もう1本のビールをちびちびと呑んで帰ったのでありました。


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