湖北・赤坂山/ブナの芽吹き始まる
2000/4/22
続編 4/30、5/5

'00/5/3 登録
'00/5/21更新

目次へ思いが馳せる記録データ小春日和の登り道ブナの森へなんと!続編4/30続編5/5


《赤坂山へ/思いが馳せる》

 雪解けのブナを一目でよいから見たいと思ったことがあり、3/26に行動をしたのだが諦めた経緯がある。山が真っ白で家族連れ、林道も朝の雪が積もったところでアクセスも悪く断念していた。チャンスが無く時が経ち、もはや春真っ盛り。ブナの芽吹きを見たいと、気を取り直して出かけたもの。

 マキノ高原から赤坂山に到る最後の水場。ここで見上げるブナの木が、そして黒河林道に出て降りかけたところのブナの木々が、新緑の魁として芽吹き、たわわな花を咲かせていた。この間のブナたちはまだ冬ごもりを解いていない状態ではあったが、これでもう満足というもの。ただ、芽吹きを堪能するには、高木だからして、双眼鏡は必携である。


《記録データ》

 【日時】  平成12年4月22日(土)
 【山域】  奥琵琶湖。赤坂山(823.8m)。
 【コース】 マキノ高原登山口〜赤坂峠〜赤坂山〜三国山分岐〜黒河峠登山口
       〜白谷(三国山頂上はパス)
 【メンバー】単独
 【タイム】(植物観察しながらにより、一部は参考にならず)
   07:50自宅発…08:45大阪発(新快速近江今津行)…10:17近江今津発(各駅)…
   10:42マキノ駅発(バス)…10:55マキノ高原バス停発〜登山口11:10〜
   12:20武奈の木平(昼食)13:15〜14:23赤坂山頂上14:30〜15:20三国山方面
   分岐〜15:22水場15:30〜アザラシ岩15:45〜16:00黒河峠登山口16:05〜
   (林道途中で車に便乗)…16:30白谷バス停16:58…17:20近江今津駅18:05
   …19:31京都駅発(新快速)…20:30帰宅
 【地図】  赤坂山の自然ガイドブック(地元有志が編集されたもの)


《小春日和の登り道/春を肌で感じる》

キンキマメザクラ

 春ですね、スミレ類があちこちに見られます。整備された階段の道をいつものごとく登ります。キンキマメザクラが盛りです。この花の写真が不明だったイシヅチザクラの判別に役立ったことがありました。そんなことを思い出しながら、カケスのギャーギャーという声とウグイスの清々しい声を交互に聞きながらTシャツ姿で歩きます。

バイカオウレン


ショウジョウバカマ

 武奈の木平の手前で、バイカオウレンショウジョウバカマに出会います。どちらも見頃です。振り返るとタムシバの白い花が谷間に点々と見えます。えっ?コブシではないかって?。残念ながら花の下に葉っぱは見えないのです。ちなみに今回の山行で伯耆大山で見た蕾がタムシバであったことが判りました。蕾の成長とともにガクも大きくなるのですね。開き初めは何とも不思議な姿を見せてくれます。

 武奈の木平の一時。付近の様子をと観察していますと、ヤマガラが2羽、地鳴きをして戯れています。縄張り争いなのか、恋行動なのかは定かではありません。ここから少し入るとブナの森になり、清水が流れています。春になり、鳥たちも活発に動きます。シジュウカラ、ヒガラが飛び交います。おまけにアカゲラがブナの木を渡り歩いています。こんな様子を眺めるのは単独行の特典でしょう。後ろの人が来たら飛んでしまいました。



《ブナの森へ/芽吹きだ!》

 このコース前半の見どころはブナの清水の沢筋。古くは福井県側への道。石畳もあり、昔の人達は厳しくも楽しくも、自然を相手にしながら行き来をしていたのだと思う。最後の水場で仰ぎ見るとブナが芽吹いている。いや、芽吹き始めている。ガクを出た瑞々しい若葉が、雌花や雄花らしき姿を見せ始めている。新緑の魁を垣間見れたことに満足を感じる。後ろを通る人が『鳥ですか?』と聞く。双眼鏡を眺めながら『ブナの芽吹きですよ』と応える。

 尾根筋に出るとマンサクが咲いています。ホオジロが、ウグイスまでもが姿を見せてくれます。やがて赤坂山の山頂。何度か来た中で一番の眺め。残雪は部分的に残るが、晴れて暖かい。寝ころんで一寝入りといきたい気がするが、横になったのはわずか。人が次々来るので早々に立ち去る。この先、明王の禿まで尾根筋のブナが眺められます。背が高くありません。矮小化したというのはこういうことでしょうか。日本海側から太平洋側へ風が吹き通ります。そんな中でもブナは生き続けている、姿を変えて。

 このコース、もう一つの見どころがある。それは湿原地帯。ただ、今回は時期が早い。昨年の草に覆われ、清水が上を流れるのみでまだ眠っていた。周辺にバイカオウレンとショウジョウバカマが少し咲いているのみ。眠りこけている湿原を見て、今日の観察は終わり。後ろからコップの音が追いかけてくるのを避けるべく、道を急ぐ。アザラシ岩を経て黒河林道登山口へ。

 ここから白谷バス停まで急いで1時間ほど。ここの楽しみはゆるりと周りを眺めて歩くこと。山頂付近から峠まで、ブナたちはまだ芽を閉ざしていた。まだ早かったかと思うころ、目の前に新緑の木が。若々しく芽吹いている。毎年こんなにも若返るのには、見習いたいと思う。ずっと見えていたヤシャブシ類かと思ったらキブシ。ほぼ観察を終わり、ちょうど降りてきた車に便乗。福井から赤坂山に来られたご夫婦。有り難い。


《なんと観光バスが!?/カタクリだけぢゃない!》

 今日は珍しく、黒河林道を降る人が多いなと思ったら、なんと大型バスが。ツアーで25人ほど来ていたらしい。そらそうやわな、好きこのんでこの林道を歩くのは少ないだろうと思ったら、やはり。白谷バス停で乗り込んだのは自分一人。寂しい気持ちがする。

 マキノ駅に戻り、駅前の飲み屋で今日の反芻。バスツアーは、どうやらカタクリが狙いだったよう。ブナやミズナラが作る湿潤地帯が大好きという春植物の代表カタクリは、まだもう少し先。ここでカタクリを見たことはないが、出るべきところには葉っぱがにょきにょき。細い蕾は何個か見た。今年は少し遅れているよう。麓はまだ桜が満開の世界。トクワカソウも咲き始めていたし、カタクリだけといわず楽しんでもらいたいもの。


【続編/1週間後の様子】

 次の週の4月30日にも黒河林道を、ひめしゃら(娘)と散策しました。そのときのトピックスは次のとおりです。
 以下、画像が中心で重たくなるのは自然の理。ごめんなさいね。


【続編/2週間後の様子】

 3週連続で同じ山に行くとは好き者。けど、3週続けたから見れたものも数多い。

トキワイカリソウ

 まずはトキワイカリソウ。先々週ここを通ったときは気が付かず。おそらくなかったものと思う。先週はここを通らなかったので、わからず。ま、続けたことが幸いしたということにしておこう。


ブナの幼木

 次はブナの芽吹き。先週は林道でたわわな花を目前で見た。先々週は林道から上は芽吹き前。これが徐々に上がり、稜線でも芽吹きが見られた。ブナの森に笹が入ることは「人」が手を入れた証拠だと言われる。ここ赤坂山には、笹の入っていないブナの森がまだ残っている。ブナの林床に幼木が伸びることは、ブナの森の健全さを表わす。


ブナの芽吹き

ブナの芽吹き


タムシバの花

 タムシバ、別名はニオイコブシというからコブシとしてまとめても良いのだが、違うものは違うと分けておくべきかも知れない。花の下に小さな葉っぱが無いのがタムシバだという。葉っぱが生えていれば区別は明確につくのだが、花の時期は難しい。これは取り敢えずタムシバ。


カタクリの花

 カタクリの花。この花の咲く時期は短い。瞬間といっても良いぐらい。この花を見るために人が集まる、賑わしく。けどね〜、観光バスで人が連なって山に入るというのはどうかと思う。中にはトクワカソウが咲いているから、カタクリの花の蕾があるからと登山道を踏み外して写真を撮る人がいる、これ痛めているのね、自然を。こんなことしてたら次の世代に同じものを受け継げない。春植物ってのは、ブナやミズナラの湿潤地帯が大好き。そして芽吹きとともに姿を隠す。春のわずかな瞬間に一年を終える。湿潤地帯の土とともに生きているから、せめて登山道は踏み外さずにいたい。

 さてそのカタクリの花。赤坂山では稜線まで咲いている。雪深いことを物語る姿だ。

カタクリの花

稜線のカタクリの花/色がよいので写す

ミヤマカタバミ

 ミヤマカタバミ。これもブナの森でよく見かける。葉っぱは日が当たると開き、そうでないと閉じてしまうという。花は清楚で美しい。カタクリばかりが山の花ではない。ブナやミズナラの芽吹きにも、他の花にも目を移してもらいたいもの。


ミヤマカタバミの花

稜線ブナの芽吹き

 稜線にもブナの芽吹きが始まった。しかし、林道近くと違い、花が見られないのは何かの印。何であるかは探索中。


稜線ブナの芽吹き

稜線ブナの芽吹き

オオバキスミレの群落

 オオバキスミレ。赤坂山にスミレ類は豊富。けれどこの5月5日に歩いてみて、群落の多さを感じたのがこのオオバキスミレ。いくら多いといっても「盗掘」はダメよん。見たければ山に来ればいい。適応した環境があればこそ花は育つ、映える。自分の家の庭にあるのは、すでに死んだ花。次世代に「生きた花」を残したいもの。



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