翻訳のための

 

主語の推定

 

   推定するのに役立つ用語や言い回しを収集しました。

 

 

美化語
意志動詞
翻訳
 

 

 


人称照応敬語

                                       

 

 

 

主観的形容詞モダリティー                            

 

 

 

 

                               2015.11.1

                       国分芳宏著

                    kokubu@gengokk.co.jp


目次

 はじめに

1.  主語の記述

1.1.1 指示代名詞

1.1.2 固有名詞の人称

1.1.3 主語を表す助詞

1.2 美化語

2. 動詞文

2.1 意志動詞・無意志動詞

2.2 特定の動詞でできる判定

2.3 敬語動詞に注目した推定

2.3.1 敬語の動詞

2.3.2 語形変化で構成する敬語

2.3.3 漢語サ変動詞が構成する敬語

2.4 モダリティーに注目した推定

2.4.1 助動詞に注目した推定

2.4.2 使役形、使役の助動詞および、受身形

2.4.3 伝聞

2.5 終助詞

3. 形容詞文

3.1 主観的形容詞

3.2 褒める意味の形容詞に注目した推定

3.3 形容詞の丁寧形

3.4 敬語になる美化語の形容詞

4. 名詞文

4.1 敬語名詞

 おわりに


 

索引

意志動詞

敬語

指示代名詞

主観的形容詞

照応

人称

美化語

翻訳

モダリティー

 

資料1 主語の人称が推定できる動詞

資料2 敬語動詞

資料3 謙譲語を構成する接尾辞

資料4 尊敬語を構成する接尾辞

資料5 美化語が敬語になる動詞

資料6 主語が推定できるモダリティー

資料7 自発を構成する伝達・思考動詞

資料8 主観的形容詞

資料9 美化語が敬語になる形容詞

資料10 敬語名詞

資料11 美化語が敬語になる名詞

資料12 指示代名詞

 

付録 翻訳結果

 


 

 はじめに

日本語では主語が記述してない文章が普通に取り交わされています。文を受け取った側はあまり問題もなく主語を理解して読んでいます。しかし欧米語への翻訳や照応などをするためには、主語を決定する必要があります。

 

 記述されていない主語は文脈情報から推定せざるをえませんが、文脈情報を解析するのは非常に困難です。厳密さをかきますが、翻訳照応などのプログラムに少しでも手助けになるように、文脈情報ではなく、敬語、モダリティーなどに着目して主語を推定する手法を提案します。主語が話の焦点である場合などで、この推定規則から外れることが考えられますが、そのような場合には主語が明示的に記述されると想定しました。

 

 言語学的には不完全な論理を展開していると思いますが、工学的に推定するのに役立ちそうな手法を述べました。推定するための手掛かりとなりうる用語や言い回しを、批判を恐れずに積極的にネット上から収集しました。ネット上の実際の文では「ですます調」の文体で書かれているものが多く見受けられましたが、敬語を除いて説明の便宜上「である調」で説明しました。

 

参考文献[3]には「日本語の基本的な述語文」として次の4通りを上げてあります。それぞれの述語文で主語を推定する方法を説明しました。ただし、ここでは形容詞と形容動詞を一緒にして3通りにしました。

 (1)動詞文「(もう)寝るよ」

 (2)形容詞文「(ずいぶん)寒いね」

 (3)形容動詞文「静かだね」

 (4)名詞文「雨だ」

指示代名詞についても説明しました。

敬語については、参考文献[4]を参照しました。モダリティーと人称の関係については参考文献[5]に説明してあります。またその例外も参考文献[6]に上げてあります。

 

 最後に提案した手法の有用性を調べるためにネット上でフリーに使用できる和文英訳のプログラムで翻訳した結果を表にしました。

 

 提案した推定手法には次の2つの課題があります。

課題1

 3人称が身内のときと、有名人の話が焦点で直接当事者と関係のない人物のときには尊敬語は用いられません。この場合主語が明示的に指定されているとしました。

  例 弟が話した。

    安倍総理が話した。

課題2

 尊敬表現と敬称のついた人名が対話的な目の前の2人称への呼び掛けか、話の焦点の3人称かが区別がつきません。11の対話が多いであろうと考え、まず2人称への呼び掛けとすることを提案します。3人称の時は明示的に主語が記述されていると考えました。

 

1.    主語の記述

 主語が明示的に記述してある場合は当然その用語を主語とします。しかし次に述べるようないくつかの問題があります。

 

1.1 指示代名詞

 指示代名詞は主格を表す助詞を伴って主語を示します。日本語には指示代名詞、特に人称を表す人称代名詞が数多くあります。照応などのために次のような分類をしました。照応とは文中の指示代名詞を具体的に指す用語に対応づけることをいいます。(資料12参照)

         例

 1人称 自称  私

     機関  当校

 2人称 対称  あなた

     機関  貴社

 3人称 他称  彼

     機関  会社

     職業  社長

 

     場所  そこ

     時間  当時

     物   それ

 

 人称代名詞には人称を示す他に時に2人称に目上の人を指すものと、目下の人を指すものがあります。ドイツ語、フランス語、ロシア語などに翻訳するときに2人称を敬称(ドイツ語の場合Sie)にするか、親称(同じくドイツ語の場合du)にするかの判定に役立ちます。

 例 貴殿   敬称

   君    卑称

 しかし、親称にするべき人称代名詞の数は少なく次の用語しか見つかりませんでした。

 親称の2人称代名詞の例

  あんた、お前、君、そなた、汝

 

1.1.1 固有名詞の人称

 固有名詞の人称を判定するためには、まずその固有名詞が動作主体になりうるかどうか、言い直すと人かどうかを判定する必要があります。しかし日本語では人名と地名が同じ文字列の用語が多く見受けられ、どちらかと判断するのに苦労します。これは日本人が農耕民族のためなのかも知れません。

 

1.1.2主語を表す助詞

 名詞に助詞を伴って主題を表します。

  例 私が   食べる  格助詞

    私は   食べる  係助詞

    私も   食べる  係助詞

    私だけ  食べる  副助詞(格助詞が省略されたと考えられます。)

    私だけが 食べる  副助詞を挟んで格助詞

 

1.2 美化

 ここで敬語の判定をするときに手助けになる美化語についてふれておきます。美化語とは、丁寧の接頭辞「お」または「ご」が付いている用語です。「お酒」「ご挨拶」などがこれに当たります。 全ての用語が美化語になれるわけではなく、日常よく使われる短い用語だけが美化語になります。

 美化語になると所有者が変わる用語があります。

  

  (私の)  志

  (貴方の) お志 (×私のお志)

 

2.動詞文

2.1 意志動詞・無意志動詞

 動作が話者の意志で行われる動詞を意志動詞と、意志によらずに行われる動詞を無意志動詞といいます。自動詞・他動詞という対応の分類がありますが、これは英語などの分類法を日本語文法に移入したものです。日本語の場合は意志動詞・無意志動詞の分類の方が有効です

  例 意志動詞   する、動く、働く

    無意志動詞  なる、こぼれる、砕ける

  動詞を自動詞=無意志動詞、他動詞=意志動詞としている例も見かけますが、自動詞・他動詞の分類は意志動詞・無意志動詞の分類とは別の基準です。

  例 会う、務める   自動詞・意志動詞

    間違える、失敗  他動詞・無意志動詞

 さらに意志動詞・無意志動詞とでは否定疑問文を作ったときの意味が違います。意志動詞では意志に対する質問になり、無意志動詞では事実に対する質問になります。

  例 疑問文           答え

    会わないか(意志動詞)   はい  会う

    間違えないか(無意志動詞) はい  間違えない

動詞が意志動詞のときは、動作主体は人間であると推定できます。この場合に原文に2人称の主語が記述してない限りは、主語は1人称と推定します。反対に無意志動詞のときは事象が主語になります。この場合事象が何かを推定できれば事象を主語とし、推定できない場合は形式的な主語とします。(4. 名詞文 参照)

  例 私/貴方が 食べる(意志動詞)

    音楽が   聞こえる(無意志動詞)

    雨が    降る(無意志動詞。事象が記述されていない。)

 

 意志動詞かどうかは動詞単独では決まらず、共起関係まで調べないと決まらない場合もあります。

 共起関係で意志動詞は無意志動詞かが決まる例。

  例 財布を落とす(無意志動詞)

    汚れを落とす(意志動詞)

 

2.2 特定の動詞でできる判定

資料1にあげる動詞は意味的にそれぞれの人称を推定できます。(資料1参照)

 例 恐れ入る(1人称)

   くれる(2人称)

 

 よく使う動詞なので「来る」という動詞について述べます。この動詞は叙述用法で用いられたときは主語が2人称と推定できます。

  許されない例 私が来る

 ただし限定用法のときと、補助動詞として使われたとき、主語は1人称になりえます。

例 (私が)来たあとで  限定用法

例 (私が)書いてくる  補助動詞

 

 主観的形容詞に「がる」を付けて派生した動詞の主語は3人称と推定できます。(資料8参照)

  例 ×私が暑がる

 

2.3 敬語動詞に注目した推定

 敬語は主語の人称を推定するための重要な手掛かりです。特にビジネス文書では主語は明示的に書かずに敬語で主語を表現しています。

 敬語には謙譲と尊敬があります。

 謙譲語は主語が1人称と推定できます。

   差し上げた本     (=私がやった本)

 許されない例

  ×君がいただく     謙譲語の主語が2人称は許されません。

 

 尊敬語は主語が2人称と推定できます。話題の焦点3人称のときも尊敬語が使われますが、3人称のときは主語が明示的に指定されるとみなしました。

   お気に召した本    (=貴方が気に入った本)

 許されない例

  ×私がなさる      尊敬語の主語が1人称は許されません。

 

しかし、3人称が身内のときは尊敬語が用いられません。(課題1)

また近年敬語の乱れが話題になることもあります。

 

2.3.1 敬語の動詞

 本来の意味に敬語としての性質を持っている動詞があります。古い形が多く現代ではほとんど使われない動詞もあります。あまり古い用語は排除してインターネットで見受けた用語だけを収集しました。多義語が多くいくつかの意味で使われます。(資料2参照)

 例 謙譲語、尊敬語の対称の例

   申し上げる 拝見する (謙譲語)

   おっしゃる ご覧になる(尊敬語)

 

2.3.2 語形変化で構成する敬語

 ここで和語動詞/漢語サ変動詞という分類をします。和語動詞とは五段動詞、一段動詞、和語のサ変動詞(語幹が1文字からなるサ変動詞)を指します。和語動詞で次のような語形変化したものは敬語表現と推定できます。このような語形変化をする動詞は意志動詞だけです。

               和語動詞の例

   五段動詞         (読む)

   一段動詞         (調べる)

   和語サ変動詞       (察する)

 

語形変化による謙譲表現

丁寧語の「お」と動詞連用形の直後に、サ変の活用語尾「する」または資料3に上げた謙譲語を構成する接尾辞が付いたものは謙譲表現と推定できます。(資料3参照)

  お+動詞連用形+する

  例 お話しする

    お話しいたします(謙譲語を構成する接尾辞が付いた形)

 

語形変化による尊敬表現

丁寧語の「お」と動詞連用形の直後に、「になる」または資料4に上げた尊敬語を構成する接尾辞が付いたものは尊敬表現と推定できます。(資料4参照)

  お+動詞連用形+になる

  例 お話しになる

    お話しなさいます(尊敬語を構成する接尾辞が付いた形)

 (例外:「お世話になる」 主語は1人称と推定できます)

 

語形変化してできた連体修飾格も尊敬表現がとして推定できます。

 「お+動詞連用形+の」の形で出現します。

  例 お求めの商品

 

2.3.3 漢語サ変動詞が構成する敬語

 漢語系のサ変動詞は資料3に挙げた接尾辞が付いていれば謙譲語と、資料4に上げた接尾辞が付いておれば尊敬語と推定できます。(資料3、資料4参照)

  例 購入いたします。(謙譲表現)

    購入なさいます。(尊敬表現)

 

資料5に上げたサ変動詞は丁寧語の接頭辞がついて、美化語になると敬語になります。(資料5参照)

一部に動作の作用する相手によって謙譲語か尊敬語かが変わる動詞もあります。この場合は何らかの手段で、動作の相手が1人称か、2人称かを調べる必要があります。前もって動作の相手の人称が分かったときに限って推定できます。

  [相手]に ご+サ変動詞+する

 動作の相手が2人称のときサ変動詞は謙譲語になります。

 動作の相手が1人称のときサ変動詞は尊敬語になります。

 

次の例の「ご提供」は、作用する対象が1人称か2人称かによって尊敬語か謙譲語かが変わります。

  例 (弊社が) 御社に ご提供(ご提供は謙譲語)

    (御社が) 弊社に ご提供(ご提供は尊敬語)

 

2.4 モダリティーに注目した推定

参考文献[5][6]にあるように、モダリティーにはいろいろな定義があります。ここでは文節の先頭にある自立語を命題と呼ぶことにします。モダリティーとは自立語の後に続く付属語の並びの持つ機能をいいます。

モダリティーによっても主語が推定できます。

命題の動詞が意志動詞か無意志動詞かでモダリティーの意味が変わるものがありますが、ここでは意志動詞の「調べる」が命題のときを例にしてさまざまな付属語の並びについて説明します。(資料6参照)

 例 (私が) 調べるつもりだ。     意志(1人称)

   (貴方が)調べてはいかがですか。  指示(2人称)

   (彼が) 調べたということだ    伝聞(3人称)

   (貴方が)調べたのか        疑問(2人称)

 

 命令形のときは主語が2人称と推定できます。

  ×私が調べろ  命令文の主語が1人称は許されません。

 

2.4.1 助動詞に注目した推定

 必ず意志動詞に付き、自発、受身、尊敬、可能の用法がありますが結果的に全て無意志になります。ヒューリスティックに次のような手順で判定しました。

 助動詞「(ら)れる」が次の場合は「自発」とみなし、主語は形式的な主語と推定できます。動詞が多くの場合引用の「と」に続いています。また、資料7に上げた伝達・思考動詞に付属しています。(資料7参照)

例 ~と思われる

  ~と見える

  ~が偲ばれる

 

 助動詞「(ら)れる」が付属した文節が「に格」「から格」「を格」を受けるときは「受身」とみなし、無意志になりますが主語は特に記述がないかぎり1人称と推定できます。

 例 (私が)先生に叱られる

   (私が)親から頼まれる

   (私が)足を踏まれる

 

 上記の判定にかからなかったもので「が格」を受けている場合は「尊敬」とみなし、主語は2人称と推定します。

 例 先生が調べられる

 

 動詞が一段動詞のときは「可能」と「受身」の区別が付きませんが、主語を推定するときには両方1人称であると推定します。

 

2.4.2 使役形、使役の助動詞

 意志動詞になります。その主語は1人称と推定できます。

  (私が)書かせる    (使役動詞)

  (私が)調べさせる   (使役の助動詞)

 もう一つ使役受身というのがありますが、これは無意志になります。

  (私が)調べさせられる (使役受け身)

 

2.4.3 伝聞

 伝聞の主語は3人称と推定できます。

  (彼が)話すそうだ。

  (彼が)話すということだ。

 

2.5 終助詞

 終助詞は1人称から2人称への呼び掛けを示しています。終助詞により主語が推定できます。ビジネス文書ではあまり使われないのでこの規則を導入しても効果は期待できません。

 主語が1人称と推定できる終助詞

 ぞ、よ、わ、わよ、もの

 主語が2人称と推定できる終助詞

 な(指示)、な(禁止)、ね、わね

 

3.形容詞文

 形容詞文の主語の推定はあまり効果が期待できません。ただ主観的形容詞と呼ばれる形容詞と他にいくつか主語が推定できる場合があります。形容動詞も形容詞と一緒に説明します。

 

3.1 主観的形容詞

 主観的形容詞の主語は1人称と推定できます。(資料8参照)但し疑問のときは2人称になります。

例  (私は)眠い

  ×(彼は)眠い (主観的形容詞:1人称)

    (貴方は)眠いか(疑問)

 

 助動詞「たい」が付いてできる形容詞は主観的形容詞となり、その主語は1人称と推定できます。

 例 ×(彼は)食べたい(主観的形容詞になり、1人称以外は許されません)

 

 主観的形容詞は事物を主語として明示的に指定して客観的形容詞としても使われることもあります。この場合は形式的な主語を立てる必要があります。

 例 部屋が寒い

 

3.2. 褒める意味の形容詞に注目した推定

 普通1人称は褒めないので、褒める意味の形容詞は2人称または3人称と推定できます。

 例 ×私は美しい

   ×私は健やかだ

 

3.3 形容詞の丁寧形

 形容詞文とは言えませんが限定用法でも形容詞の丁寧形はいくつかの例外を除いて、1人称に関係する名詞を修飾することはありません。

 例 お美しい姿      (2人称の姿)

   お静かな住まい    (2人称の住まい)

  許されない例

  ×(私が)お忙しい

  ×(私が)ごゆっくり

 例外 次の例は丁寧形ですが、卑下する言葉で1人称を指しています。

   (私の)お見苦しい所を

   (私の)お恥ずかしい姿を

 

3.4 敬語になる美化語の形容詞

 資料9に上げた形容詞は美化語になると、敬語になります。(資料9参照)

  許されない例

 ×私はお忙しい    (尊敬語になり、許されません)

 

4. 名詞文

 名詞文も主語の推定にもあまり有効な手段はありませんが、名詞の主語が推定できる場合は主語の推定ができます。

 例 調べたのは私です。   (主語は1人称)

   調べたのは貴方です。  (主語は2人称)

 直接主語の推定には役立ちませんが名詞にも敬語があり、敬語が使われていた場合にその名詞がどちらの人称のものかが推定できます。その名詞が謙譲語であれば1人称に、尊敬語であれば、2人称に属するものだと推定できます。

 

4.1 敬語名詞

 資料10あげる名詞は敬語としての性質を持っています。所有者の人称を示します。(資料10参照

 例 拙宅  (謙譲語 1人称の家)

   貴稿  (尊敬語 2人称の原稿)

 「奥さん」という用語は筆者らの世代では尊敬語ですが、実際の会話では「うちの奥さん」というような敬語の乱れも見受けられます。

 

 美化語となった結果、尊敬語になる名詞があります。(資料11参照)

  ご自宅     2人称の家 (「自宅」は自分の家)

  お心遣い    2人称の心遣い

 その他に敬語をつくる接頭辞があります。

 接頭辞「弊」「当」が付いた結果、謙譲語になります。

  例 弊サイト

    当社

 接頭辞「貴」が付いた結果、尊敬語になります。

  例 貴サイト

 

 接尾辞「殿」「様」や役職名が付いて、尊敬語になります。2人称または3人称と推定できます。会話などでは目の前の2人称に呼び掛けるときに用いることもあります。(課題2参照)

 例 社長様

   田中教授

 

 

 おわりに

構文解析プログラムに組み込んで実用性を検証するべきでしたが力不足のためにできていません。ネット上で使用できる翻訳プログラムがこのような推定をしているかどうかを調べるにとどまりました。

 用語をインターネットから手作業で探したので漏れがあると思います。説明にあいまいな点があり言語学的な厳密さに欠けています。ビッグデータを扱う言語処理システムなどを開発、発展のために少しでもお役に立てれば幸いです。

 

 連語にも主語が推定できるものがありますが本稿では整理できていません。

  例 お腹がすく 1人称

    気持がよい 1人称

    機転が効く 2人称

 

その他に記事の著者を推定するための応用が考えられます。

・女性の書いた文章かどうかを推定します。

 女性しか使わない終助詞を調べて、推定します。

 女性の書いた文には美化語が多く、女性しか使わない美化語もあります。そのような美化語があるかないかで推定します。

  例 おビール

    おリボン

 

・ビジネス文書かどうかを推定します

 ビジネス文書など直接相手を意識した文章は敬語が使われます。逆に論文などの事実説明では敬語は使われません。敬語が使われているかどうかで、ビジネス文書かどうかを推定します。

 

 

参考文献

[1]  金谷武洋   日本語に主語はいらない 百年の誤謬を正す (講談社選書メチエ)

[2]  金谷武洋  日本語は敬語があって主語がない 「地上の視点」の日本文化論 (光文社新書)

[3] 中島文雄 「日本語の構造 英語との対比」岩波新書

[4] 文化審議会答申 敬語の指針 平成19

[5] 仁田義雄 日本語のモダリティーと人称 つつじ書房

[6] 谷守正寛 モダリティによる人称制限について 日本語教育学

[7] 村田年 日本語と英語における省略法の相違について 木更津工業高等専門学校紀要第02号 1968

[8] 国分芳宏 日本語の文の仕組み

[9] 朝倉日本語講座 8 敬語  朝倉書店

付録 翻訳結果

私だけ調べた。  A社 Only I checked it.

         B社 Were examined me only.

         C社  questioned only me.

         D社 Only I examined it.

         E社 I questioned only me.

         F社 I questioned only me.

働いた。     A社 I worked.

         B社 Worked.

         C社 I worked.

         D社 It worked.

         E社 I worked.

         F社 I worked.

壊れた。     A社 It broke.

         B社 Broken.

         C社 It was broken.

         D社 It broke.

         E社 It was broken.

         F社 It was broken.

音楽が聞こえた。 A社 Music was heard.

         B社 Music was heard.

         C社 I heard music.

         D社 Music was heard.

         E社 I heard music.

         F社 I heard music.

雨が降った。   A社 It rained.

         B社 Rained.

         C社 It rained.

         D社 It rained.

         E社 It rained.

         F社 It rained.

コップを落とした。A社 A glass has been dropped.

         B社 I dropped the cup.

         C社 I dropped a glass.

         D社 The glass was dropped.

         E社 I failed a cop.

         F社 I failed a cop.

汚れを落とした。 A社 I removed the stains.

         B社 I dropped the dirt.

         C社 I removed dirts.

         D社 Dirt was washed off.

         E社 I removed dirts.

         F社 I removed dirts.

恐れ入った。   A社 I was sorry.

         B社 Was Osorei~tsu.

         C社 I was sorry.

         D社 It astonished it.

         E社 I was sorry.

         F社 I was sorry.

下さった。    A社 You gave me.

         B社 Gave us.

         C社 I gave you it.

         D社 It gave it.

         E社 I gave you it.

         F社 I gave you it.

来る。      A社 I come.

         B社 Come.

         C社 Come.

         D社 It comes.

         E社 Come.

         F社 Come.

差し上げた本です。A社 The book I gave.

         B社 It is a book that you give.

         C社 It is the book which I gave.

         D社 It is a sent book.

         E社 It is the book which I gave.

         F社 It is the book which I gave.

お気に召した本ですA社 A satisfactory book.

         B社 It is a book that calling to care.

         C社 It is the book which you liked.

         D社 It is a book meets the satisfaction.

         E社 It is the book which I liked.

         F社 It is the book which you liked.

申し上げた。   A社 I told.

         B社 I mentioned.

         C社 I expressed it.

         D社 I said.

         E社 I expressed it.

         F社 I expressed it.

おっしゃった。  A社 You said it.

         B社 You said.

         C社 You said.

         D社 It said.

         E社 You said.

         F社 You said.

お話しする。   A社 I'll speak.

         B社 Talk to.

         C社 I talk.

         D社 A story is told.

         E社 I talk.

         F社 I talk.

お話しになる。  A社 You speak.

         B社 I would talk.

         C社 He/she talks.

         D社 It becomes a story.

         E社 He/she talks.

         F社 He/she talks.

お求めの商品。  A社 The goods you're purchasing.

         B社 Shop for products.

         C社 A product you want.

         D社 Commodity of purchase.

         E社 The product of the request.

         F社 A product you want.

購入いたします。 A社 I'll buy it.

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購入なさいます。 A社 You buy it.

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御社にご提供した。A社 I offered it to you.

         B社 I was offered to your company.

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         D社 It offered it to your company.

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弊社にご提供した。A社 I offered it to us.

         B社 I was offered to us.

         C社 I contributed it to us.

         D社 It offered it to our company.

         E社 I contributed it to us.

         F社 I contributed it to us.

調べる積りだ。  A社 It's checked accumulating.

         B社 It is to examine estimates.

         C社 It is calculating to check.

         D社 It is an examined accumulation.

         E社 It is calculating to check.

         F社 It is calculating to check.

調べてはいかがですA社 How about checking it?

         B社 Would you like to examine.

         C社 Would you like to check it?

         D社 Why don't you examine it?

         E社 When I check it, how about?

         F社 When I check it, how about?

調べたということだA社 It's said that they checked it.

         B社 What we have here examined.

         C社 It means that I checked it.

         D社 It examined it.

         E社 It means that I checked it.

         F社 It means that I checked it.

調べたのか。   A社 Was it checked?

         B社 Whether examined.

         C社 Did you check it?

         D社 Did you examine it?

         E社 Did you check it?

         F社 Did you check it?

調べたと思われた。A社 It seemed to have checked it.

         B社 Appeared to be examined.

         C社 It was thought that I checked it.

         D社 It seemed that it had examined it.

         E社 It was thought that I checked it.

         F社 It was thought that I checked it.

先生に調べられた。A社 It was checked by a teacher.

         B社 I was examined teacher.

         C社 It was checked by a teacher.

         D社 It was examined by the teacher.

         E社 It was checked by a teacher.

         F社 It was checked by a teacher.

先生が調べられた。A社 A teacher was checked.

         B社 Teacher was investigated.

         C社 A teacher was questioned.

         D社 Did the question of the teacher.

         E社 A teacher was questioned.

         F社 A teacher was questioned.

調べさせた。   A社 I made them examine.

         B社 Examine let was.

         C社 I let you check it.

         D社 It examined it.

         E社 I let you check it.

         F社 I let you check it.

調べさせられた。 A社 You could make them examine.

         B社 Examine let obtained.

         C社 I was made to check.

         D社 It was made to examine.

         E社 I was made to check.

         F社 I was made to check.

調べるそうだ。  A社 It's said that they check it.

         B社 I hear investigate.

         C社 I seem to check it.

         D社 I hear the examination.

         E社 I seem to check it.

         F社 I seem to check it.

調べるということだA社 It's said that they check it.

         B社 I hear that examine.

         C社 It means that I check it.

         D社 It examines it.

         E社 It means that I check it.

         F社 It means that I check it.

調べるぞ。    A社 It's checked.

         B社 Find out.

         C社 I check it.

         D社 I will examine it.

         E社 I check it.

         F社 I check it.

調べるね。    A社 It's checked, isn't it?

         B社 I examine.

         C社 I check it.

         D社 It examines it.

         E社 I check it.

         F社 I check it.

調べたい。    A社 I'd like to check it.

         B社 Want to examine.

         C社 I want to check it.

         D社 I want to examine it.

         E社 I want to check it.

         F社 I want to check it.

寒い。      A社 It's cold.

         B社 Cold.

         C社 Cold.

         D社 It is cold.

         E社 Cold.

         F社 Cold.

寒いか。     A社 Is it cold?

         B社 Or cold.

         C社 Is it cold?

         D社 Is it cold?

         E社 Is it cold?

         F社 Is it cold?

部屋が寒い。   A社 A room is cold.

         B社 Room is cold.

         C社 A room is cold.

         D社 It is cold in the room.

         E社 A room is cold.

         F社 A room is cold.

お恥ずかしいところA社 The place where you're embarrassed was shown.

         B社 I have to show where your embarrassing.

         C社 I showed a place shameful.

         D社 The fie-for-shame was shown.

         E社 I showed a place shameful.

         F社 I showed a place shameful.

調べたのは私です。A社 Checked one is I.

         B社 The investigated is my.

         C社 It is me to have checked.

         D社 It is me that examined.

         E社 It is me to have checked.

         F社 It is me to have checked.

調べたのは貴方ですA社 Checked one is you.

         B社 The investigated is yours.

         C社 It is you to have checked.

         D社 It is you that examined.

         E社 It is you to have checked.

         F社 It is you to have checked.

拙宅に送った。  A社 It was sent to my home.

         B社 I was sent to the humble abode.

         C社 I sent you to our home.

         D社 It sent it to [tsutanataku].

         E社 I sent you to our home.

         F社 I sent you to our home.

貴宅に送った。  A社 It was sent to your home.

         B社 I was sent to Kitaku.

         C社 I sent it to your house.

         D社 It sent it to your house.

         E社 I sent it to your house.

         F社 I sent it to your house.

自宅に届いた。  A社 It has reached a home.

         B社 I arrived at home.

         C社 It reached the home.

         D社 It reached home.

         E社 It reached the home.

         F社 It reached the home.

ご自宅に届いた。 A社 It has reached your home.

         B社 I arrived at home.

         C社 It reached the home.

         D社 It reached home.

         E社 It reached the home.

         F社 It reached the home.

心遣いです。   A社 It's consideration.

         B社 Is thoughtfulness.

         C社 It is consideration.

         D社 It is consideration.

         E社 It is consideration.

         F社 It is consideration.

お心遣いです。  A社 It's consideration.

         B社 Is for your good thoughts.

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