●●●  糖尿病療養指導士について ●●●
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 糖尿病療養指導士の認定試験と講習会に関するお知らせが、
糖尿病学会誌の2000年7月号とプラクティス2000年7・8隔月号に掲載されています。
本年は糖尿病学会誌2001年5月号と日本病態栄養学会誌2001,第4巻1号に掲載されています。

<はじめに>
 厚生省は1997年秋,糖尿病の実態調査を行い、「糖尿病が強く疑われるもの」が690万人、
「糖尿病の可能性を否定できないもの」が680万人、両者をあわせる1370万人という莫大な
数になると推定しました。
  一方、糖尿病合併症が急増し、糖尿病網膜症による失明や糖尿病性腎症による人工透析
導入などの患者の数が近年増加しています。これらの実態は、わが国の糖尿病予防対策が
不十分であったことを示唆してます。
 このように、糖尿病患者の増加に伴い、わが国の多くの官公私立病院において糖尿病患者
教育が実施され、医院、診療所においても、それぞれできる範囲で患者教育を実施しています。
しかし、全体としてみた場合、満足できる状態ではなく、この対策として日本でも、糖尿病
療養指導士の養成が緊急課題とされていました。


 <糖尿病療養指導士とは>
 激増する糖尿病患者、糖尿病合併症の著増に対応する策としては、そのコントロールを
良好に維持する以外に現在のところ決め手がないのが現状です。そこで、コントロールを
良好に維持するために、患者教育が大変重要であり、医師を含めた糖尿病療養指導士=CDE
(看護婦、栄養士、運動療法士、検査技師、薬剤師、心理療法士などが該当する)による
チーム医療が要求されています。
 CDE(:Certified  Diabetes  Educator)制度は米国のAADE(American  Association  of
  Diabetes  Educators)の活動によって設立されたものであり、国家試験に合格してCDEの
免許が交付されています。
現在同様な制度がカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスにおいて実施され
ており、患者教育に多大の成果をあげています。IDF(国際糖尿病連合)においてもIDE(
International  diabetes  educators)としてIDFの一部門として認可されています。
  わが国でも,平成5年度にCDE制度の検討委員会が糖尿病学会,協会においてそれぞれ発足し,
両者合同の小委員会が発足し,わが国におけるCDEの認定,制度化に対する検討が行われてい
ました。この結果、昨年5月13日開催された日本糖尿病学会総会、同じく14日の日本糖尿病
協会総会でそれぞれ承認され、正式にスタートすることが決定しました。
  これを受けて、第三者機構「日本糖尿病療養指導士認定機構」が設置され、組織体制作り
が着手されています。同機構の初代理事長には北村信一東京都済生会向島病院院長が
就任しました。同機構の理事会は学会・協会から選出される理事10名で構成されます。
また、下部委員会として試験委員会、認定委員会など設置するほか、将来的には公益
法人化を目指しています。そして、第一回の試験は、平成12年度内(3月)に行う予定
となっています。


<日本糖尿病療養指導士に求められるもの>
  日本糖尿病療養指導士に求められるものとして、@糖尿病および、患者教育に関する
広い知識と技術、A豊富な実務経験による熟練した患者指導能力、B医療法遵守による
指導の3点が挙げられていますが、最も重視しているのは豊富な経験による熟練した
患者指導能力を有しているという点です。
 また、糖尿病療養指導士の学習目標として、職種を超えて必要とされる共通項目が案
として出され、これを療養指導チームの中で各職種の専門性を尊重し、療養指導の向上を
図ることと認識されています。
  試験に関する詳細は、第三者機構「日本糖尿病療養指導士認定機構」で決定され、
「糖尿病」「さかえ」「プラクティス」などに掲載される予定です。
また、カリキュラムの内容を学習するための各種出版物、あるいはセミナーなどが協会や
学会の主催で行われることになる予定です。時期については本年10月から11月の間の、
土日の連続2日間となっています。


<受験資格>
  認定対象職種および受験資格は、看護婦(士)、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、
理学療法士の資格を持ち、別に認定機構が示す糖尿病診療施設で2年以上常勤し、1,000
時間以上の療養指導業務に従事、療養指導自験10症例の提出、そして機構主催の講習会
の受講という条件が揃っていること。なお、准看護婦、栄養士には別途措置により5年間
に限り受験資格が認められるそうです。 試験は、口頭試験と筆記試験で行われ、5年ごと
に更新されます。


<療養指導士の認定更新規定について>
  認定更新に必要とされる必要条件としては、認定された後も継続して学会または協会の
会員であること、認定から更新までの5年間に別に定める研修20単位以上を取得している
こと、また、通算3年間以上糖尿病患者の療養指導に従事していること、新たに糖尿病療養
指導の活動記録を20症例以上有していることなどです。


<今後の課題とともに>
  忘れてはならないことは、わが国の糖尿病の予防・治療システム作りが必要であること
です。つまり地域ごとに医師会、専門医療機関、行政がそれぞれの役割分担を持って、
連携して糖尿病患者の予防事業に取り組むシステム作る必要があります。
そのことにより、日本糖尿病療養指導士の活躍の場が広がり、その能力が十分発揮できて
予防効果が上がると思われます。
  今年度中にも糖尿病療養指導士認定制度がスタートする見通しにあり、的確な診断・
治療及び適切な療養指導体制が整備されようとしています。まさにわれわれも適切な初期
教育での栄養指導を効果的に行なえるように努力しなくてはなりません。
糖尿病患者のQOLの向上を目標とし、積極的に栄養教育を中心とした療養指導の実践を
行なうべきであると考えます。

(記事・澤入 房子)  ホームページへ