○三十路からの日本経済学入門

その4 不動産屋への道(4)(1998.4.8)

 不動産を売りたい、とお客に持ちかけられた時の流れを説明しよう。

 まずはお客と媒介契約を結ぶ。専属専任、専任、一般の三種があるが、字面でも推察出来るように、前者ほど互いに拘束力の強い契約となる。お客の側には他の不動産屋とは媒介契約を結べないとか、不動産屋側には営業活動報告や情報公開(以前説明したレインズや住宅情報など)の義務が生じるといった具合である。余談だがこの業界で、”JJ”と呼ぶものがあるが、それは女性ファッション誌の事ではない。リクルート社発行の”住宅情報”の事である。住宅情報のホームページでも物件検索が出来る。レインズが生まれた経緯として、住宅情報に物件情報を掲載しようとする事が、自然とリクルート社に膨大な情報を集積させる事となり、結果”抜き”といった背任行為などトラブルが多かったというものがある。”抜き”とは既に媒介契約を結んでいるお客を他の不動産屋が取ってしまう事である。

 営業活動の1つに”オープンルーム”とか”オープンハウス”とか呼ぶものがある。事前に新聞折込チラシなどで物件情報を流した上で物件を公開し、客を誘導する。(”モデルルーム”とは当該物件が完成する前に仕様が確認できる見本を当敷地内や別の場所に建設したもの。)新聞折込チラシは、版下からすべて広告社に依頼する事も出来るが、チラシ自体は不動産屋自ら制作する事も多い。リソグラフといういわばプリントゴッコの業務用みたいもので刷るわけである。各新聞毎の配達エリアの区分地図と部数の一覧があるので、狙いを定めて”うつ”のだ。

 来場した客が購入の意志を示せば、”買付”と称する購入申込書を書いてもらい、”差し値”と称する価格交渉を売主と行い、双方合意に達すればめでたく契約となる。契約に先だって、宅建主任者は売主に代わって”重要事項説明”による物件の説明を買主に対して行わなければならない。売買契約は通常物件価格の1割の金額を手付金として支払うことで成立する。手付金を支払った後、売主の都合で契約を破棄する場合は手付金の2倍相当額を買主に支払わなければいけない。(”手付倍返し”と言う。)買主の都合によるものなら手付金を放棄することで契約を破棄することが出来る。どちらかの債務不履行によって契約が破棄された場合、不利益を被った側は相手側に対して物件価格の2割を上限に損害賠償を請求出来る。残金をすべて支払った時点(決済)で物件の引渡しが行われる。この前後、様々な登記が必要となるのだが次回へ。 

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