落語文化   Culture of Comic Story 吉田 章一
選択2単位 2・3年前期
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1. 授業のねらい
 昔の人は、寄席を社会常識の学校としていました。演芸の王者として親しまれた落語が、世態・人情について逆説的に教えてくれたからです。落語は伝統芸能とされるとおり古い慣習も伝えているので、笑って楽しみながら風俗・習慣・人情の歴史を知ることができます。江戸文芸とのかかわりが深いので、文学の知識も得ることができます。常識を養うツールとして落語に親しむための基礎知識を身につけてもらいます。
2.
授業の概要
 落語の成り立ち・演出・題材など、その背景について説明します。また、周辺の芸能・文芸との関係を述べ、落語が時代に取り残された化石文化にならないための方策を考察します。ビデオで優れた演技に触れながら理解を進めます。
3.
授業内容のレベルと関連科目
 「お笑い文化論」とあわせて受講することを勧めます。
 講義とビデオ鑑賞を中心にします。自分で実演を鑑賞することを期待します。
4.
テキスト、教材
(参考書):『落語の江戸をあるく』吉田章一著、青蛙房、1800円+税
東京の地誌や多くの落語のあらすじを紹介しており、再試験には必要になります。
5.
成績評価の方法
 定期試験、および出席率で評価します。定期試験にはノート持ち込みを許しますので、良いノートを取ることが良い成績につながります。
 レポート提出は求めませんが、自発的に提出すれば高く評価します。
6.
資格認定・一部試験免除との関連
7.
授業の形式・計画
【第1回】落語の歴史
 オリエンテーションとして授業の進め方・受け方を説明します。毎回事前学習は不要ですが、しっかりノートを取ってください。そのあと講義に入り、落語家という職業が成立し、寄席が誕生してからの歴史を説明します。
【第2回】落語の原話
 江戸小咄が原話になっている落語が多いことについて、例を挙げて説明します。
【第3回】落語の話術
 滑稽でなければ落語とは言えません。どう面白く聴かせるかは話術にかかっています。
【第4回】落語の構成・演出
 落語はマクラに始まってオチで終わります。目新しさをねらった演出もあります。
【第5回】落語と文芸
 夏目漱石は落語好きで、ほかにも落語に影響を受けた文人はおおぜいいます。落語と文芸が相互に影響し合った状況を話します。
【第6回】落語のオチ
 落としばなしというとおり、落語はオチがあって結末がつきます。その分類も試みられています。オチの種類について説明します。
【第7回】落語の題材
 人の行動は、自分がまじめでも他人から見れば滑稽な場合があります。あらゆることが落語の題材になります。
【第8回】落語の演者
 落語は師匠から弟子に口伝えして伝承されます。多くの名人上手が工夫を重ねてきました。どんな名人がどんな芸を聴かせたかについて話します。
【第9回】珍芸・色物・音曲
 寄席では彩りに落語以外の芸も登場させます。そのような芸能を紹介します。
【第10回】上方落語
 関西でも独特の芸風で落語が演じられます。その演出の特徴を知ってもらいます。
【第11回】風俗の変遷と伝統芸能
 落語には、今ではなくなった風俗習慣が使われています。昔を知るにはだいじですが、伝統芸能が化石芸能にならないための方向を考察します。
【第12回】お笑い芸の興行形態とメディア
 これまで演芸がビジネスとしてどのように上演されてきたか説明し、新しいメディアに乗せてどのように発展させるかについて考察します。
【第13回】伝統芸能の継承と創作
 聴き手とメディアが変われば、中身もそれに合わせて変わるべきだと思います。良質な新作落語を生み出す方向について考察します。
【第14回】興行形態
 毎日興行する寄席のほかにホールなどで催す落語会があります。その興行形態を紹介します。
【第15回】定期試験
 授業理解の最終確認のため筆記試験を実施します。