さて、スター・ウォーズに興味がなかったり、嫌いだったりする人々とは別に、ファンでありながらも文句を言ったり、不満を抱いたりする人々もいます。やれ脚本があまいだの、CGに人間味が欠けるだの、などなど。実際、ファンの不満には一理あるとは思うのですが、「ファントム・メナス」全面支持派の私から言わせれば、そんなに不満があるならファンをやめてもうこれ以上観なければいいじゃないかと言いたくもなります。しかし、そういうファンたちの不満というものは、好きだからこそ、愛するが故のものであって、結局文句をいいながら何度も繰り返し観てしまうものでもあります。
ここでは、そのようなファンたちの抱く不満、というか嫌われているキャラクターを集めてみました。あくまでも世間にはそういう意見があるということであって、私自身は嫌いではありませんので、誤解のないようにね。
■ジャー・ジャー・ビンクス
ジャー・ジャーのキャラクター設定はちょうど旧3部作における3POにぴったりと呼応します。おしゃべりで、臆病で、みんなからは軽く見られてしまいます。海底の怪物に恐れおののきギャーギャーと騒ぎたてるジャー・ジャーの様子は、「帝国の逆襲」で小惑星群の中を飛び抜けるファルコン号内の3POそっくりです。「ファントム・メナス」で3POは妙におとなしかったですが、これはまだ未完成であったということに加えて、道化役が2人になってしまうと煩わしいという演出上の理由もあったのではないでしょうか。
3POも道化役ではありましたが、ジャー・ジャーはそれに輪をかけたシリーズ初の本格的な道化役でもあります。このことが多くのファンの不興を買っていることは周知の通りです。3POが人気者であるのに対して、ジャー・ジャーはあまりにも嫌われ、憎まれすぎています。インターネット上には様々な反ジャー・ジャー・サイトがひしめいています。可愛さ余って、とか愛するが故にというものもあるでしょうが、中には作成者の良識を疑いたくなるような悪趣味のひどいサイトもあります。
■「ジェダイの復讐」より
ジャー・ジャーがあまりに強烈なために一気に陰が薄くなってしまいましたが、「ジェダイの復讐」公開当時にも同じように不興を買ったキャラクターがありました。当時、中学生であった私は文句なしに楽しんでいました。しかし、雑誌などでは不満を言うファンが多いのにちょっと驚きました。いつの時代でも、どんなものにでも、文句を言う人というのはいるものです。以下に公開当時ファンの間で不満が挙がったキャラクターを紹介します。ちなみに私は全部大好きです!
イウォークとも仲良くしようよ!
ちなみに「イウォーク」という名称は劇中には一切登場せず、最後のクレジットになって初めて出てきます。それにもかかわらず、観客の大半が観る前からイウォークを知っているというのですから、スター・ウォーズは特別な映画ですね。公開までは完全秘密主義でありながら、いざ宣伝が始まると瞬く間に全情報が広まって、観客は予習してから観ることになるのです。
ROJ版AT−ST(右)とも仲良くしようよ!
ジャバの取り巻き連中とも仲良く...はしたくないかな。
仲良くしてね。
■「新たなる希望《特別篇》」のジャバ
正直に告白するとこれには私も不満があります。もともと「新たなる希望」の脚本にはこのジャバとソロの場面があったのですが、当時は予算も技術も限られていてジャバの実現は大変困難でした。とりあえず人間に演じさせておいて、後で怪物の姿をはめ込もうとしましたが、結局できず終いでした。その後のCG技術の発展によって、遂にルーカスは長年の念願かなって「新たなる希望《特別篇》」にジャバを登場させることができました。ジャバとソロのやりとりはとてもユーモラスで、魅力ある展開となっています。また、お供にローディアンがいたり、ボバ・フェットのカメラ目線などファン・サービスもたっぷりです。しかし、ただ1つの難点は「ジェダイの復讐」のジャバと全然似ていないということです。これは、技術的な問題もあるでしょうが、私にはCG作成者にセンスがなかったとしか思えません(素人はいい気なもんだね)。私は以下のように考えることで、なんとか自分を納得させてきました。つまり、「新たなる希望」は「ジェダイの復讐」の4年前なので、ジャバはまだ太っておらず、若々しく活動的だったのだと。しかし、「ファントム・メナス」では見事なまでに「ジェダイ」版ジャバが復元されてしまい、結果として「特別篇」のジャバには不満が残る形となってしまいました。「新たなる希望」当時のジャバは病気でも患っていたのでしょうか?(過去に大病を患って体毛がなくなったという設定もありましたが、今では忘れられているみたいです。) ルーカスはもう1度CGIで書き換えたりして。
極悪ジャバとも仲良くしよう...とはルーカスも言わないでしょう。
■スタートレック
さて、何かにつけてスター・ウォーズと比較されながらも、今ひとつスター・ウォーズを超えられない(主観です、ごめんなさい)スタートレックの登場です。両作品とも非常に良質で奥の深い傑作SFシリーズですが、多少毛色が違いますので、そもそも比較するのは意味のないことだと思います。洋雑誌などではことあるごとにSW vs. STのような記事が企画されたりしますが、そのような記事が成り立つには両作品に対する知識が要求されるわけで、基本的には両作品のファンは重なっていると思います。しかし、熱心なトレッカーと熱狂的なSWマニアとの間に多少の見えない対立があるのも事実でしょう。いわく、STは理屈っぽくてわざとらしくて偽善的だ! SWは能天気で頭空っぽで派手にドンパチやるだけだ! などなど。というか、実際そこまであからさまな声は聞いたことはないのですが、なんとなく冷たい空気が漂っている感じはします。
STはSWよりも古い歴史のある先輩でありながら、一度はTVシリーズが中断し、SWのヒットのお陰で映画として復活しました。そして、いつもSWの後を追う形でした。ST映画2作目では当初「The Vengeance of Khan」(カーンの復讐)となっていた題名を、SW3作目が「Revenge of the Jedi」(ジェダイの復讐)となることを受けて、「The Wrath of Khan」(カーンの怒り)に変更になりました。(邦題はあまり影響を受けていませんが。)音楽もジョン・ウィリアムズに対してジェリー・ゴールドスミスは巨匠でありながら、いつも二番煎じ的な作品の多い人です。ただ、ST映画の特撮はILMが担当しており、その点では両者同格なのですが、ちょっとひねくれた見方をすれば、STを実験台に特撮技術を磨いて、SWで本領発揮とも受け取れます。そんなわけですから、トレッカーがSWを良く思わないのもうなずけないことではありません。
一方、SWは「ジェダイの復讐」以降、ぱったりと続編が跡絶えてしまいます。この80年代後半〜90年代前半のSW空白時代にSTが思う存分勢力を延ばしました。映画だけでなく、TVシリーズも復活し、さらにスピンオフ・シリーズまで登場する勢いです。もちろんすべて順調にことが運んだわけではなく、ここまで成功するには長い道のりがありました。しかし、今ではアメリカ国民の4人に1人がSTのTV番組を観ているという調査報告もあり、主演のパトリック・スチュアートが全米でもっともセクシーな男性に選ばれる程です。インターネット上の個人ホームページも、SWサイトよりもSTサイトの方が圧倒的に数が多いのです。この間、SWファンは苦々しく思っていたかも知れません。(というか4人に1人といえば、SWファンもSTを観ているということですよね。)
そして1999年、この世紀末(の1年前)にSWは見事に復活しました。もちろん制作には多大の苦労があったはずですが、宣伝に関してはまったく苦労のないほどすんなりと、世界中のファンたちが諸手を挙げて迎えたのです。そしてあっという間に世界中がSW一色に染まりました。それまで頂点にいたSTを信望する人にとっては面白いはずありません。 ...とこうして、あからさまではないにせよ、両者の間には見えない対立が確かに存在すると思います。ただ、大部分の人は両方とも楽しんでいるとは思いますが。
さて、長い歴史の講釈はここまでにして、ここに「ファントム・メナス」に関したちょっとした事実を紹介します。「ファントム・メナス」に登場する敵対勢力はニモーディアン率いる通商連合で、これは原語では Neimoidian[ニモイディアン]と Trade Federation になります。STに登場するミスター・スポックはシリーズの顔とでもいうべき代表的キャラクターで、STは知らなくてもスポックの顔には見覚えがあるという人も多いものです。実はこのスポックを演じていたのはレナード・ニモイ(Leonard Nimoy)という人なのです。そしてSTで主人公たちが所属し、我らが地球を中心とした正義の勢力の名前は、惑星連邦(United Federatin of Planets)といって、通常は単に連邦(Federation)と呼ばれます。つまり、なんとも驚いたことに、STではニモイの率いるフェデレーションが正義の味方で、SWではニモイディアンの率いるフェデレーションが悪の手先というわけなのです。[スターログ日本語版 第2号 p.34]
これが即、対立の証となるわけではありませんが、このことを知って「ファントム・メナス」を観ると、なんとも苦笑いが出てしまいます。まさかルーカスがこんな当てこすりなんかするのだろうかと疑問に思ってしまいますが、偶然にしては出来すぎています。さらに、勘繰ると以下の点にも気付きます。「ファントム・メナス」後半で、女王たちは宮殿奪回に乗り込みますが、一度捕まってしまいます。その時ヌート・ガンレイ総督は以下のように言います。
NUTE: Your little insurrection is at an end, Your Highness.ここで、insurrection という語が登場し、しかも小さく些細な insurrection はもうおしまいだと言っています。ここで「ファントム・メナス」の直前にひっそりと公開された「スタートレック 叛乱 (STAR TREK: Insurrection)」を思い浮かべずにはいられません。脚本はずっと前に書かれていますので、この件はまったくの偶然だとは思いますが、やはり苦笑いがもれてしまいます。
(ヌート:あなたの小さな反乱もおしまいですな、殿下。)
本当にルーカスはSTが嫌いで、このようなことをしたのでしょうか? もし意図的なものだとしても、それはあくまでお遊びの冗談であって、真の敵対心からではないと思います。というか私はそう信じたいものです。私はSWもSTも両方とも大好きですが、SWの不動の地位は他のどんな作品であろうとゆるがすことはできません(主観)。ささやかな当てこすりなど必要ないのです。王者の余裕を持ちましょう。
「ファントム・メナス」ではスター・ウォーズに「協力、共生、助け合い」などのテーマが導入されました。一方、スタートレックの中心テーマであるIDICは「Infinite Diversity in Infinite Combination」(無限の多様性が無限の調和のもとに)の略です。つまりどちらの作品でも、互いの違いを認め合い、それを乗り越え、協力し合おうと言っているのです。その点では、お互い反目し合うことなどないのです。
はい、やっと結論です。長らくお疲れ様でした。
スタートレックとも仲良くしようよ!
ジョージ・ルーカスと故ジーン・ロッデンベリー
みんなも仲良くね!