
エスペラント語の文法
en japana lingvo
エスペラント語とは、ポーランドのザメンホフという人が創り出し、1887年に発表された人工言語です。その最大の特徴は、完全に例外のない文法規則にあります。これによって、外国語学習に伴なう苦労・労力が最小限におさえられるので、世界中の人々が簡単に習得出来、お互いのコミュニケーションが簡単に図れるというものです。 現在、エスペラント語の使用者は世界各地におり、特に中国、東欧等の共産圏・旧共産圏に多いのも特徴です。また、世界各地にエスペラント組織があり、世界大会等も開催されています。
以下に紹介するのは、ザメンホフによって書かれたエスペラント語文法の原典からの翻訳です。この原典は、仏語、英語、独語、露語、波語の5種類の言語で書かれてあり、そのうちの英語編から訳出しました。なお、本文中に国際語とあるのは、エスペラント語のことです。
(注)この言語には特殊な符号付文字があり、印刷やワープロ等で扱いにくいという問題があります。最近のインターネット上では、エスペラント語では未使用の文字xを符号の代わりに使うことが多い様です。
A)文字

注 もし印刷などで符号(^,
)の使用が困難な場合には、(^)にはhを代用し、(
)は省略してもよい。
B)品詞
- 不定形はない。定形は、全ての性、数、格に対して、定冠詞laを使う。
- 名詞は語根にoを付加してつくる。複数形は必ず単数形にjを付ける。格は主格と目的格(対格)の二つ。語根にoを付加したものが主格で、目的格はoの後にnを付ける。その他の格には前置詞を使う。つまり、所有格(属格)はde(〜の)、与格はal(〜に)、助格(奪格)はkun(〜とともに、〜から、〜によって)。その他状況に応じた前置詞を使う。例:語根patr(父);la patr'o(その父);la patr'o'n(その父を);de la patr'o(その父の);al la patr'o(その父に);kun la patr'o(その父とともに);la patr'o'j(その父たち);la patr'o'j'n(その父たちを);por la patr'o'j(その父のために)。
- 形容詞は語根にaを付加してつくる。数と格は名詞と同様。比較級はpli(より)を、最上級はplej(もっとも)を前に置く。(〜よりも)はolを使う。例:pli blank'a ol ne
'o(雪よりも白い)。
- 基数詞は格によって変化しない。以下:unu(1), du(2), tri(3), kvar(4), kvin(5), ses(6), sep(7), ok(8), na
(9), dek(10), cent(100), mil(1000)。大きな数は基数詞を単純につなげてつくる。例:583 = kvin'cent ok'dek tri。
序数詞は基数に形容詞接尾辞のaを付加してつくる。例:unu'a(1番目の);du'a(2番目の)等。
倍数詞は基数にoblを付加する。例:tri'obl'a(3倍の)。
分数詞はonを付加する。例:du'on'o(1/2);kvar'on'o(1/4)。
集合数はopを付加する。例:kvar'op'e(4つ一組で)。
個別的形容詞はpoを前に置く。例:po kvin(5つずつ)。
副詞としてはeを付ける。例:unu'e(1番目に、最初に)。
- 人称代名詞はmi(私)vi(あなた/あなたたち)li(彼)
i(彼女)
i(それ)si(自分自身)ni(私たち)ili(彼ら/彼女ら/それら)oni(人々)。所有代名詞はそれぞれの人称代名詞に形容詞語尾を付ける。代名詞の格変化は名詞と全く同じである。例:mi(私は);mi'n(私を);mi'a(私の)。
- 動詞は数と人称による変化はしない。例:mi far'as(私はする);la patr'o far'as(その父はする);ili far'as(彼らはする)。
動詞の形
a)現在形はasで終わる。例:mi far'as(私はする)。
b)過去形はisで終わる。例:mi far'is(私はした)。
c)未来形はosで終わる。例:mi far'os(私はするだろう)。
ch)仮定法はusで終わる。例:shi far'us(彼女はするかも/したら)。
d)命令法はuで終わる。例:ni far'u(しよう)。
e)不定法はiで終わる。例:far'i(すること)。
国際語には分詞が2種類ある。可変的・形容詞的なものと、不変的・副詞的なものである。
f)現在分詞能動態はantで終わる。例:far'ant'a(する〜);far'ant'e(している/しながら)。
g)過去分詞能動態はintで終わる。例:far'int'a(した〜);far'int'e(していた/してしまって)。
gh)未来分詞能動態はontで終わる。例:far'ont'a(これからする〜);far'ont'e(しようとして)。
h)現在分詞受動態はatで終わる。例:far'at'a(されている);far'at'e(されていて)。
hh)過去分詞受動態はitで終わる。例:far'it'a(された);far'it'e(されて)。
i)未来分詞受動態はotで終わる。例:far'ot'a(これからされる);far'ot'e(されようとして)。
受動態は全て、動詞est(〜である)の活用形と、必要な動詞の受動態分詞とを併せて用いる。例:
i est'as am'at'a de
iu'j(彼女はみんなに愛されている)。
- 副詞は語根にeを付加してつくる。比較級、最上級は形容詞と同様である。例:mi'a frat'o kant'as pli bon'e ol mi私の兄/弟は私より上手に歌う)。
- 前置詞は全て主格支配である。
C)一般規則
- 全ての語は綴り通りに読まれる。黙字はない。
- アクセントは後ろから2番目の音節に落ちる。
- 合成語は語根をそのままつなげてつくる。(主体となる語は最後に立つ。)一語として綴るが、学習時等は( ' )で区切る。文法的な語尾は個々の単語によって考慮する。例:vapor'
ip'o(蒸気船)は語根vapor(蒸気)と
ip(船)と名詞語尾oの合成である。
- 1つの節内に1つでも否定語があれば、2つ目は許されない。
- 「どこへ?」という質問に答える文章では、単語は目的語の語尾をとる。例:kie'n vi ir'as?(あなたはどこへ行くのですか?), dom'on(家へ);London'o'n(ロンドンへ)等。
- 国際語における前置詞はみな、確定した意味を持っている。もし、なんらかの前置詞を使う必要があるが、適当なものがない場合には、確定的な意味を持たない単語jeを使う。例えば、
oj'i je tio(それを喜ぶ), rid'i je tio(それを笑う), enu'o je la patr'uj'o(祖国への憧れ)。この様な場合、各言語で違った前置詞が使用されているが、国際語ではただ1つの語jeが全てに前置される。意味の混乱のおそれのない時にはjeの代わりに前置詞なしの目的格を使用してもよい。
- いわゆる「借用語」、すなわち多くの言語が同じ語源から持ってきている様な単語は、国際語ではその綴字法に準拠する以外は変化を被らない。そしてまた、基本となる語を中心に考え、派生語は基本語から国際語文法に従ってつくられるのがよい。すなわち、teatr'o(劇場)に対してteatr'a(劇場の)等(teatrical'aとはならない)。
- 冠詞のaと名詞の語末のoは音調をよくするために脱落させてもよい。つまり、de la mond'oをde l’mond'oに、
iller'oを
iller’の様に。この様な場合、脱落させた母音の代わりにアポストロフィ(’)を使う。
V.2 1995.12.9
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