F4タービン・トラブルシューティング!
JCエンジン用RHF4改ハイフロータービンの謎に迫る。

不具合内容「ブースト(過給圧)が上がらない」
これは以前にタービン加工を依頼されたユーザーからの一報でした。
加工自体はうちではなく、とある加工屋に製作を依頼したスペシャル品です。

加工内容
★特殊軸(シャフト):純正ボールベアリングからメタルに変更と軸弄り(謎
★特殊インペラ:純正4(8)枚羽から5(10)枚羽に変更、
1mmオーバーサイズの高周速対応
型インペラ
★排気タービンブレードにカットバック加工
★コンプレッサーハウジング加工:インペラの大型化に伴い内径拡大と何時もの加工?(謎
★エキゾーストハウジング加工:何時もの加工?(謎




問診
まず配管や補記類の組み付け等に問題が無いか、圧漏れその他が無いか確認、
(ユーザー自身、エンジン分解、組み付けが出来るスキルを持っている)
問題は無いようだ。

症状の確認
どんな時、どんな具合で、具体的にどんな不具合なのか?
ブーストが上がらないと言ってもまったく過給しない訳でなく1.0kくらいまでは
普通に上がるがそれ以上は何をやっても上がらないということでした。
本来であれば、すぐに現車確認して診断したいところでしたが、
遠方のためしばらくは電話やメールでのやりとりに・・・
一般的にはアクチュエターのトラブルが考えられるが加工前までは
正常に機能していたようなので問題は無いと思われる。

製造元へ相談
G-MOUNT:「ブーストが上がらないみたいなんですが」

製造元:「新品コア使用だから不良とは考えにくいですね、ECUのセッティングはしましたか?、まともにセッティングできないとパワー出ないよ」

G:「セッティング以前にブーストが上がらないのですが・・」

製:「オイルラインはメタル用に交換した?」

G:「純正のボール用ですが」

製:「あ、じゃぁ原因はそれだね、メタル用じゃないとオイル供給不足でシャフトが焼き付いちゃうよ、もう壊れてるね、現物送ってくれれば分解して壊れたタービンの画像見せますよ」

G:「そうなんですか、でも最初から上がらないみたいだし、1.0kくらいまでは普通に過給かかるみたいなんですが」

製:「いや壊れてるよ、どっちにしても、まともにセッティングできるのは、た○やんくらいしかいないからね、なんせ
”F4改F5ハイブリッド”になってるから」

以上のような内容を電話で話し、問題解決したかのような印象を受けました。

次の日、製造元のブログを拝見すると
「お○鹿さんが過給機壊してブーブー騒いでいる」と記述されていた・・・
専門家の見解を伺っただけなんですが・・・
しかも現物確認しないで「壊れてる」と断定してしまってる、
これ、もし現物見て壊れてなくてももう後には引けないんじゃね?
画像なんて何とでもなるだろうし・・・

そんな不安が頭の中をよぎったのでまずはうちで検証することに・・
まず疑惑タービンを送ってもらってうちのJCエンジンで試すことになりました、
まずは目視確認、ぱっと見は焼きついてる様子もなく
羽も軽く回る感じだ、なのでそのままJCエンジンに組みつけてみた。
オイルラインはどうするか?実はF4用のメタル用オイルラインというのは
JCエンジンには存在しない、F3なら両方選べますがF3用は合いませんよ。
(この世に存在しない物なら専用品を付属するか注意点として
アドバイスしてくれても良さそうなものだが・・)

なので別エンジンのメタル用オイルラインを加工してJCエンジンに装着できるようにしました。
念のためアクチュエターはうちの正常に作動しているもの(1.6k設定)を装着、いざ試運転へ・・
確かに1.0kくらいしか上がらない。
アクチュエターを殺してようやく1.5k付近までは過給した。
(ノーマルだったらエンジンブローするまで無限大に過給する設定)
やはり焼きついているのか?しかしこれだけ早い段階でブーストが上がらなくなるくらい
症状が悪化するのであれば、これだけ回せばとうにシャフトロック(固着)して
まったく動かなくなってもよいはず、しかし何度回しても同じくらいのブースト、
加速感も変化しない。

再度取り外し、タービン単体点検
スイングバルブ点検

左側がF4改、右側がノーマル、ノーマルは綺麗に円を描いているがF4改は
円がぼやけている、スイングバルブの密着不良でここから排気が漏れ漏れに
なっていたのだろうか?
それならば、ということで排気ハウジングを良品に交換してテスト、
結果は・・・
変わらない・・・残念。
そもそも考えてみれば設定過給圧でアクチュエターが作動するのだから
今まで一度も設定過給圧まで達したことのないこのタービンだと
バルブも開いたことが無かったんですね(汗
気を取り直してコンプレッサーハウジングを取り外してみる、
そこである事に気付く、
なんかやけにバックプレートのハウジング取り付け用の
ネジ穴多くねコレ?
しかもこのインペラどっかで見たことあるぞ???
とっさに頭に浮かんだ”VQ41だ!”(高排気量エンジン向けのF4タービン)

手持ちのVQ41タービンをバラして比較してみる、
同じだ!確かにVQ41なら5枚羽でワンサイズ大きいし、軸もメタル仕様だ!


このF4改はVQ41用のセンターセクションを流用していたのである、
そのままだとJC用のコンプレッサーハウジングとネジ位置が違うし、
相位もずれるので新たにタップ切直したようです。
参考までにプレートに新たに設けられたネジ位置にマーキング、
元ネジ穴にボルト付けてわかりやすくしてみました、
な〜んだ、そうだったのか、
これならスペシャル(特殊)でもなんでもない、
昔からある流用術でプライベーターの間でも
定番チューンの1つだよ。

しかも、みなボール用のオイルラインでブーストがんがんかけて
何年も使用してる人いるけど焼きついたと言う話は聞いてない。
ちなみにごく最近も東北某所のJC乗りな方にもVQ41テストしていただいてるが
自己流セッティングで
170psオーバーを実現している。
もちろんオイルラインは
ボールベアリング用だ。
確かに理論的に言えばフローティングメタル(軸がオイル中に浮いてる状態で回転している)
なので充分な油量を確保するのが望ましいと言えるでしょう。
しかし、実際には壊れていない。
ボール用でも壊れないけどメタル用に変えたほうが安心ですよのレベルですね。
例えるならキャッスルでも十分だけどオメガ入れとく・・みたいな。
段々とF4改スペシャルの正体が解明されてきました。

話は戻って・・
では何故ブーストが上がらない(上がりにくい?)のか?
JC+VQ41流用でも他所ではうまくいっているのに。

コンプレッサーハウジング検証

JC加工ハウジングを取り外してVQ41用のハウジングに交換してみる、
アウトレットの形状が違うのでフランジアダプターもワンオフで製作しました。
で、さっそく試運転してみましたが・・・
まったく変化無し!
結果、消去法で考察すると両ハウジングに問題ないのだから
原因はセンターセクションにあると考えて間違いないでしょう。

疑惑のセンターカートリッジ

さあて、ここからが問題です。
これ以上の分解はバランス修正等の問題が発生するため手がつけられません、
カットバック加工で排気が抜けすぎるのか?
それとも軸弄り(謎)に問題があったのか?そもそも軸弄りなんてしてるのか?
単純に考えるとVQ41タービンにカットバック入れてJC用のハウジング付けて完成、
的な仕上がりに思えるのですが。
何せ、タービンに関しては私はド素人なのでシロート考えしか思い浮かびません(笑

推測
元々、VQ41タービンは高排気量エンジン向けのF4で
カットバックも入っているから713ccじゃ回しきれないのでは無いだろうか?
ただ、ドッカンになったとしてもブーストだけは上がるはず。

やはり壊れてるのか?オイル供給不足で一時性能は劣化したが
それはある程度までで収束してその後は一定の性能を維持しているとか?
(そんなバカな・・)

それともECUセッティングすればブーストが上がるのか??
(順序が逆でしょ)

今後の検証
長期的に同じ状況で使用してみて性能が変化しない、あるいは悪化するか試す。
(もちろんボール用オイルラインで)
もしくは高排気量エンジン(例えば936ccや1300cc)などに装着してみて
パフォーマンスを発揮するか試す。
ただ、排気量上げてブーストが上がったとしても
ユーザーが要求している条件(JCエンジン前提に製作依頼)を満たすことが出来ないため
不良品と認定せざるを得ないでしょう。
例え、いくら高性能な物だったとしても1台1台仕様は違うはずだし、
エンジン仕様に合った製品で無ければユーザーにとってはゴミも同然です、
タービンに合わせてエンジンを弄るのではなくエンジン仕様に合った
タービン製作をして頂かないと話になりません。
ナンデモカンデモハイフローにすればいいってもんじゃ無いよね。

追記(不具合検証とは関係ありません)

JCのコンプレッサーハウジングを付ける為にバックプレートに新たに設けられた
ねじ穴ですが画像の通りでネジが斜めにしか入りません(泣
イタタ・・これは痛い仕上がりです。
製造元のブログ拝見すると一千万円以上はするであろうと思われる
電子制御なマシニング(切削機械)がしょっちゅう登場するので
さぞや精密な加工が施されてるかと思いきや、
これはとても残念な仕上がりとしか言いようがありません。

それからこのタービンはF4改F5ハイブリッドではなく、
F4改・F4流用品と呼んだほうが
正解かな〜と思いました。


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