新聞紙面





 四つ折りの状態で読みやすいように紙面を編集してほしいものだといつも思う。
 ダイナミックな紙面にしたいという気持ちは良くわかる。しかし、日本はとにかく狭い国。電車の中はもちろん、机の上にもモノがあふれ、なかなか大きく広げて読めない。
 もっとも、それだからこそ、新聞を大きく広げて読むことには、ほけーっとした長閑な趣というものがある。
 午後も遅く、夕方になろうかという頃がいい。場所は、昭和30年代に建てられたビルの一室だ。
 老眼鏡を鼻にのせた初老の男が、寿司屋で出てくるような大きな湯飲みで茶をすすりながら、殺人事件や政治の腐敗などの記事を読んでいる。広げているのは、一度目を通した朝刊だ。男は、ふと新聞から顔を上げ、山田君から連絡は?と言う。少し離れたところで菓子をつまんでいる中年の女が、いいえ、と答える。そう、とだけ言って男は再び新聞を読み始める。
 そういう怠惰な時間に、今の新聞はぴったりくる。
 だが、今はそういう時代ではない。コンパックやIBMのCMで流れているような音楽が、日本人の頭の中では鳴り響いている。電子メール、いや、もっとすごいもので、世界中を光の速度で駆けめぐる情報を追いかける。そういう時代なのだ。新聞も変わるべきだ。
 先ず、縦書きをやめる。
 少なくとも政治・経済情報の提供に重きを置いてる新聞は縦書きをやめ、横書きにするべきだ。
 縦書きの場合、数字が漢数字のみで表記することになり、わかりづらい。七千三十三億円と7033億円では、後者の方が直感的に理解しやすい。数式も縦書きされることがあるが、これはわかりづらいとかいうレベルを通り越し、陳腐の域に達している。
 IMF、OSなどの英字も縦書きされるが、これも気持ちが悪い。3文字くらいならまだしも、4文字、5文字となるとエキゾチックな雰囲気さえ漂う。
 そして、四つ折り向け編集だ。
 紙面を完全に4分割するのは、確かに視覚的に硬い。記事が左右にまたがる程度は仕方がないかもしれない。少なくとも、文の真ん中が上下の折り目に当たっている現状はいい加減にしてほしいものだ。


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