もはやどちらも支持しない





 アメリカ司法省は、マイクロソフトは IE を Windows と抱き合わせ販売し、不当にシェアの拡大を図っているていると主張、マイクロソフトに対し IE なしの Windows を十分に安い値段で販売することを求めていた。
 マイクロソフトが独占企業に育ちつつある現状にメスを入れる必要があるのはわかる。しかし、国家権力がソフトの仕様に干渉することは横暴だ。だから私はアメリカ司法省を支持することはできなかった。

 それが、どういうわけか、アメリカ司法省の提訴の内容が変わった。5月19日朝刊の日経新聞によると、以下のような内容らしい。
  1. 「Windows98」に「IE」と共に「ネットスケープ・コミュニケータ」を組み込む。
  2. 他社製のブラウザを組み込まないときは、「IE」を外す。
  3. 起動時に現れる画面をパソコンメーカーが自由に変更できるようにする。
  4. インターネット・プロバイダやパソコンメーカーに対し、OSのライセンス供与を条件に IE だけを採用することを強要するような契約内容を見直す。  結論から言って、今回の提訴は妥当な内容だと思う。妥当すぎて肩すかしを食らったような気がする。
     4. は当然のことだし、3. はささいなことだろう。2. は 1. の補強。重要なのは 1. のコミュニケータをバンドルしろ、というものだ。それまで抱き合わせ販売の違法性を訴えていた司法省が、抱き合わせ販売をしろというのだから、都合がいい気がしないでもない。
     「パソコンメーカーが競合ソフトを自由に載せられるようにするなど排他的な契約条件の改善」を求めるのは当然のことだし、また、コミュニケータをバンドルすることは、前回の主張と違い、誰の利益も損なわない。業界や消費者を混乱させることもない。
     損なわれるのは、マイクロソフトの「不当な」利益だけだ。
     マイクロソフトはソフトの内容だけでネットスケープと勝負する。消費者が IE を良いソフトであると判断すれば、シェアは拡大し続けるであろうし、コミュニケータの方が優れていると判断すればシェアは低下する。そういう単純な構図になるわけだ。結構な話である。
     だが、本当にそうなるのだろうか。
     マイクロソフトは今回の提訴に対し、全面対決を決意しているらしい。提訴に対する反論を準備する期間として7カ月をワシントン連邦地裁に要求している。裁判はその後ということになるのだろう。決着には時間が掛かるかもしれない。その間、「Windows98」は普通に販売される。裁判が決着する頃には、事態は決定的になっていないとも限らない。
     遅すぎる。
     IE を削除しろなどという無茶苦茶な要求などせずに、初めからコミュニケータのバンドルを要求すれば良かったのではないだろうか。そうしていれば「Windows98」の発売に間にあった可能性もある。
     アメリカ司法省とマイクロソフトの争い。実は、茶番だったのではあるまいか。司法省の後ろにいるのは、マイクロソフト自身ではないだろうか。
     そうでないとしたら、彼らは大丈夫なのだろうか?何の役にも立っていないし、事態は何も変わっていない。もっとも、意外と早くコミュニケータがバンドルされることになるかもしれないが・・・。
     とにかく言えることは、問題の重要度は一気に縮小し、もはやどちらかを支持する気にはなれないし、必要もないということだ。ならば敢えて言おう、がんばれ Apple!(関係ないって、とほほ・・・)


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