ふるさと号 運転

 毎年、文化の日に運転されていたイベント列車、

「ふるさと号」をご紹介します。



 毎年、11月3日の文化の日には、吉井町(備前福田駅、周匝駅)で「ふるさと産業祭」が開催されます。片上鉄道では、この行事への参加と列車の旅を結びつけたイベント列車、「ふるさと号」を運転し、沿線市町の交流行事の一環として、地域に貢献していました。



それでは、「ふるさと号」の旅にご案内いたします。

 今日は平成元年11月3日。片上鉄道の一大イベントである「ふるさと号」の運転日です。片上駅の駅舎や構内は朝早くからにわかに活気づきはじめ、カメラを手にした鉄道ファンや、黄緑色のはっぴを着たスタッフの姿が目に付きます。

 機関庫の前では、牽引を担当する機関車の装飾が始まっています。車体の側面をモールで美しく飾り、正面には日の丸の国旗と大きなヘッドマークが取り付けられました。機関車にとっても、今日は一年に一度の晴れ舞台なのです。
 ヘッドマークには、「ふれあいの旅 ふるさと号 1989.11.3 片上鉄道」と書かれています。

 朝の客車列車が片上に到着したあと、さっそく客車の編成作りが始まりました。そして出来上がったのは、普段は見ることができない、堂々の4両編成です。しかしこの編成も、昭和63年までは5両編成で運転されていたのですが、残念ながら諸事情により一両減となってしまいました。

 9時50分、「ふるさと号」はたくさんの親子連れや鉄道愛好者を乗せて、片上駅を出発しました。さわやかな秋晴れの中、DD13形が牽引する旧型客車は、最初の目的地である柵原駅を目指します。沿線ではたくさんの鉄道ファンがカメラを構え、車内からはなごやかな雰囲気が伝わってきます。

 清水駅と中山駅を通過して、10時05分、JRとの接続駅である和気駅に停車しました。ここで列車は15分間の一休みです。この列車は途中駅での乗降はできないので、ここでは運転関係の停車だけですが、列車から降りて記念撮影をする親子連れの姿もありました。

 10時20分、和気駅を出発。これから次に停車する吉ヶ原まで、途中の駅はすべて通過します。列車はのんびりとしたペースで、美しい吉井川の河岸を走って行きます。

 吉ヶ原駅には10時58分、1番線に到着しました。この駅で対向の27列車と交換します。現在のダイヤでは吉ヶ原駅での列車交換は1本もないため、普段は駅舎に面した1番線だけが乗降に使用されていますが、この日は久しぶりに2番線が客扱いに使われます。また、吉ヶ原駅は朝夕しか駅員が配置されていませんが、今日は一日中職員が勤めていました。

 10時59分、片上行きの27列車が到着。キハ802が、赤く錆び付いた2番線のレールに進入してきました。いつもとは違う乗り場に、利用客もとまどっているようです。
 27列車の発車を見送り、11時01分発車。「ふるさと号」は終点、柵原へと向かいました。

 柵原駅に到着したのは11時03分。駅前の広場には柵原町のテントが張られ、「ふるさと号」の到着を歓迎して、特製の炊き出し雑炊が振る舞まれています。乗客も記念撮影をしたり、おいしい雑炊を食べたりと、実に楽しそうです。

 いっぽう構内では、職員の方々が客車列車の機回しに悪戦苦闘されていました。実は柵原駅の機回し線は、客車3両分の長さしかないのです。そこへ客車4両が到着したのですから大変です。


 客車の編成を分割したり、現在は使われていない2番のりばに客車を入れたり、途中で機関車が客車にサンドイッチされる状態になったりと、前代未聞の機回し風景となりました。




 列車は再び乗客を乗せ、11時52分、柵原駅を後にしました。次はいよいよ、今日のメイン会場である吉井町「ふるさと産業祭」へと向かいます。


 周匝駅に到着したのは12時01分。駅員さんがホームで、「ふるさと号」の到着を今か今かと待ち構えていました。ここで乗客は全員下車し、徒歩10分ほどの所にある、吉井町役場へと向かいます。


 吉井町役場の駐車場を会場に開催されている「ふるさと産業祭」では、さまざまなイベントが繰り広げられています。特設ステージではカラオケ大会や、地元同好会による舞踊、民謡などの披露、会場内の屋台では、地元の特産品や新鮮な野菜が格安価格で販売されています。面白いものでは、うなぎの掴み取り大会などもあり、一日たっぷり楽しめます。



 そのころ「ふるさと号」は、定期列車の待避のために走り回っていました。
 周匝駅は交換設備が撤去されてしまったため、いつまでも停車していると、一般列車の邪魔になります。とりあえず、迫り来る28列車と交換するため、周匝駅を12時09分に発車して、備前塩田へと向かいました。

 塩田には12時15分に到着し、5分後には柵原行きの28列車が到着。気動車と顔を並べました。28列車が走り去ると、さっそく機回しと、柵原方面ホームへの入れ替えを開始。それが完了すると、なんと機関車はエンジンを切ってしまいました。JRなら、絶対にこのような事はしません。


 13時00分、柵原で折り返してきた29列車が到着。「ふるさと号」もエンジンをかけ、05分に発車しました。次の待機場所は吉ヶ原です。


 吉ヶ原には13時16分に到着。塩田での作業と同じように、機回しと2番線への入れ替えが行われました。ここで2時間の休憩となり、この間に30、31列車を待避します。

 15時14分、吉ヶ原を出発。列車は帰りの乗客を出迎えるため、再び周匝駅へと向かいました。太陽は西へと傾き、辺りには黄昏の雰囲気が漂いはじめています。

 周匝へは15時21分に到着し、ここで約30分間停車します。

 早めに祭りを引き上げてきた乗客が、周匝駅に戻りはじめました。中には両手にたくさんのお土産を持っている人も見られます。

 発車までたっぷりと時間があるため、ホームや機関車の周りでは、旅の思い出に記念撮影をする親子連れの姿が見られました。

 15時50分。「ふるさと号」は周匝駅を出発し、片上駅までの帰路の旅に就きました。車内では疲れきった顔の父兄さんや、まだまだ元気な子供たちなど、さまざまな表情が見られたことでしょう。

 今日は本当に楽しい、秋の休日となりました。

 列車は途中、和気駅に16時22分から33分まで停車し、34列車と交換しました。また、JR西日本の115系と肩を並べるシーンも見ることができました。

 そして片上駅には16時50分に到着し、「ふるさと号」の旅は終わりました。


 ご乗車ありがとうございました。
 そしてスタッフの方々、おつかれさまでした。





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