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I'm here. I'm glad you are there.
 今を遡ること10年以上前の1990年4月2日、画期的なラジオ局がこの日本に誕生したのをご存じの方はどのくらいいるでしょうか。衛星デジタル音楽放送株式会社、通称「St.GIGA(セント・ギガ)」。J-WAVEを総合プロデュースして名を馳せた故・横井宏氏を迎えて誕生したこの放送局は、BSを使った音楽専門チャンネルとして翌91年から有料放送を開始。月額600円という安価な設定でPCMデジタル放送が楽しめるというモノだった(もっと細かく言うなら当時、おなじく有料放送を開始したWOWOWの空いている音声チャンネルを使った放送だった)。当時、FM放送では人気DJが最新の注目曲を流暢な英語を交えてクールに紹介するのが通例だった。コレに対しSt.GIGAではDJを排し・・・というか、トークもヒットチャートもコマーシャルも排したばかりか、タイムテーブル(時間による番組割り)まで排したとんでもなく先鋭的な放送局としてスタートする。
 で、何を流していたかというと、ひとことで言うなら(そしてSt.GIGAの言葉を借りるなら)「音の潮流」を流してた。もう少し詳しく言うと、St.GIGAはtime&tideと呼ばれる編成を持っていて、地球を取り巻く月と太陽が織り成すリズム「潮の満ちひき」に合わせて選曲されていた。人も活動的になる日中はテンポよくビートの激しい曲が、夜になると穏やかで心地よい曲が流れるという凝ったもの。遠く祖先から受け継いだ自然を慈しむDNAを、都市にいきる現代人にそっと思い出させてくれるような、そんな番組だった。こう書くと、昨今ブームのヒーリング系と混同されてしまうだろうけど、実際はエスニックあり、ジャズあり、フュージョンあり、テクノあり、アンビエントあり、さらには波の音や動物たちの声、森を抜ける風など自然の音とセンスよく自然にミックスされた(←コレ重要。他にも似たような試みをした番組やCDは沢山あるけれどドレもコレも不自然に作り込まれていて不愉快。St.GIGAはポータブルDAT片手に世界中を飛びまわり人工物の音が一切聞こえない山奥等に入り込んで実際に採集してきた音を使っていた)、まさに「地球の音」そのもの。音楽には国境も民族も超えるチカラがあるんだ、と再認識させられたものです。「I'm here. I'm glad you are there. We are St.GIGA」・・・ときおり静かに入る言葉、このSt.GIGAでワタシは音楽に目覚めました。
 



サヨナラSt.GIGA
 しかし、というか案の定、というか。画期的すぎてニッチすぎたこの放送局は長くもたなかった。契約者数は伸び悩み、赤字垂れ流し状態に。time&tideな番組編成は大幅に見直され「潮の潮流」は姿を消す。任天堂による再建策でヒットチャートやゲーム情報が垂れ流され、混迷の度合いは深まった。民事再生法の適用を受ける。2002年には株式会社ワイヤービーの傘下となり、翌2003年、局名を「Club COSMO」に改名。遂にSt.GIGAは姿を消すことになった(その後、わずか半年でClub COSMOは破産宣告をする)。結局のところ、純粋な「St.GIGA」と呼べる番組を聴くことができたのは僅かな期間に過ぎなかった(90年〜93年)。紆余曲折を経て、残ったのはSt.GIGAの卓越したセンスを知ってしまったワタシを含むSt.GIGA依存症な人たち。以降、長きに渡ってポストSt.GIGAを探す、暗く長い旅がはじまるのです。
 


インターネットラジオ
 インターネットの回線網を用いたラジオ局が誕生してから数年。今、インターネットラジオは第3段階に入っていると言えます。技術的に音声を送信することが可能となり既存のラジオ局や各種コミュニティが実験的に放送を開始した第1段階、本格的に運用を試みるようになった局の登場と趣味の範囲にて個人レベルで放送を開始した第2段階、そして音質面でも番組内容でも既存のメディアを超えそうな(あるいは超えた)クオリティを持つ局が登場して来た第3段階である、と(勝手に思っております)。
 インターネットラジオの魅力はなんといっても(原則)無料で、個性豊かな世界中のネット放送が聴け、さらに既存の電波を用いたFMラジオよりも高音質なこと。デジタル放送並、とは言いませんが、局によってはそれに近いクオリティで発信しているところもあります。

目的の番組を如何に見つけるか
 インターネットラジオを聴く方法はいろいろあります。パソコンを用いるのが最も一般的(インターネットラジオ受信専用機なんてのもあるようですが一般的ではありませんね)でしょうが、その際はReal AudioやWindows Media Playerなどが主に使われているソフトかと思います。ワタシはマックユーザーってこともあって、Appleが無償提供するiTunesを使っています。iTunesの良いところはAppleならではの使い勝手の良い直感的なインターフェイスは勿論のことですが、主要なインターネットラジオのリストをサーバから取得してくれるところにあります。
 POP(50s、60s、70s、80s)、Jazz、Modern Rock、Ambient、Blues・・・などなど細かくジャンル別けされているのも使い勝手が良いです。とくに普段、絶対セレクトしないようなジャンルをたま〜に聴いてみると思い掛けない発見とかあって面白いですよ。
 iTunesだけでも、かなりの数のインターネットラジオ局が収録されてるので、コレを1つ1つ聴いていくのも面白い。iTunesのリストだけでは飽き足らなくなったならWinAMP等のサイトを巡ってお気に入りの局を探す旅に出かけてみましょう。勿論、ゴミみたいな局も紛れてるケド、思い掛けない発見がありとても楽しいですよ。想像してみてください、もしお住まいの地域にFM放送局が一気に200局以上も増えたとしたら!なんと素晴らしく楽しいことでしょう!!

お気に入り局
 いろいろ聴いてる中で見つけたワタシのお気に入りの局をご紹介します。まず最もよく聴くのがJazzやフュージョン系の音楽を中心とした清涼感ある「SmoothJazz.com」。この局の面白いところは、番組を聴いていて気にいった曲は同サイトから購入できるという点。いまだ多くのインターネットラジオ局が収益面で確固たるビジネスモデルを構築できていない状況において、この試みは非常に面白い。
 次にご紹介するのは「Gloove Salad」。Somafmというソノ筋には有名なサンフランシスコのインターネットラジオ局の番組。この局には6つの番組があって、そのどれもが良質。アンビエント系が中心の「Gloove Salad」、アシッドやらテクノやらスタイリッシュな選曲が楽しい「Secret Agent」、ダウンテンポなテクノやハウスが心地よい「Beat Blender」などがお気に入り。どのチャンネルもクオリティは比較的高く、音質も良いのでオススメ。
 そしてもう1つのオススメ局は「Swiss Groove」。スイス発のアシッド系な局です。このビミョーにユルい感じが心地良かったりするのです。
 



 
スカイラインで聴きたい

 さて、これらインターネットラジオ、高音質だし自分好みの局が見付かっても、残念な事に現在のワイヤレス通信技術では車内で直接インターネットラジオを楽しむことはできません。インターネットラジオの高音質を車内やアウトドアでも楽しめるようにワタシはiPodに録音して楽しんでいます。
 インターネットラジオはMacOS Xユーザーであれば「StreamRipperX」というソフトを用いることで簡単に録音可能。しかもこのソフトの素晴らしいところがストリーミングをMP3に変換しながら自動的にアーティスト名と曲名を割り当ててくれることです。
 ただし、そのままiPodに転送してしまうと、iPod内に無数のアーティスト名が登録されてしまうため、ワタシの場合あえてStreemRipperXの設定でアーティスト名やタイトル名をMP3タグに打ち込まないよう設定しています。MP3タグに無くてもStreemRipperXではファイル名をアーティスト名+曲名にして録音してくれるので問題ありません。ワタシはまず録音した曲を一通り聴き、あとで気に入った曲だけMP3タグにアーティスト名や曲名を打ち込むようにしてますが、iTunesは操作性良いのでそんなに面倒な作業じゃありません。

 スカイラインで聴くにはiPodをカーオーディオに接続する必要があります。これにはAIC-210を使っているので高音質にiPodの音源をスカイラインのBOSEサウンドシステムで楽しむことができます。また、室内では我が家のメインユニットKENWOOD「VH7PC」に接続して聴いてます。VH7PCはご存じの方も多いと思いますが、かつてSOTECのAFINAというWindowsパソコンにセットされたKENWOOD製のオーディオ。これが大量に売れ残った為、一時期、二束三文の破格値で売られていたのです。値段は格安なれど、そこはKENWOOD。かなりの高スペック&高音質で使い勝手の良いオーディオとなっております。そして何より嬉しいのはこのコンポ、もともとPCとの接続が前提に作られたダケあってUSB入出力ができるのですよ!で、インターネットラジオをUSB経由で再生することができます。このようにほぼ全ての経路がデジタルで統一でき、非常に快適なインターネットラジオ生活が送れます。
 



プロ集団による放送を
 先日、St.GIGAを録音した10年以上昔のアナログテープを聴きなおしてみたのだけれど、今聴き返しても古さは全く無いばかりか、心地よさもあの当時感じたまさにそのもの。St.GIGAが素晴らしかったのは、すべてにおいてプロが集結されていたから。例えば局の編成を考えるサウンド・デザイナー(いわゆるDJのような人たち)は、本当に素晴らしい音楽を世界中から集めてくれていたし、波の音などのSE(ちなみにSt.GIGAではSound EffectではなくSound of the Earthと呼ぶ)を集める録音スタッフも真のプロ集団であったからこそ、あれほど心地よくセンスの良い音楽を編成できたのだとあらためて感じます。
 反面、残念なことに手軽さが信条のインターネットラジオにはそうした徹底したフィロソフィーに貫かれたプロによる放送がまだ見受けられません。勿論、収益面でいまだビジネスモデルを確立できていない局が大半であろうと推測されることから、あまり多くを望むのも酷なのではありますが。
 インターネットを通じ、世界中からラジオの受信が可能となった今こそSt.GIGAのような卓越したスキルとセンスを持つプロが集結した有料ネット放送を全世界に配信するチャンスだと思うのはワタシだけじゃ無いハズ。インフラは揃ったのですから、あと必要なのはクオリティの高いコンテンツなのです。

音楽よ何処へ行く
 レコードとCDの登場により、音楽は流通可能な「購買物」となり、いまインターネットを介したP2Pファイル交換行為やインターネットラジオそして衛星ラジオや地域FM局等による多チャンネルによる垂れ流し状態で音楽は「大量消費物」になりつつあります。ワタシたちが求めていた音楽って、そんなのでしたっけ?違うハズですよね。ワタシたちが欲しているのは真に心地よい、無意識に生活に溶け込んだ音楽なのですから。そして、そんな素晴らしい世界を与えてくれるインフラこそインターネットであり、インターネットラジオであるとワタシは信じています。なぜならインターネットはその発足当初から常に民主的で革新的なのですから。いまやインターネットラジオはSt.GIGA依存症なワタシにとって、唯一の希望となりつつあります。
 


おすすめネットラジオ局
 
Somafm
 米国サンフランシスコの放送局。ネットラジオ界では有名処。ジャンル別に6つの良質な番組を流す。

Smooth Jazz.com
 米国カリフォルニア発、ジャズが主体のクールな放送局。オンエア中の局がWebサイトで購入できるのが特徴。

Swiss Groove
 スイス・チューリッヒ発のアシッド系を中心としたユルめなビートが心地よい放送局。

WinAMP.com
 Windowsユーザーにお馴染みWinAMPのサイト内にインターネットラジオ局を多数紹介するページあり。
 


 


 


作成:2004年7月
修正:2005年4月


 

あとがき。
 このページ、題目は「インターネットラジオを〜」となってますが、読み返してみると結局のところ今は無きSt.GIGAを求めて彷徨い続けるワタシの苦悩に終始してますね。・・・それだけSt.GIGAというのは衝撃的だったのです。
 横井宏氏は既に数年前ガンで他界されており、St.GIGA放送内容が収録されたDATは会社破産後、管財人によって競売にかけられております(それもつい先月、2004年6月の話です!)。このDATがその後、だれの手に渡り今どこにあるのか全く情報がありませんが、1800本にも及ぶ「作品」がこのまま日の目をみること無く、葬り去られることの無いよう祈っております。
 

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