寒い季節。
 吐く息は白く、自然と体を丸めてしまう。

「おはよう、星馬くん」

 そんな自分に後ろから声が掛けられて、ボクは振り返った。
 勿論、声の相手は確認しなくっても分かっている。

「おはよう、くん……今日も、寒いね…」

 振り返って猫を被った挨拶。
 今は登校時間だから、回りには沢山の学生が居るので、自然と猫を被った状態になってしまうのだ。

「そうだね。でも、冬の空気は澄んでいるから、好きなんだ」

 ボクの言葉に、は全く寒そうな表情は見せず胸一杯に空気を取り入れるように深呼吸した。
 その顔は、本当に気持ち良さそうで、見ているこっちまで不思議な気分になってくる。

「確かにくんの言うように、空気は澄んでいるけど、この寒さはちょっと……」

「人それぞれだから、そう思うかもしれないけど、ほら太陽の光とか温かくてボクは安心できるよ」

 眩しそうに太陽を見ながら言われた言葉に、ボクもそちらへと視線を向けた。
 眩しい太陽の光は、確かにそこにあって、まるで光を反射するプリズムのようにキラキラ光っている。
 それは、間違いなく暖かな光。

「ああ、そう言えば、冬でもちゃんと太陽の暖かさってあるんだよね……」

 寒くなるとどうしても下を向いて歩いてしまうけど、こうして上を向くとちゃんと自分達を見詰めている光は存在する。

「この時期は、日光浴するには最適だよね」

 ニッコリと笑顔で言われた言葉に、ボクも思わず笑顔を返した。
 本当、と話していると、忘れていた事を思い出すから不思議だ。
 今だって、あんなに寒かったのに、今はちゃんと温かさを感じる事が出来る。

「そう言えば、僕もこの時期の日光浴は好きだな」

「日の当たる場所でボンヤリすると、気持ちいいよね」

 そこで顔を上げて二人並んで歩き出す。
 僕の言葉に、が嬉しそうに返事を返してきた。

 うん、確かにこの時期の窓辺はすっごく気持ちが良くって、大好きだ。

「温室なんかに入るともっと気持ちいいよ。なんなら、今度いい場所紹介しようか?」

 その事を思い出していったボクの言葉に、が嬉しい申し出。

「うん、それじゃ今度の休みにお願いしようかな」

 基本的にボクとの趣味は似ている。
 それは、好みも同じ。

 って、事はが気に入っている場所って事は、多分ボクも気に入るって事。

「分かった。それじゃ、楽しみにしててね」

 ニッコリと笑顔で言われた言葉に、ボクは頷いて返す。


 寒くって忘れていたけど、ちゃんと空には暖かな光がある。
 まるでプリズムのようにキラキラと光るそれは、まるで君のようだと思ったなんて、絶対に口には出せない。