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暑い。
はっきり言ってその言葉しか浮かんでこない。
夏は兎に角、苦手だ。
夏休みと言う長期休みがあるから、学生にとっては欠かせない季節かも知れねぇけど、俺は学校に行ってる方が遥かに楽。
夏休みと言う事で、ここぞとばかりにばーちゃんに扱き使われている俺に誰でもいいから、同情して欲しいものだ。
つーか、夏だからって、気安く肝試しなんてしてんじゃねぇよ!
折角眠ってるモンまで叩き起こしやがって、どれだけ俺が迷惑してる事か!!
と、話がずれたな。
そんな訳だから、俺は夏が大嫌いなのだ。
『、大丈夫なのか?』
思わず『昼』が心配そうに声を掛けてくるぐらいには、フラフラなのは自覚している。
つーか、この暑さは簡単に人が殺せるぞ。
俺の肩に乗っかっている『昼』の体温を気持ちよく感じながら、日陰になっている場所に身を休める。
こう言う時、俺のために体温調節してくれる『昼』には心から感謝だな。
「まぁ、何とか生きてる……」
先程ぬらしてきたハンカチを額に当てて、俺はホッと息をつく。
全国的に、夏一色。
今日の最高気温は36度って、俺の平熱と同じってどうよ。
目の前のアスファルトから湯気が見えているのはきっと幻覚でも何でもねぇんだろう。
風さえも吹かない上に、太陽の光が照り付ける今の季節は俺にとっては拷問に等しい。
ああ、本気で頭痛してきたかも……。
「?」
頭を抱え込みかけた俺の耳に、誰かの声が聞えてゆっくりと意識を引き戻す。
朦朧とする意識の向こう、何時も見せている赤い髪にキャップ帽を被った良く知る人物の姿。
「よぉ、星馬」
その人物を視界に入れて、俺は片手を挙げて挨拶。
そんな俺に、星馬は大急ぎで近付いて来ると、信じられないと言うように口を開いた。
「って、何でこんな暑い中長袖着てしかも帽子被って無い訳!!」
「長袖なのは、肌が焼けない為の防止策。黒くならない代わりに、火傷したみたいになるからな……帽子がねぇのは、持ってないから?」
怒鳴られた内容に、答えるが最後は思わず首を傾げてしまう。
そう言えば、帽子って持って無かったよなぁ……。
何処か他人事のように考えていた俺の耳に、再度星馬の怒鳴り声が聞えてくる。
「何で疑問系な訳!『昼』、軽い熱中症になりかかってるみたいだから、の首後ろ冷やして」
『分かった』
その声が聞えた瞬間、首筋にヒンヤリとしたモノを感じて瞳を閉じた。
ああ、熱中症なぁ……だから、頭がこんなに痛いのか……。
何処か人事のように感じながら、冷やされていく体に思わずホッと息をつく。
「はい、飲み物」
そして意識を取り戻した瞬間、頬にヒンヤリとしたモノを当てられて瞳を開く。
「ペットボトルで悪いけど、ちゃんと飲むんだよ」
無理矢理渡されたペットボトルのお茶。
態々買って来たと分かるのは、星馬の手にビニールの袋が持たれていたから……。
そして、少し息を乱している処からも、それが分かって、思わず笑ってしまった。
本当に、何だかんだと言っても面倒見がいい。
「……サンキュー。『昼』が冷やしてくれたから、大分マシになった」
素直に渡されたお茶を飲む。
この暑さに、ペットボトルの表面は既に大汗をかいている。
その水滴がぽとりと俺の服を濡らす。
飲んだお茶は、少しだけ渋かったけど、俺の喉を潤すには十分のものだった。
「子供じゃないんだから、もっとしっかりと管理しないで如何するの!」
そして、落ち着いた俺に待っていたのは、星馬の説教。
ああ、だから夏って嫌いだ。
特に夏休みなんて、最悪以外の何者でもねぇ。
ばーちゃん、孫が可愛いと思うなら、夏に弱い俺に少しだけ気を使ってください。
もう、星馬に説教されないように……。
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