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俺に説教しながら、星馬は持っている袋からまた何かを取り出す。
いや、うん、軽い熱中症になったのは謝るから、もうそろそろ許してください。
「あ〜っ、アイス溶けちゃったよ、誰かさんの所為で……」
さり気無く嫌味を言う辺りが、こいつだと思うけど、面倒を掛けたのは本当なので何も言い返すことが出来ない。
「あ〜っ、悪かった……」
俺が言えるのは謝罪の言葉だけだ。
「って、まぁ、こんな中でアイス買って来た僕も悪いんだけど……」
素直に謝罪した俺に、星馬は諦めたようにため息をついた。
態々買ってきてくれたそれは、コンビニのビニール袋に張り付いている。
買って来たアイスは綺麗に溶けていた。
俺の説教に満足した星馬が、再度ため息をつく。
「それに、お茶を先に渡すんじゃなくって、アイス渡せば良かったんだだけど……」
どうやら、しっかりとしていたようで、実は気が動転していたのだと言うように星馬が呟いたその内容に俺は思わず苦笑を零した。
「君に笑う権利はないでしょう。誰の所為だと思ってるの!」
思わず笑ってしまった俺に、面白くなさそうに文句を言う。
「悪い……でも、お前の事笑ったんじゃなくって、俺もバカだよなぁって考えてたんだよ」
だけど俺はそれに謝罪して、だけどお前の事を笑ったんじゃないと続けた。
星馬が持ってるビニール袋。
それは、ここからでも見えているコンビにの袋。
そうだ、こんな木陰じゃなくって、コンビニに入った方が良かったんじゃねぇかよ。
別に何かを買う訳じゃねぇけど、体を冷やすぐらいは十分な効力があったのだ。
行った事のないコンビニの事なんて、頭から抜けていた俺自身を笑っただけ……。
「はぁ?」
だけど、俺の言葉が理解できなかった星馬が、不思議そうに聞き返してくる。
「いや、だからな。コンビニが目と鼻の先にあんだから、そっちで休めばよかったんだなぁと……普段興味ねぇからそんな頭が回らなかった自分に笑ったんだよ」
自分には関係ないと思っていたコンビにも、こんな時には役に立つのだと言う事を実感した。
いや、そうだよ、コンビにって何処にでもあるから、涼むには十分な効果あるじゃん!
「……そんな当たり前の事考えてたの!ああ、でもコンビにって寒いぐらいにエアコン効いてるから、外の温度差で逆に体に悪いかも……」
素直に理由を話した俺に、星馬がそう続けてくれた。
って、んじゃ役に立たねぇじゃん。
やっぱり俺はコンビニとは無縁の人間なのか?
「あ〜っ、んじゃ生き返ったし、お詫びのしるしに星馬にはお茶をご馳走しよう」
「って、先お茶飲んだばっかり……まぁ、休憩するには十分な時間だから、素直にその誘い受けてあげるよ」
『、仕事は大丈夫なのか?』
ゆっくりと立ち上がった俺に、心配そうに『昼』が声を掛けてくる。
「おう、今日はもう終了!ばーちゃんには、暑さで倒れたって連絡しといた」
「連絡しといたって、それって心配するんじゃないの?」
『昼』の質問に元気に返した俺に、星馬が呆れたように返して来た。
まぁ、倒れた相手から直接連絡してんだから、ばーちゃんもちゃんと状況理解してるだろうから問題なし。
「大丈夫、ばーちゃんは俺を良く知ってるからな!」
自信満々に返せば、呆れたように星馬がため息をついた。
そんな星馬を無視して、その手に持っているビニール袋を横から掻っ攫い歩き出す。
「ちょっ、!」
慌てて俺を呼ぶ星馬を無視して、目的地へと歩く。
別に辺りが涼しくなった訳じゃない。
先ほどと変わらない太陽の熱は嫌と言うほど降り注いでいる。
それでも、手に持っているビニール袋から、本当に僅かだけど冷たさを感じて、俺は思わず笑みを浮かべた。
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