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『、今日は温泉に行かないのか?』
そんな俺に、珍しいというように問い掛けてきたのは、一緒のベッドでゴロゴロとしていた白猫だ。
休みと言えば、直ぐに温泉へと出かける事を知っているからこその疑問だろう。
「ん〜?今日は、そんな気分じゃねぇんだよなぁ」
そう言って、ベッドから起き上がらずにだらだらしているなんて、本当こいつがここに来てからは初めてじゃないだろうか。
でも、たまにはそんな日があってもいいだろう。
毎日毎日、そりゃ忙しい日を過ごしているのだから、だらだら過ごすのだって大事な事だ。
『珍しいな』
「俺だって、たまにはだらだらしたい日もあるぞぉ〜」
思わず語尾が間延びするのは、本当に何もする気がない証拠。
何年かに一度だけこんな風になる。
前にこんな風になったのは、中三の冬だったよなぁ。
あの時も、一日中ベッドでだらだらしていた記憶がある。
まぁ、そうなったのは、前日にむちゃくちゃ大変な仕事をさせらたのが理由だったんだけど
『昨日は確かに大変だったのだから、その気持ちは分からなくないがな』
そして、また昨日も同じように大変な目にあった。
何が言いたいかと言うと、俺がこうやってだらだらする時は、大体前日に大変な仕事をした時だ。
って事は、数年に一度俺は大変な仕事を押し付けられていると言うことになる。
いや、まぁ、数年に一度ですんでいるだけ、有難いのかもしれないけど
と言うか、この業界でかなりの力を持っているばーちゃんから、自分よりも強い力を持っているとお墨付きを貰っている俺だからこそ、数年に一度ですんでいるんだけどな。
「流石に、昨日は疲れた。まぁ、『昼』のお陰でこれだけですんだけどなぁ。『昼』居なかったら、流石にあんなに早く終われなかっただろうから、本当に感謝してるよ、ありがとう」
昨日の事を思い出して、『昼』に笑顔で礼を言う。
本当『昼』が居なかったらと思うと、ぞっとする。
ばーちゃんも、もうちょっと考えて仕事回してくれりゃいいのにって思うけど、あれは仕方なかったんだろうなぁ。
口先だけで何の役にも立たないヤツと組まされるのなら、一人で仕事したほうが全然マシだ。
そう思うんだけど、本当に何年かに一度こう言う事仕事が回される。
まぁ、多分俺の成長を確認すると言うものなんだろうけど、こんなに少なくすんでいるのは、ばーちゃんの計らいなんだと思うから、感謝しなければいけなんだろう。
だけど、本当に疲れたんだから仕方ない。
『昼』が相手を眠らせてくれなければ、もっと大変だったろう。
『あんなヤツがお前と組むなど許せん。あんなヤツよりもまだあいつの方が役に立つぞ』
昨日の事を思い出してため息をつた俺に、『昼』が不機嫌な声で口を開く。
言われた内容に、俺は思わず苦笑してしまった。
確かに、口先だけで何の役のも立たない払い師なら、一応本人は一般人だと言い張っているあいつの方が何倍も役に立ってくれるだろう。
否定はしない。
しないんだが、それは言っちゃいけない事だ。
「まぁ、済んだ事はさっさと忘れて、今日はゆっくりしようぜ。ばーちゃんも気を使ってせっかく休みにしてくれてんだからな」
不機嫌全開の『昼』を抱き寄せて抱え込む。
「それに、俺のパートナーはお前だけなんだからさ」
素直にそう言って、ぎゅっと『昼』を抱きしめる。
ふわふわの白い毛に顔を埋めて、その毛並みを堪能するのは、結構なお気に入りだ。
だらだらする時は、動物とまったりするのが、心和ませてくれるよなぁ。
『………天然タラシ炸裂だな……』
ベッドの上で『昼』を抱き締めて満足していた俺の耳に、ボソリと何かを言った『昼』の声が聞えたが、何を言ったのかまでは聞えなかった。
『昼』が何を言ったのか少しだけ気にはなったのだが、俺の意識はこの安心出来る和みの空間で既に保つ事を放棄してしまっていたからだ。
久し振りにだらだら過ごした一日の締めくくりは、俺が休みだった事を知ったらしい星馬のメールでの文句で終わりを迎えた。
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