|
「副会長は、兄貴の誕生日は祝うのに、俺の誕生日は祝ってくれないよな」
そんな事を言われたのは、いきなり呼び出された星馬の家でのことだった。
確かに言われた内容は、納得出来るようなものだが、何で俺が星馬弟の誕生日を祝う必要があるのかが分からない。
「それが用事だというのなら、俺は帰るぞ」
だけど、家に着いて直ぐに言われた内容に流石に俺はため息をついて疲れたように言う事しか出来なかった。
こっちは、暑い中人使いの荒いばーちゃんに仕事を詰め込まれて居たと言うのに、この兄弟は夏休みを満喫中のようで、羨ましい限りだ。
「豪、流石に着て早々そんな事言ったら、本気での奴帰るぞ」
そのまま踵を返して本気で帰ろうと思っていた俺に、呆れたような声が聞こえてくる。
その声の主は、当然この家の兄貴の方だ。
「星馬、結局俺は何の為に呼ばれたんだ?」
「聞いてなかったの?このバカが言ってたでしょ、今日はこいつの誕生日なんだよ」
声を掛けてきた星馬に問い掛ければ、素直に答えが返ってくる。
ああ、なるほどだから第一声がそれだったのか……
だが、言われた内容から考えるとmどう考えても
「で、星馬弟は、俺に祝って貰いたかったのか?」
「えっ、いや、あの…」
それを本人に確認しようと問い掛ければ、何故か言葉に詰まっている。
ちょっと待て、さっきの勢いは何処へ行ったんだ?
「豪」
「……分かってるよ」
言葉に困っている星馬弟に、疑問を感じていれば、ただ星馬が弟の名前を呼ぶ。
そうすれば、星馬弟が観念したようにガリガリと少し乱暴に頭をかいた。
「俺も、副会長に祝って貰いたかったんだよ」
そして、返ってきたのは少しだけ照れたように言われた言葉。
いや、俺に祝って貰わなくても、この兄弟ならいくらでも祝いたいと申し出てくる女の子が大量に居ると思うんだが……
「と言う訳だから、僕からこいつのへの誕生日プレゼントは、の呼び出しなんだよね」
言われた言葉に思考がついていかなかった俺などまったく気にした様子もなく、星馬がニッコリと笑顔で言う。
それはそれで、安上がりなプレゼントだなぁ、とは思ったが、それを口に出す事は出来なかった。
「……えっと、それは、祝いの準備をまったくしてなくって、悪かったな」
だから、俺が返したのは、それが精一杯の言葉だ。
まぁ、今日が星馬弟の誕生日だと知らなかったのだから、準備している方が可笑しいだろう。
何せ、こいつとは星馬繋がりでしか話した事はないのだから
「それは、今度俺用に甘くない菓子を作ってくれるのでいいから」
『プレゼントは、しっかりとを要求するのか?』
そう言った俺に、星馬弟が、ニカリと笑顔で返してきた言葉に、今まで黙っていた『昼』が呆れたように聞き返す。
「俺も、副会長の菓子好きなんだよな」
『昼』の言葉に、星馬弟はまったく悪いと言う様子も見せずに、嬉しそうに返してくれる。
自分が作ったものを好きだと言って貰えるのは、嬉しい事だ。
「分かった。なら、今度星馬弟の為に、何か作らせて貰うよ」
だからこそ笑って返せたのは、この弟が相手だからだろう。
本当に、悪気と言うか悪意が一つもないのだから、怒る気にもならない。
「楽しみにしてるな」
そういった俺に、星馬弟が嬉しそうに笑った。
その笑顔は、まるでこの季節の太陽のようにまぶしく感じられるのは、気の所為ではないだろう。
なるほど、星馬にとって、この弟は眩しい存在なんだろうなぁ。
その辺の、悪意あるヤツ等など、寄せ付けない輝かしい魂。
「ああ、そうだった。肝心な事を忘れていた」
「何?」
その笑顔を前に、俺はここに呼び出された目的の事を思い出して口を開く。
呟いた俺に、星馬が不思議そうに聞き返してきた。
「星馬弟、いや、星馬豪だったな、誕生日おめでとう」
だから、俺は星馬弟に視線を向けて、祝いの言葉を口にする。
「えっと、サンキュ、副会長」
そう言った俺に、星馬弟がまた太陽のような笑顔を返してきた。
|