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大学生になって、それなりに友人も出来た。
仲間と呼べる人達もちゃんと居るし、自分の事を分かってくれる家族の存在はボクにとっては、何よりも大切なモノ。
だけど、親友と呼べる相手は、たった一人しか居ないのかもしれない。
自分と同じような力を持ち、その力で仕事をしている友人。
誰よりも強くて賢いその人は、ボクが唯一尊敬出来る相手。
「副会長、今年も来るかな……」
ポツリと洩らしたボクの一つ下の弟の言葉に見ていた本から顔を上げる。
「さぁ、どうだろうね」
時刻はもう直ぐ0時。
それを過ぎれば、また一つ年をとる。
高校を卒業してからは、合う回数がぐんと減った友人の事を、今だにこいつは副会長呼びしている。
とっくに、副会長じゃないと言うのにだ。
「おまえ、その副会長呼びいい加減直した方がいいんじゃないのか?」
まぁ、歴代の中であんなに優秀な副会長は居なかっただろう。
生徒会長をしていたボクよりも、すべてを把握していたし、仕事は誰よりも速かった。
だからこそ、こいつの気持ちは分からないでもないけど、高校を卒業してまで副会長と呼ばれるのは、流石に気の毒だ。
「う〜ん、癖だからな、抜けねぇって」
指摘したボクに、豪はカラカラと笑う。
全く直す気はないらしい。
『レツ、携帯!』
そんな弟に呆れたようにため息をついた瞬間、何処からともなく黒猫が姿を現した。
「ああ、有難う『夜』」
部屋に置きっぱなしの携帯電話を態々持って来てくれた猫に、素直に礼を言う。
「電話か?」
「ううん、メール……ああ、顔を見せるみたいだよ」
受け取った携帯を操作すれば、音が鳴った理由は一通のメールを受信したから
それを送って来た相手は、今正に話題に上った相手で思わず笑ってしまった。
「何て書いてあるんだ?」
「う〜ん、またケーキ届けるから、ケーキは買うなって……今年は母さんが祝ってくれるみたいだから、の事も紹介出来るね」
内容を確認して、楽しくって笑ってしまう。
本当に、彼はマメだとそう感心してしまうのは、彼の事を良く知っているからだ
「……そのために、母ちゃんに家で飯食うって言ったんだろう、兄貴…」
楽しくって笑ったボクに、豪が呆れたような視線を向けてくる。
勿論、それは確信犯だけどね。
「さぁね……」
そんな豪に曖昧な返事を返して、ソファから立ち上がる。
大きく伸びをして、テーブルに置いておいたカップを手に取ってしっかりと洗って片付けた。
「ボクはもう部屋に戻るけど、『夜』も一緒に戻る?」
『うん!えっと、それって、レツの誕生日に、またのケーキ食べられるって事?』
片付けてから、またリビングに戻って、ソファに座っている『夜』へと声を掛ける。
そうすれば、素直に頷いてボクの肩に乗っかって来る。
それから、携帯をジッと見詰めて質問されたその内容に、思わず笑ってしまう。
「そうだね、今年も日成のケーキ食べられるって事だね」
クスクスと笑いながら、手に持った携帯を弄ぶ。
「兄貴!」
「んっ?」
階段を上っていると、後から声を掛けられて振り返った。
「誕生日おめでとう!つーことで、お休み」
「ああ、サンキュ。って事で、おまえも早く寝ろよ」
リビンから顔を出した豪が、言った言葉に返事を返してしっかりと釘を刺すことは忘れない。
もう既に、ボクは一つ年を取った。
だけど、毎年変わらない確かな事があるのが、こんなにも嬉しい。
『星馬へ
誕生日おめでとう!つー事で、今年もケーキ焼いたから、届けてやる!
居なくっても、勝手に置いてくからな!宜しく!!
以上 』
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