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それは、気まぐれ。
興味なんてなかったはずなのに、今行動している事の理由。
『、いいのか?』
そんな自分に、心配そうな声が掛けられる。
普通の奴等には見えないように体を消しているそれは、俺の肩に懐いている白猫。
心配そうに訪ねられたそれに、俺は笑みを浮かべる事で返事を返した。
偶には、仕事から離れるのも、大事な事だしな。
目の前には、楽しそうな集団もいる事だし……。
「本当、退屈しないよなぁ、あいつと居ると」
ポツリと呟いたその言葉は、俺の肩に居る『昼』には聞えたようで、深くため息をつかれてしまう。
っても、偶にはストレス解消も必要だと思うんだよな、俺も。
「そんな訳なので、助っ人希望な」
今にも勃発しそうな雰囲気の中、俺は飄々とした声でその集団へと声を掛けた。
その声で全員が俺へと視線を向けてくる。
「?」
一人で大勢に囲まれていた人物が俺の姿を確認するなり、その名前を呼ぶ。
まぁ、呼ばれても問題ないんだけど、出来ればこの姿の時にその苗字を呼ぶのは遠慮してもらいたい。
もっとも、この姿と学校での俺の姿は全く違うモノだから、誰も同一人物だとは思わないだろうが……。
「よぉ、えらい楽しそうな事になってるみたいだから、参加希望しようと思ってな」
言って、土手を下りる。
全く、こんな場所で喧嘩するなんて、どっかの青春漫画じゃあるまいに……。
「……いいのかい?」
土手を下りて、星馬の隣に並べば、そっと質問される。
「まぁ、偶にはストレス解消もしねぇとな」
「……ボクだって、それは同じなんだけどね。今日は、あいつも居ないから一人で楽しく出来ると思ったんだけど……」
質問された内容に答えた俺に、星馬は盛大なため息をついた。
ああ、そう言えば今日は弟の姿が見えないよなぁ、って、こいつもこれでストレス解消してんのかよ!
「何で、女が加勢に来るんだよ!!」
だが、気分良く居られたのもそこまでで、聞えて来たその声に俺の眉がピクリと反応した。
誰が、女だよ、誰が!
「あ〜っ、、出来れば穏便に……」
「お前等の目は節穴かよ!俺の何処が女に見えるつーんだ!」
『………見えるから、言ってるんじゃないのか?』
思いっきり自分の目が据わってしまったのを感じる。
そして、しっかりと文句を言えば、ポツリと昼が口を開く。
それを、軽くスルーして、俺を女なんて言った奴をさっさと殴り飛ばす。
あっ、しまった。正当防衛適応されないな……。
いや、させる気はサラサラないんだけど……。
「流石に、行き成り乱入してきて、一番に手を出すって言うのは、どうかと思うんだけど……」
俺が一人を殴った事で、乱闘スタート。
文句を言いながら殴りかかって来た奴を、星馬が軽く投げ飛ばす。
って、本当に軽々と遣ってのけるよなぁ……いや、俺も出来るんだけど……。
そんな事を考えながら、星馬と同じように自分に殴りかかって来た奴を投げ飛ばした。
勢いがあるから、簡単に投げられる。
力も必要無いって、合気道って本当に便利だよなぁ……。
「って、あっけねぇ……」
そして、5分も経たずに、その動きを止める。
周りには、数人の男達が転がっていた。
「せめて、5分ぐらいは頑張って欲しいよなぁ……」
「ああ、確かに……これじゃ、暇潰しにもなってないね」
言いながら星馬は、腕時計を見ている。
いや、お前、暇潰しって……まぁ、俺も気まぐれで、ここに居るんだから、責められねぇ気はするけど……。
「なんだ?これから用事でもあるのか?」
「う〜ん、そう言う訳じゃないんだけど、は仕事?」
パンパンと、軽く服についた汚れを祓いながら質問すれば、こちらも服の汚れを祓いながら更に質問で返されました。
「……忘れたい事実だな……」
その質問に、俺は何処か遠くを見ながら、言葉を返す。
いや、本気で忘れたい事実だ。
ばーちゃん、人使い荒すぎるって……。
考えた事に、盛大なため息をつく。
「ご愁傷様。それじゃ、ストレス解消にもならなかっただろうけど、仕事に戻った方がいいんじゃないのかい」
「まだ時間あるからいいんだよ。もう少しぐらい現実逃避させてくれ」
『逃避しても、事実は変わらないぞ』
ボソリと言った俺の言葉に、『昼』が空かさず突っ込みを入れる。
いや、うん、間違ってないかもだけど、そんな虚しくなるような事言わないでくれ。
その言葉に、思わず俺は盛大なため息をついた。
「だったら、時間潰しに喫茶店でも入るかい?」
そんな俺に、星馬が苦笑を零しながら質問。
それに、一瞬考える素振りを見せて、俺はその申し出に同意した。
だって、どうせ気まぐれだったんだから、時間があるならもっと現実逃避したいと思うのが普通だろう!
「ノッタ!」
元気良く同意して、この近くにある店を考える。
確か、近くに知り合いの喫茶があったはず……。
「んじゃ、もうちょっと俺の気まぐれに付き合ってくれよ」
「まぁ、先にボクが付き合せちゃったんだから、仕方ないね」
俺の茶目っ気たっぷりなお言葉に、仕方ないと言うようなため息をついて、星馬が頷く。
まぁ、ちょっとした気まぐれで、結構有意義な暇潰しが出来たって事で、良しとしよう。
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